大分移住手帖

一緒に楽しもう!自身の経験を生かして作った自給自足のフリースクール「みんなの学校」

Tomomi Imai

取材者情報

お名前
戸高諒
出身地・前住所
出身地:大分県津久見市
前住所:徳島
現住所
大分市
年齢
32歳
家族構成
既婚 嫁、娘4歳、2歳
職業
法人経営
Webサイト
http://min-nano.2-d.jp/
Facebook
https://www.facebook.com/minnnanogakkou/
Instagram
https://www.instagram.com/mingakuooita/

大分市に自給自足のフリースクールがあると聞いてやってきてみると、不安になるほどの雑木林や田舎道。そんな小道を抜けた先にぱっと広がったのは、木造の大きな倉庫広大な畑。スタッフの皆さんや子供たちが笑顔で迎えてくれたこの場所は、「一般社団法人 畑とキャンプの自由な学校 みんなの学校」(以下、みんなの学校)です。徳島などで学んできたオーナーである戸高さん。一念発起してこの土地を買い、自らの手で仲間と共に文字通り一から作っているこの場所に実際に伺い、代表である通称「にっぽり」と呼ばれる戸高さんにお話を伺ってきました。

必要・不必要なものは自分たちで話し合って決める。

校舎も自分たちで1から作る

8年前にフリーキャンプから始まり、フリースクールとして1年ほどになる「みんなの学校」。オーナー(代表)である戸高さんを筆頭に、現在職員は3名、インターン生が2名、そして在籍している子どもは13名います。主に小学生を受け入れていて、毎日来ている子もいれば、たまに来る子もいるそう。火曜から金曜の週4日開校されています。インターン生の中には、海外を見て回ってきた後に、ここで働き始めたメンバーもいるのだとか。

ここでのモットーは「まずはやってみる。つくってみる。」。普段の食事も自分たちで作って食べているのはもちろん、材料となる野菜も畑で作り、収穫して食べています。

「ここは山奥なので食材を買いに行く手間や時間を考えたら作った方が早いんですよね。僕も含め、ここにいる大人やスタッフは一緒に学びつくる存在。みんな友達のような感覚。先生やさん付けもしません。同じ目線になることを心がけています。職員が大工経験もあったので、小屋やトイレも自分たちでつくりました。柱がまっすぐ建たないなと思ったら『水糸を張って建てると良いよ』と教えてくれたり。自分たちで作っていく中で、数学ってここで使うのか!と僕らも気づかされる場面もあって学ぶことばかりです。子どもたちとの現場でも、何かをしたから偉い。すごいではなく、つくる過程(プロセス)で学ぶことにこそ。ここでは大切にしてます。」

ここでは決められたカリキュラムや時間割もなし!自由な学びの場。子どもたちのわくわくとともにつくる学校。

もらった廃材を生かして自分たちで遊び道具を作る

多くの学校は、決められたカリキュラムや時間割があり、毎日の時間が区切られ、それに従って活動が行われますが、みんなの学校には大人側が一方的に決めた「時間割」や「カリキュラム」がありません。時間割の裏には大人の意図があると考えているからとのこと。そうすると、1日はどうやってはじまり、終わるのでしょうか?

「朝はミーティングから始まります。『話したいことない?』『困ってることない?』『今日のプラン(やりたいこと)は何?』とその日やりたいことを聞きます。ある時は、虫取りを3ヶ月くらいやったりもしました。虫を獲っては図鑑に入れていくことで満足感にも繋がっていくみたいです。子どもの本心から出てくる気持ちを応援しています。ただ、何もないことも凄く大事にしています。何もやりたくないとか考え中とかも。そうしないと、やりたいことをやってる人が良い子になってしまうんですよね。みんなにやりたいことをとことんやり込んでもらっています。
安心安全の中でやってみたいことをやってみる。それが出来たとかではなく、体験の途上に学びがいっぱいあります。また、やっていくと自分の好き嫌いもわかるし、苦手もわかる。でもそこに優劣は付けません。評価のためにしているわけではないので。」

自分の“できない”も使いこなす。自分を信頼する。

「ここの風が気持ち良いんですよ」と席を用意してお茶まで淹れてくれました。

ここで過ごすと、より自分のことが分かり、自分自身が一番の友だちになり、自分を使いこなしていく感覚が身につくようになるという戸高さん。その中でも大切なのは「自分のできないを信頼できる」ということだと言います。子どもどうしがお互いを認め合うことで、自分のことを知れたり自分を居場所として持てるように後押しをしています。

「例えば、文字が読めないことをコンプレックスにしなくて良いんです。ここでの活動はやらされてもないし、もしやってみて違ったら止めてもいいんです。自分が本当にやりたいなら根気強く努力しますし、必要なら自ずと身についていきます。人間って基本的には学びたかったり成長したいと思っています。その方向がみんな同じな訳ではなくて、各々いろんな領域で補っているし、逃げているわけじゃなくて、やるときはやってると思うんですよね。各々そのタイミングややり方が違うだけだと思っています。ここで過ごす中で、自分も相手もお互いの得意不得意が分かるようになる。「僕ってこれができないんだよね」と言えることってすごいことだと思うんです。」

きっかけは自分の育ってきた家庭。

戸高さんは周辺のいろんな草花のことを知っている植物博士。

そんな自給自足で自由な「みんなの学校」を作るに至ったきっかけをお聞きすると、即答で「自分の育ちですね」と答えてくれた戸高さん。津久見市出身の戸高さんは、身近に不登校(当時は登校拒否)にふれる環境にあり、自分自身も不登校でした。当時はまだ不登校に対する偏見が強く、「親が悪い」「行かせるための努力をしていない」が当たり前だったため、結局大人が子供の気持ちをコントロールしようとする姿を身をもって感じていたそうですそうしてコントロールしようとすればするほど親や大人を喜ばせるために良い子ちゃんを演じる自分自身の感覚もあり、、また不和になっていく家庭内の状況を見て育ちました。

「大人がコントロールしようとすると子どもってどんどん壊れていくんですよね。暴れるし、家庭不和にもなって、当時はなかなか壮絶な家でした。」

そんな中、お母様が20数年ほど前に、大分県内の不登校を考える親たちが集まる団体「星の会」を立ち上げました。不登校になっている子どもも辛いですが、親も誰かに理解されたいし、話がしたいと思うもの。親としては子どもが元気に生きていればそれでいいので、親が子どもを追い詰めないように親がまず理解しあえるようにと作った場だったそうです。

「親が落ち着けば子どもも落ち着くんです。だって、子どもにとっては親が環境であり、ひとつの居場所だから。僕も学校生活にうまく馴染めず中学2年間は引きこもりで、親は大変だったと思うんです。でも、親が不登校という存在を認め、受け止めてくれてた当時は、僕にとっては家が居場所でした。この経験がとても大きかったです。ここには「誰かに理解してもらいたい」という子が多いですよね。周りの大人や親からそういう理解を得ると、自分自身に居場所を得ていくので、安心して暮らしていけると思うんです。」

家が居場所になった戸高さんは、家にいる間にITの勉強をし、ウェブサイトが作れるくらいに成長。また、ミシンも覚えてバッグも作れるようになったのだとか。この体験が「安心できる場所があって、理解してもらえる居場所があれば、人は自分らしく生きられる」という実感に繋がったそうです。

徳島の自然スクールトエックで学び、フリーキャンプから始める。

畑の食材はもちろんのこと、取材中も周辺の植物について色々教えてくださいました。

自身の経験を振り返ると、不登校ではなく「行かない選択」が自分なりにできたと語る戸高さん。教員を目指してた時期もありましたが、現在の学校教育のあり方に違和感を感じ、大学在学中に友人の誘いもあり、偶然「自然スクールトエック」を知りました。田んぼの中に手作りの建物があり、そこではカウンセリングとアメリカのサドベリーバレースクール*を元にして作った認可外の幼稚園・小学校が開校されています。ひょんなことでここを訪れた戸高さんは、衝撃を受けたそうです。

「僕が通いたかった学校がそこにありました。元気でみんな生き生きしてる。ここだと思って学生専属キャンプカウンセラーをへて、学び足りず1年間インターン生として学び、働き、現場を学ばせてもらいました。学んでいる中で、「こんな学校がもっとあれば良いのになと思い」と思い、地元の大分に帰ってくることにしたんです。でも、潤沢な資金を持っていないどころか、生活がギリギリというレベルで、これでは居場所を作っても続けることができないと思い、まずはぶらぼぅファームとのご縁を通じて、自分のできることは週末のフリーキャンプから始めたんです。」

よくキャンプもするという校庭となっている広場

場所を借りて、最初は夏休みや週末キャンプとして少しずつやっていきました。宣伝らしい宣伝をしなくても、口コミで広まっていき、人が集まるようになったそう。そうして、見通しがつき、フリースクール開校に至りました。

復学のためではなく、自分らしさを見つけてもらうために。

ここに来る子どもたちは、学校に一度行ってみて合わなかったり、親が戸高さんに預けたいからという理由が多いそうです。

「僕たちは不登校の復学のためにやってる訳ではないんです。やりたいことって変化していくものだし、やってみて違ったと分かることも多いと思うんです。その人の長いプロセスを見守っていきたいと考えています。やりたいという自己決定も大切だし、自分で手放す自己決定も大切にしてます。子どもたちの月一回のスペシャルプランで行う山登りも自由参加です。

時間割が無いので、スタッフは事前のプログラムの作り込みはしません。あまり用意はしない分、終わった後の振り返りは何時間もしているとのこと。子どもとの関わりでに困ったこと、スタッフ自身も感じたこと、気づいたことなども聴き合います。

スタッフにも自分自身を知ってもらいたいんです。困った時に困ったと言えるスタッフになって欲しい。だから振り返りは大切にしています。お互い納得するまで聴き合います。ここには良い意味で「子ども達のため」という言葉がないんです。スタッフは「自分がどうしたいか」がベースなんです。「僕たちがやっていることの中にいつでも入っておいで」のスタンスですね。こういうところで育って自分の土台を作って自分らしく生きる子を増やしたいです。徳島いる時は5年間本当にいろんなことを学びました。ある子は勉強が苦手だったので、畑を手伝って、お金を貯めてバイクを買って、3年前僕のところに来てくれました。十分ですよね。自分で生きるってこれで良いと思います。」

褒めない、叱らない。認める場づくり。一緒に育ちあえる人間でありたい。

スタッフTシャツの背面デザインにはみんなの学校が。

「一緒に育ちあえる集団」を目指しているという戸高さん。自身も子どもやスタッフから教わることばかりとのこと。褒めない、叱らない。認める関係性。スタンスをとっています。それは、褒めて育てると承認欲求が高まって依存的になりやすく、叱ると怖くて硬くなり、所謂“良い子ちゃん”が育ってしまうと考えているから。大人のために迷惑をかけないように要領よくやらなくても良いという場を作ることを心がけているそうです。

「僕は所謂“良い子ちゃん”でした。親に迷惑かけないように、心配させないようにと自分の気持ちを無視して、そんな良い子ちゃんを作ってしまった時期がありまいた。たくさん褒めてもらえるんですが、褒められてもむしろ苦しくなっていったんです。「すごい」と言われるけど、何がすごいか言ってほしいなと。褒められても信用できなくなり、人が頼れなくなっていきました。僕もやりながら自分と向き合っています。僕らは先生でも生徒でもなく「人間」でありたいんですよね。」


最後に

スクールという名前がついていますが、お話を聞いているとなんだか広い意味での“家族”のような場だと感じた今回の取材。校舎である木の小屋の中もどこかのガレージにいるような気分で、とてもリラックスしながらお話を伺いました。スタッフの皆さんものびのびとされていて、居心地がよく、何時間でもいられる雰囲気がありました。みんなの学校は大分市にありますが、宇佐市から通っている子もいるそうです。大分県に引っ越してきてフリースクールや自然学校をお探しの方は、是非一度覗いてみてくださいね。

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FACILITIE

自由はみんなで創る「みんなの学校」

自分になり、自分が居場所になる学校。
自然と私、そしてあなた。
関わりを通して自分に気づく、私を大切にしてあなたがいる。自分自身が居場所になる学校。

一般社団法人 畑とキャンプの自由な学校 みんなの学校

大分県大分市机張原1857-2

一緒に楽しもう!自身の経験を生かして作った自給自足のフリースクール「みんなの学校」
WRITER 記事を書いた人

Tomomi Imai

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25歳でフリーランスとして独立し、多様な分野にてプロデュースやディレクター業を経験。モノコトヒトをつなぐひと。多様な伴走を得意とする。絶賛子育て中。ヨガ・サーフィン・音楽・映画・コーヒー・日曜大工が趣味。

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