大分移住手帖

大分県の発達に不安を抱える未就学児のための施設

Tomoe Sato

「うちの子ちょっと他の子と違うかもしれない」「どうしてこんなに育てにくいの?」など、日々の子育ての中で感じる違和感。これは子どもの成長において普通のことなのか、支援を求めるべきなのか分からない方も多いのではないでしょうか?

それぞれが持つ良い部分を伸ばしながら社会や集団との関わり方を習得していくためには、早期療育が必要です。小さい頃から正しい療育を受けることで、その子が持つ個性を強みに変え、将来幸せな人生を歩む手助けとなります。今回は大分県で療育を行っている4つの施設にお話を伺いました。

こども発達支援センターもも

こども発達支援センターもも外観

大分市大道にある社会福祉法人とんとん こども発達支援センターももは、3歳から未就学児で発達に不安を抱える子ども達を対象に、就学就園に向けた支援を行う療育センターです。「うちの子ちょっと周りの子と違うのかな?」と感じる不安や、地域の一歳半検診等で療育を勧められた方などの相談を受け付けており、小集団で日常生活動作を身に付けさせることを大切にしています。親子教室や地域の保育園・幼稚園からの子どもの発達相談受付など以下のようなさまざまな取り組みも行っています。

こども発達支援センターももの特徴

室内運動を行う教室

【地域の保育園や幼稚園に戻ることを目標にしている】

こども発達支援センターももは、はっきりとした診断はつかないけれど、保育園や幼稚園での集団生活になじめず、つい手が出てしまうなどの発達に課題を抱えている子どもたちやそれに悩む親が対象となります。いずれ地域の保育園や幼稚園などの施設に戻っていくことを目標としています。集団生活を送る上で必要な生活習慣ができないことで自信をなくすことがないように小さい頃からできることを増やし自信をつけていくそうです。

 

【小1プロブレムにならないための支援】

小1プロブレムとは小学校に入るも、環境に慣れず落ち着きがない状態が長期間継続してしまう状態のことで、不登校の原因になることもあります。保育園や幼稚園では先生方の細かい支援があり、ある程度自由に行動することができますが、小学校への就学に伴い始まる集団生活に戸惑いを受ける子ども達がいます。そのため、幼少期から集団生活に慣れ、就学するための準備を行うことが小1プロブレムを防ぐために大切だそうです。また、保育園や幼稚園における子どもの発達に関する細かい情報は小学校に伝わらないこともあり、発達に支援が必要なお子さんに対する学校の対応が2歩も3歩も遅れてしまうことがあるそう。保護者も「子どもが学校に馴染めない」と心を痛める前に、小さな時から子育ての相談をして乗り越えてきた経験を持つと、何かあったときに慌てず落ち着いて対応することができるそうです。人生の大きな波を小さい波で抑えていくためにも、早期療育が大切だと言います。

新しくできた施設と園庭

【些細なことでも相談を受け付ける】

相談を受け付けてから実際に利用をするまでには、事前に2回の面談を設け、利用中も希望に応じて適時相談を受け付けているそうです。またセンター独自に発達検査を行い、目安としてお知らせすることもできるそう。保護者の対応1つで子どもの行動が変わるため、子どもの困った行動にどう対応すべきなのか一緒に考え、一人ひとりの特徴にあったアドバイスをしているそうです。

 

【施設概要】

社会福祉法人とんとん こども発達支援センターもも

住所:大分県大分市田中町2丁目16番7号

電話:097-546-3400

支援時間:9時半から14時半

ココカラりんく

施設入口

大分市城原にある医療法人優生会 児童発達支援センターココカラりんくは、自閉症スペクトラムなどの発達に障がいを抱える子どもや、常時医療的ケアが必要な園児、重度心身障がい児、肢体不自由児などに対応している施設です。

医療法人優生会は、整形外科・リハビリテーション科の発達外来診療を行っているみゆきクリニックを母体とし、

 

 

などのさまざまなサービスを有し、医療から福祉、保育まで総合的に支援してくれることが特徴です。併設するじょうはる保育園では通常保育以外にも、医療ケア児や発達に問題を抱える子の受入も行っています。利用中にリハビリが受けられたり、夕方まで預かってもらうことができるため、就労されている保護者の方も安心して預けることができます。

ココカラりんくの特徴

ココカラりんく

対象は未就学児であり、現在約70名ほどの子ども達が通っています。運動を積極的に活動に取り入れているそうです。

ココカラりんく教室

【利用中に専門特別支援が受けられる】

療育を必要とする子ども達は、目や耳から入ってきた情報を脳で整理し適切に身体を動かすことを苦手とする子が多いため、改善に向けボルダリングや、平均台、トランポリンなどを行ったりと室内遊具を利用しいろいろな練習を行います。また心理士によるコミュニケーションスキル訓練や言語聴覚士による言語訓練なども行っているそうです。その他にもパンやデザート作りなど遊びを通して楽しみながら発達を促す訓練をします。

個別指導の部屋

個別指導の部屋

【BBAトレーニングの資格を持つ】

BBAとはBuilding Block Activityの略であり、特別な支援を必要とする人の身体的基盤を作る軽運動のことです。マッサージやタッピングを用いて身体の発達を促し、身体の使い方のパターンを習得することができるとされており、身体の柔軟性を高め感覚過敏の緩和を促してくれます。

ココカラりんくやじょうはる保育園ではBBAの資格をもつスタッフが常駐し、日々のケアに取り入れているそうです。気持ちがいいのか嫌がる子はほとんどおらず、取材中も子ども達が気持ちよさそうにトレーニングを受けていたのが印象的です。

BBA以外にも運動を積極的に活動に取り入れ、医学的根拠をもとに意図的に働きかけるような運動を中心に行っているそうです。

BBAトレーニング中

【医療的ケアを受けることができる】

病院と併設されていることから、医療的ケアを行っています。看護師が常駐しているので酸素投与や吸引、経管栄養注入などのケアを受けることができます。子ども達は、みゆきクリニックに通院しながらこちらの施設に通うことができるため、情報をスムーズに共有しながら医療と福祉の支援ができます。

看護師が吸引を実施中

【施設概要】

医療法人優生会 児童発達支援センターココカラりんく

住所:大分県大分市大字城原1769番5

電話:097‐578-7852

支援時間:9時から15時

わくわくかん

わくわくかん外観

大分市大字屋山にある社会福祉法人萌葱の郷わくわくかんは、児童発達支援センターとして大分県東部地域の中核的な療育機能や相談機能を兼ね備え運営されています。そのため、大分市の依頼により地域の保育所や事業所を訪問し発達に関する相談を受けたり、療育相談のため月2回子どもの発達が気になる地域の保護者の方を対象にアドバイスも行っています。

 

【社会福祉法人 萌葱の郷 こども発達・子育て支援センターわくわくかん】

児童発達支援センター

放課後デイサービス

保育所等訪問支援

■居宅訪問型児童発達支援

地域療育等支援事業 あたたか

相談支援事業所 プラスα

わくわくかんの特徴

わくわくホール(建物の中心にある遊戯室)

2歳から就学前の子どもを対象に受け入れています。令和3年に開設したこの施設は、子ども達が過ごしやすい環境にするために設計にもこだわりをもって作られたそう。発達の段階に応じてこあら・ぱんだ・きりん・らいおんの4つのクラスに分かれています。集団生活に慣れてきた子どもたちは、通常の保育園と併用しながらわくわくかんに通うこともあるそうです。また卒業後にも、慣れ親しんだ環境であるわくわくかんで過ごすために放課後デイサービスも併設しています。

 

【室内外ともに充実した遊びを通した活動】

4つの教室の真ん中に広い空間があり、全身を使って遊び、心が癒されるさまざまな道具が用意されています。専用の遊具を使用し楽しみながら全身を使うことで、体幹を鍛え平衡感覚や*¹固有感覚を養うことができます。

園庭も広く、駆け上がることのできる砂山や三輪車、自転車も用意されています。花や昆虫も沢山いるそうで、泥だらけになって昆虫取りに夢中になる子どもも多いとか。

 

*¹固有感覚:自分の身体の位置や動き、力の入れ具合を感じる感覚(力加減・運動コントロール・バランス・重力に抵抗して姿勢を保つ・情緒の安定など)

遊具(半円のロール状になった遊具は中に入って揺られたり、上に乗ってターザンのように飛ぶこともできるなど遊び方は無限大)

わくわくかん園庭(登ることができる山から見た景色)

【対人関係を中心とした育ちを支える】

発達の偏りを始めとする、様々な特徴を有した子ども達が集団に馴染みながら自立していくことができるように、対人関係を軸としたコミュニケーション支援を行っています。

 

例えば、子ども同士でトラブルがあった際には「〇〇が嫌だった」「〇〇されて悲しかった」など上手く言葉で伝えられない気持ちを先生が代弁しながら仲立ちをすることで、人間関係に必要とされる言葉の獲得や自律を促していくようです。

 

保育士・心理士・相談員等が、子ども一人ひとりの発達段階に合わせながら保育所や認定こども園、学校等への移行や併用を勧めるようにしています。また、保護者支援においても親子教室で公認心理士が各専門職との橋渡し役を行っています。

 

【子ども達の動線を考えた設計】

クラスルームは移行先となる保育所や学校に近い造りをしていますが、椅子に座ると窓から見える景色が空だけになるなど、子ども達が集中しやすい環境を大切にしているそうです。年齢や発達段階でクラス分けされており、トイレの背の高さも教室によって変えています。

 

また、室内と園庭の間にある広いウッドデッキ上に手洗い場を設けてあり、汚れた靴や足を洗うのに使ったり、夏にはプールも設置したりするようです。保護者の方と面談する際に使う部屋から、ホールで遊ぶ子どもの様子が見えるように作られているなど、いたるところに細かい配慮が見られます。

クラスルーム(集中力を妨げないように、スケジュール等の掲示物以外に装飾は行わない)

面談室(窓から室内で遊ぶ子ども達の様子をみることができる)

【施設概要】

こども発達・子育て支援センターわくわくかん

住所:大分県大分市屋山1658‐1

電話:097‐592‐8989

支援時間:9時半から15時半

つばさ学園

つばさ学園外観

大分市片島にある社会福祉法人藤本愛育会 つばさ学園は、「一人ひとりの子どもが、生き生きと心豊かに生活し、持っている力を十分に伸ばして、将来に向かって羽ばたいていく」という理念を大切にしています。同敷地内に発達や慢性的な疾患の診察、リハビリテーションを受けることができる大分こども療育センターがあり、医療と福祉の支援が継ぎ目なく受けられるという特徴があります。大分こども発達支援センター内にはつばさ学園以外にも以下の施設も併設されています。

つばさ学園の特徴

つばさ学園通路

一歳半から就学前の子どもを対象にしており毎日30名ほどが通っています。発達においての課題を欠点ととらえず、良いところを更に伸ばす支援を行っているそうです。子ども達が安心できる環境を整えるために、通園初期は母子通園を大切にしています。車がない方でも通園バスを利用でき、母子通園の際はもちろん保護者の方も同乗することができます。

 

【さまざまな職種の方が関わり多面的に見ることで質の高い支援が受けられる】

つばさ学園では、保育・福祉・リハビリの各専門家などさまざまな職種のスタッフが常駐しており、背景を含めて子どもの生活を多面的に見ることで、一人ひとりにあった質の高い支援ができるそうです。また、家庭の環境や保護者の気持ちが子どもに鏡のように反映されるため家族支援も大切にしています。療育相談会やサービス担当者会議以外に保護者からの要望があった時や、保護者の様子に合わせスタッフから声をかけ適時相談の場を設けています。

その他にも療育時間の中で、同じ敷地にある大分こども療育センターでのリハビリを受けることができます。信頼関係を大切にするため、最初はつばさ学園内でリハビリすることがありますが、慣れればリハビリの職員の方がつばさ学園まで迎えに来て一緒にリハビリに向かうそうです。

教室

【日常生活を想定した活動や、感覚を満たす支援】

周囲に自然が多くあるつばさ学園は、園庭が広く開放的で、感覚を満たす活動として季節に応じて、冬は水を凍らせたり夏は泥山スライダーなど全身を使って遊んでいます。その他にも、子どもたちに‘‘横断歩道は左右を確認して渡ること‘‘や、‘‘工事現場や立ち入り禁止場所に入らない‘‘といったことを日常生活中に繰り返し学んでもらうために、園庭内に横断歩道や立ち入り禁止を表すコーンなどを設置しています。そのため、子どもたちは園に通ううちに、自然と交通ルールを身に付けていくそうです。

園庭にある横断歩道

大分こども発達支援センター外観

【褒めることで新しいことに挑戦する意欲を】

つばさ学園の理念として、子ども達の良いところを更に伸ばしていくために、普段の活動では社会的に許されないことや命の危険を伴うこと以外は、基本的に叱りません。些細なことでも褒め、本人が納得できないことは代替案を出し、折り合いがつくように支援を続けることで、自分が認められていると感じ自己肯定感が芽生えるそうです。

 

椅子に座っていられない子は、身体を思いっきり動かしてから座ってもらう。帰りたくないと泣く子は、先生と一緒に帰る前に園庭をいっぱい走ってみるなど、子ども達の欲求を否定するのではなく、一度満たして納得し導くことで、無理なくできる事を積み重ねその中で得た自信が定着していくそうです。

施設内

開放的なウッドデッキ

【施設概要】

社会福祉法人藤本愛育会 つばさ学園

住所:大分県大分市大字片島字長三郎2996‐3

電話:097‐557‐0114

開所時間:9時から15時(子どもの発達に合わせて時間変更あり)

おわりに

「療育を受ける」ということは普通と違うと感じてしまい、療育施設に行きつくまでに葛藤される保護者の方が多いそうです。しかし、取材で訪れた施設ではどこも笑顔でのびのび活動している子ども達がたくさんいました。療育施設とは子どもの心を大切にし、いずれ大きくなって社会に出たときに、それぞれが持つ個性と上手く付き合い自分を大切にして幸せな人生を歩むことができることを目標としたものです。また、子どもと同様に一生懸命子育てに取り組んでいる保護者の方も支援の対象です。療育に通いだして、親が安心して関わることができるようになると、子ども達も行動が落ち着いてくることが多いそうです。

自分や家族の知識、ネットやSNS、理解のない周りの方からの情報などに捕らわれず、少しでも子育てに悩んだらまずは市町村の育児相談の専門窓口へ相談してみましょう。

 

WRITER 記事を書いた人

Tomoe Sato

大分生まれ、大分育ちの根っからの大分人。現在は子育てをしながら趣味の延長線でライターとして活動している。

記事一覧を見る

POPULAR ARTICLES 人気記事

CONTACT お問い合わせ

運営:おおいた移住計画

FACEBOOK

INSTAGRAM

運営:大分県