大分移住手帖

料理もイラストも、暮らしとともに。工房から生まれる新しい世界。

青木 奈々絵

取材者情報

お名前
小久保かなた(こくぼかなた)
出身地・前住所
福岡県北九州市
現住所
豊後高田市
年齢
36歳
家族構成
4人家族(夫、子ども2人)
職業
工房あめのちはれ 店主
イラストレーター「かなたいこ」
Webサイト
https://www.instagram.com/kanataiko.illust/?hl=ja
Instagram
https://www.instagram.com/ame.no_ti.hare/?hl=ja

豊後高田市の集落にオープンした「工房あめのちはれ」。2人の子どもを持つ店主の小久保さんは、料理人として、イラストレーターとして活動しています。東京から福岡を経て料理の世界に触れていき、今では自身のお店を構えるまでに。家族と暮らしを軸にお店を営む小久保さんのお話を伺いました。

カルチャーショックを受けたお店で働くことになり、料理の道へ。

宮城県出身、大学卒業後は東京の印刷会社に勤めていた小久保さん。会社勤めをしながらも「普通に働くだけじゃつまらない」と感じていた小久保さんは、住宅地の小さな料理教室にいったことをきっかけに、あるカフェに出会ったそう。そのお店の今までに見たことがないような雰囲気と面白い料理に惹かれ、「ここで働きたい!」と思い、会社に勤めながら働くことにしたのだとか。

同時期にクラブハウスで料理のケータリングの活動を始めていた小久保さん。平日は会社員として働き、金曜の夜は仕込んだ料理を背負って朝までクラブハウス、週末はカフェで働くという楽しくも目が回るような生活を送っていたそうです。

「昔から料理や人をもてなすことが好きでした。カフェで働くまでは特別お菓子に興味があったわけではなかったんですが、そのお店が私にとってはすごくカルチャーショックで。そこから料理って面白いなと思い、料理への道が拓いていきました。」

結婚を機に考えるようになった移住。

会社員として3年勤めたのち、飲食店の料理担当として働き始めた小久保さん。そこでミュージシャンとして活動している今のご主人と結婚。子どもができたことをきっかけに地方への移住を考えるようになったそうです。

「東京で子どもを育てていくのは考えられなかったので、どこか別の場所に移り住むことを考えていました。夫の実家が福岡の北九州市で、ちょうど義理祖母の家が空き家になったので、そのタイミングで福岡へ引っ越すことになりました。」

北九州市に移住し、専業主婦をしていた小久保さん。子育てが落ち着いた頃からは、得意だった焼き菓子での通販を始めるようになったそうです。イベントで出店したり、全国でライブ活動を行うご主人とともに会場でお菓子を販売するなどして、少しずつお菓子のファンが増えていったと言います。

もともと一時的な住まいとして考えていた北九州市での生活。長男が小学校にあがる前に、別の地へ移ることを考えていたそう。知り合いも多かったので候補は九州。中でも本州にアクセスのよい地域が理想だったそうです。

「国東半島のイベントに夫がライブで出演したとき、豊後高田市を知りました。車を走らせていた時の田舎の雰囲気や、意外とどこにでも行きやすい場所なのが良いなと思ったんです。調べてみると移住の支援も手厚いことがわかって、豊後高田市に移住を決めました。」

仕事も暮らしも大切にする料理家、イラストレーターとしての日々。

今までは通販をメインに活動していた小久保さんですが、2020年10月には自宅の蔵を改装して、店舗「工房あめのちはれ」をオープンさせました。営業日は平日の週3日、数十種類の焼き菓子を販売し、店内でも楽しめます。

「家族との時間や日々の暮らしが疎かにならないよう、週末など子どもがいるときは家族との時間を大切にしています。自宅と同じ空間なのでいくらでも仕事ができてしまうけど、時間を決めたり、時には人を頼るなどしてバランスをとっています。お菓子を作ることやお店に立つことも好きなので、自分が無理なく続けていけるようやっていきたいですね。」

料理と並行して、イラストレーター「かなたいこ」としても活動する小久保さん。東京や福岡に住んでいた時から個展を開くなどしていたそうで、毎年カレンダーを製作したり、お店のロゴを依頼されるなどその活動は多岐に渡ります。切り絵を組み合わせた愛らしいイラストで、工房のロゴやパッケージも自身で製作しています。

 

自身でイラストを手がけ、毎年販売しているカレンダー

地域に支えられながら、親しみやすいお店を目指して。

「お隣さんにはすごくお世話になっていて、子どもたちは本当のおじいちゃんおばあちゃんのように接しています。学校が終わるとランドセルのままお隣の家にお邪魔して、宿題をしたり遊んでもらったり。私たち夫婦もとても助かっています。」

オープンしたばかりの「工房あめのちはれ」ですが、県外など遠方から来られるお客さんも多いのだとか。オーガニックな素材を大切にしている一方で、こだわりすぎないことも大切にしているそうです。「子どもからお年寄りまでいろんな人が来てくれるような親しみやすい場所でありたい」と語ってくれました。

お菓子の販売に限らず、不定期でランチやディナーの営業をしている小久保さん。今後は少しずつ、今とは別の顧客層の方にも使ってもらえるよう新しい取り組みを考えているんだとか。豊後高田にまた新しい魅力が生まれ、今後更なる活躍が楽しみです。

最後に

料理人として、イラストレーターとして活躍する小久保さん。いつも真ん中には“家族”がいて“暮らし”があるのだと感じました。住む場所や仕事に対して、柔軟にゆるやかに決めつつも、しっかりと軸のある姿が印象的でした。「人がお菓子選びを迷っているのも好き」と話す彼女のお店にはたくさんの焼き菓子が並んでいるので思わず迷ってしまいますが、なんだか幸せな時間だなと感じました。飾らず明るい笑顔で迎えてくれる「工房あめのちはれ」にぜひ足を運んでみてください。

WRITER 記事を書いた人

青木 奈々絵

大分県杵築市へ移住。地域おこし協力隊として移住支援活動を行う。国東半島に伝わる七島藺(しちとうい)に惹かれ、工芸の技術を習得し、杵築七島藺マイスターとしても活動している。農家民泊の開業を目指して、築150年の古民家をセルフリノベーションに奮闘中。

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