大分移住手帖

東京・アメリカ育ち。日田市中津江村を元気にしてくれるアクティブな田島山業のお嫁さん。

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東京とアメリカの自然豊かな場所でサッカーに熱中しながら育った田島さん。飲料メーカーでの営業や海外事業部、外資系の広報部などを経てお嫁に来たのは日田で森を守り続けて来た田島山業でした。木漏れ日の森に心奪われ、中津江村を愛している田島さんが嫁いだ田島山業や、ここで暮らす田島さんのひととなりとこれからの想いを伺うべく、彼らの森まで足を運び、一緒に森の中までお邪魔してきました。

田島山業の森にて

日本でもアメリカでも大自然の中でサッカーや水泳をして過ごした青春期。

アメリカ・アリゾナ州を流れるコロラド川が大地をえぐって創りだした馬蹄型の絶景、ホースシューベンド(Horseshoe Bend)にて

緑の多い東京都多摩市で育ち、同級生たちと一緒に芝山を滑るなどと、子供の頃から外で過ごすのが大好きだった田島さん。幼い頃から水泳とサッカーに通い続け、父親の転勤で中学生の時にアメリカ・カリフォルニア州にあるサウス・パサデナ市へ引越しても、水泳とサッカー漬けの毎日を送っていたそう。アメリカには壮大な国立公園が数多くあり、ご両親はいつも田島さんを自然の中へ連れて行ってくれたそうです。卒業旅行も富士山より高い山に登るという、まさに“アスリートライフ”だった青春期を経て、アメリカの大学に進みたい気持ちが強いながらも、日本の大学に入るために戻ってきました。

「まずは、日本人としてのアイデンティティをしっかりと持つ事が大事だと教えてくれた父の考えもあり、故郷である日本で地盤を作ってからでも、海外にいけるのではと思い直し、帰ってきました。」

経営が学びたくて商学部へ。アメリカで見た絶景が忘れられず環境ビジネスを志す。

アメリカ ヨセミテ国立公園の人気スポットハーフドーム(Half Dome)前にて

 

将来、経営を学びたかったという田島さん。語学にも力を入れ、フランス語と中国語を学び、英語で、国内外のイノベーティブな企業を研究する授業を受けるなど語学もブラッシュアップしていたそう。大学ではサッカー・水泳の女子部がなく、体育会やユニフォームへの憧れもあり、グランドホッケー部に入って汗を流したそうです。そんな田島さんは、大学3年時に環境ビジネスと国際経済を学ぶゼミで学ぶことに。

「アメリカの卒業旅行で登った山から見た景色が忘れられなかったんです。この景色を後世に残したいと思い、環境ビジネスを志しました。」

飲料メーカーにて営業や海外経営企画などを経験しながら刺激を受ける毎日。

大手飲料メーカーへ就職し8年在籍している中で、国内営業、海外事業部、役員秘書、経営企画などを経験した田島さん。下積みは長かったようですが、最後には、グループ横断の社長直轄アイディア創出プロジェクトにも携わり、多岐に渡る企画に関わったことで視野が広がったそうです。

30歳の時に、「世の中の課題を解決する」ために様々な発明をしている外資系メーカーへ転職。教育慈善団体へ出向し、未来のデザインエンジニア育成のために、全国の中学校の技術の時間にお邪魔し、問題解決ワークショップの講師を行っていました。そこで、子供たちの発想力の豊かさに驚かされることもあったそうです。

「子供たちの目はとてもキラキラしていて、限られた時間と工作材料の中でプロダクトを作るのですが、ありものの工作材料を最大限に活用し、割り箸をポキポキ折って段ボールを補強して作ったりと、眼から鱗のアイディアをどんどん出してきて、チームワークよく、取り組んでいる姿に刺激を受けました。」

大学のOBOGとして夫に出会い、初めて大分に来る。

田島山業の中で美しい四季を感じられる

 

旦那さんは大学の同窓生で、「社会に提言できるものを3ヶ月で提言する」というプログラムを過去に受講したOBOG同士でした。その総会の幹事になった時に出会ったお二人。当時、旦那さんは大分に既に帰っていましたが、打合せの度に東京に通い、次第に仲良くなったそうです。そうしてお付き合いが始まり、2017年に田島さんはご両親への挨拶のために、初めて大分を訪れました。

地元の方々に手伝ってもらい実現した「木漏れ日の森」で結婚式。

木漏れ日の森にて行われた結婚式

 

家族総出で山々を案内していただく中で一番思い出に残ったのが「木漏れ日の森」。「ここで結婚式をしたい!」と思ったそうで、ご縁もあり、山の日に入籍、後の2019年5月に素敵な森の結婚式を開催されました。

地元企業や農家さんを中心に27社ほどが協力し、福岡のシェフが地元の食材を9割使ったメニューを一から考案し、実現不可能とも云われた森の挙式の趣旨に賛同したプランナーさんが手掛けました。

日田市内のお花屋さんは、社長が自ら森に何度も通い、大切な森の木に釘一つ打たず、立木に脚立を立てかけることのないよう配慮をするなど、花の飾り付けについて試行錯誤してくれたそうです。

田島さんは、この結婚式を通してお力添えいただいた地元に恩返しがしたい、少しでも中津江村の魅力を発信したいと思い、ウッドデザイン賞2019に応募。森林の新たな活用方法であり、また、地元のものを利用して地域活性を目指す事例として、特別賞の「木のおもてなし賞」を受賞したそうです。

木を考えてかけられた花の飾り

森を育て、新たな在り方を考える田島山業。

日本初の高層木材ビル(10階建て・仙台市)の木材提供者として、三菱地所、竹中工務店等とともに「ウッドデザイン賞2019  最優秀賞(農林水産大臣賞)」を受賞した田島山業。森からどうやってビルになるのかも一緒に動画にしたそうです。

▼竹中工務店と作ったPR動画

田島山業は森を育てるために間伐を多くやってきた林業会社で、今回のこの企画で30年ぶりに2ヘクタールほど皆伐をし、強度の高い材が取れたそうです。ビル建設に使われた伐採跡地に、竹中工務店の社員さんが北から南まで多くの方々が集まって400本の苗を植樹したそうです。

「一般的に、林業の形は山元から材が木材市場に出て、工務店や加工店に行き、お客様のところにいくので、お客様はどこの森から出た材なのか分かりません。例えば、お隣熊本県の木材市場に出した時点で『熊本県産材』として扱われてしまうなど、トレーサビリティ*がなかなか付けられない実態になっています。

田島山業には『伐採作業班』という、いわゆる“伐り手”の方がいます。田島の森の木を使って家を建てる施主さんに実際山に来てもらい、大黒柱になる木になる木を選び、目の前で伐採します。田島の森の木をふんだんに使いたいというカフェのオーナーさんは、さまざまな色や形、自然な曲がり具合を見て、カウンターテーブルや内装材を選んでいただきました。

山側の顔が見えるよう、お客様との交流を大事にし、木のトレーサビリティをしっかり取りたいと考えているのが特徴です。伐った後、通常、枝葉や木の根元などは、その場で捨てられるのですが、何らかの活用方法を見出すべく、木質チップにしてバイオマスエネルギーとして利用する研究を国の補助を受けながらやっています。『新たな森のあり方』をエネルギーの観点から、そして空間利用の形で模索しています。」

「山業」なのは、森の宝物を生業にする会社だから。

結婚式のことがお弁当のパッケージに!

 

田島山業は、先祖から代々受け継ぎ、森を守り続けてきた事業を、現社長が会社組織に変え、旦那さんが生まれた年にできた会社です。先祖代々森を受け継ぎ、守り続けてきた事業を現社長が会社組織に変え、今年で設立32年になります。

「産業」ではなく「山業」としているのは、大切に育てた丸太を伐って出荷するだけではなく、森の中にはたくさん宝物が眠っていて、それを生業にしていく会社でありたいということ。現社長が創業時に決めたのだそうです。

「空間や山の中から出てくるありとあらゆるものが対象だと考えています。森に来るだけで気持ちが良くなったり。うちは日田杉の中でも『ヤブククリ』という品種が多いです。根元が少し曲がって育つ木で、昔は油が多くてしなりが良く、造船などに使われていたそうです。近年は、木の成分を研究してもらい、ヤブクグリ材の新たな活用方法なども模索しています。」

田島さんは現在この会社の中では、今までの経験を活かして、前々からチャレンジしたかったマーケティングや新企画の計画・運営、田島の森の良さを発信していく役などを担っています。

中津江村の皆さんは災害があっても人想い。

田島さんが企画した森のツアー参加者の皆さんと。

 

現在、中津江村の人口は718人ほど。田島さんが住んでいるのは、中学校が近く、中津江の中でも若い世代が住んでいる地域です。

田島山業があるのは中津江村の中でも「鯛生(たいお)」という地域で、鎌倉時代に、お隣熊本県 菊池から田島家に嫁いできたお嫁さんがここに着いたや否や、落雷と共に鯛が生き返ったように飛び跳ねて、地面に落ちて岩になったいう言い伝えにちなんで命名されたようです。そんな中津江村は「とにかく人想いだ」と語る田島さん。こんなエピソードを教えてくれました。

「先日の令和2年7月豪雨により大きな被害を受けた方もいらっしゃいましたが、地元の方は本当に人想いだと感じました。土砂崩れで家が全壊した方がいる避難所へお手伝いに行っていた際は、『ここより中津江村の奥に高齢な方がいるから、ここに集まった物資を届けてくれないか』と私たちに言うほど。

うちは食材の備蓄が手薄だったのでお米がすぐ尽きてしまったのですが、それを知ったお向かいの方が作りたてのお味噌汁と一緒にお米を分けてくださったり。前向きで思いやりのある地元の方々にすごく助けられています。住み始めてまだ2年ですがとっても好きな場所です。」

移住前にたくさんリサーチして情報館にも足を運び、役場の方々を頼ったのでズレはなかった。

中津江村に来る前に移住するときのイロハなどはたくさん情報を集めたという田島さん。東京にある大分の情報館にも何度か通い、市役所の方に色々聞いて学びながら市営住宅も見つけたそうです。不安要素は少なくしておくことで、移住後も意識のズレなどなくスムーズに移住できたといいます。中津江村は大分県ですが、15分車を走らせれば熊本に行けるので、買い物は日田市内か、熊本県小国町に行くことが多いそうです。また、休日は夫婦でカフェや温泉巡りを楽しんでいるといいます。

中津江村にもっと若手や元気な女性を増やしたい。

木の温もりが気持ち良いオフィスで話が弾む。

今の中津江の良さをもっと出していきたいと熱く語ってくれた田島さん。今後は若手がもっと移住してきやすいように、受け入れる側の準備や、SNSでの情報発信も積極的に行っていこうと思っているそうです。

「今後ここで進めていきたい事は、同世代の家族や若い方を増やすということです。林業に興味を持ってもらえれば、もらえたら最高ですね。若手が集まればよりイノベーティブなことができると思うんです。多種多様な人が住めば住むほどよくなっていくと思います。地元の方ともっとコラボしたいですね。日田市が手掛けている女性の起業を応援するプロジェクトWATERで集まるワークショップでも刺激をいただいています。日田市は女性も元気が良いので、たくさんの方に来て欲しいですね。」

きこり飯を田島の森のなかで。これだけでも豊かな時間。

最後に

ついこの前お嫁さんになったとは思えないほど中津江村を愛していて、その元気で明るくエネルギー満点の笑顔に思わずこちらも笑顔になってしまうような、清々しい雰囲気のある田島さんとの会話は思わず時間を忘れ、いろんなことを聞きたくなってしまうエネルギーがありました。日田市と言っても実は範囲は広く、到着するまで20-30分は他の集落を見受けられないほど山深いところに佇む田島山業。木造の母屋とオフィス自体の居心地が良く、思わず長居をしたくなるほど。お話の後に連れて行ってもらった森では、田島さん夫婦が挙げた森の結婚式の記事が箸袋になっている、ヤブクグリのお弁当箱「きこりめし」をいただきながら、木漏れ日や小鳥のさえずり、森の香りを感じながらお昼を一緒に食べました。この時間自体にとても癒されるとともに、田島さんの人柄も相まって、なんて心地が良いのだろうと思い、こんなところに住みたいなと確かに思える時間でした。

日田市の魅力はいろいろな要素にあると思いますが、どの地域においても人の吸引力というのは、こんな素朴な時間にあるのだろうなと、改めて感じさせてもらいました。

*トレーサビリティ
物品の流通経路を生産段階から最終消費段階あるいは廃棄段階まで追跡が可能な状態をいう。

 

取材者情報

お名前
田島茉莉
出身地・前住所
出身:東京都
前住所:東京都
現住所
大分県日田市
年齢
36歳
家族構成
夫(娘さん予定)
職業
会社員
Webサイト
https://tajimaforest.co.jp/
Facebook
https://www.facebook.com/treehuggingmari
Instagram
https://instagram.com/treehuggingmari/

PHOTO

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WRITER ImaiTomomi 記事を書いた人

Tomomi Imai

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snufkiins LLC. 代表社員
離島移住計画 代表
Re-harmo PJ オーナー
25歳でフリーランスとして独立し、多様な分野にてプロデュースやディレクター業を経験。モノコトヒトをつなぐひと。多様な伴走を得意とする。国内外問わず事務局代行・企画編集など多様な業界を経て2018年に法人化。長崎県上五島にてキャンプ場兼カフェ「Re-harmo PJ」を展開し、島に仕事や場を作ったり。絶賛子育て中。ヨガ・サーフィン・音楽・映画・コーヒー・日曜大工が趣味。

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