大分移住手帖

先生は町の人。時間割は自分次第。いまを生きながら「わたしのこたえ」を創る、想いでつながった3人が豊後大野で始めたここのね自由な学校。

Tomomi Imai

豊後大野で新たに芽吹いたオルタナティブスクール「ここのね自由な学校」。今の教育に課題を感じていた若者三人がたどり着いたこの地での新たな挑戦は、始まったばかりとはいえ周辺地域だけでなく日本全国から注目されているという。「わたしの答えをつくる」をテーマに、各々のキャラクターを生かしあって作られたこの学校の特徴は?そもそもなんで作ったの?
ということで、主催の山下浩二・ももかご夫婦(以下こうちゃん・ももちゃん)と秋篠奈菜絵さん(以下ななっぺ)にお話を伺いました。

シャッターを抜ければ別世界。元酒蔵を学校としてみんなで蘇らせた校舎。

「道の駅 おおの」から徒歩8分。住所を聞いて来てみたけれど、着いてみればどれが学校なのかわからない。

「こっちですよ〜」

と声が聞こえた方向には少し開いたシャッター。

シャッターを潜ると、古道具好きがウキウキするようなかなり年季の入った木製倉庫。恐る恐る中へ進んでみると、、、

抜けた途端、目の前が一気に開けていく。

なんだかジブリの世界に来たみたい。

ここに初めて入ったときの印象はまさにそんな感じでした。

古びたレンガの壁。茂る草花。ここが学校?

「皆さんようこそ〜!」

と、現れたのは背が高く、気さくそうなお兄さん。そう、彼がここの主催の一人、こうちゃんです。

取材に訪れた日は、学校の内覧会も兼ねているとのことで、実際にお子さんを通わせようか検討されている方々と共に、学校見学からスタートしました。

ここのねが大切にしている3つの柱。

「ここのね」という言葉には3つの意味があり、空間もカリキュラムも全てこの軸を中心に作られています。

 

①いまここを生きよう

目の前のことに熱中したり没頭することで学びが連続していく。公的な学校だと時間割がはっきりしていて、没頭していたり熱中している学びが“時間”によって切られてしまう。これは日本が70年間変えてこなかった工場労働者の学び方。“学びの連続性”を持ってもらいたいので、「今自分が熱中したいモノゴトを今楽しんで欲しい」と考えています。

②心の根っこの声を聞く

いろんな行動から結果が出て、その中で大小様々な好き嫌いが出てくるときに、自分の中でいろんな小さな小さな声が上がって、その声によって行動に移したり、手放したりするかもしれない。その心の声を自分に向けてしっかり聞いてあげようという意味です。

③個々の音色を奏でる

「自由」の考え方につながる想い。ここでは確かになんでも「自由」ですが、自分の自由を主張するとき、そこにいる他の人の「自由」も尊重しないといけないよねという考え方。自分の自由を奏でたいなら、相手の自由も同じように奏でられていないと、同じ場は共有できないから。

どんな年齢でも「わたしを満たして」からスタート。ここのねのカリキュラムは「満たす」「探す」「つくる」

3つの段階に分け、1つずつステップアップしていく流れで作られています。

 

①前期:わたしを満たす(対象年齢6-8歳)

先住民の子どもは遊びから様々なことを学んでいたけれど、現代の子供たちは遊びが極端に減ってしまったがために、遊びから学べること、例えば「コミュニケーション能力」「自己受容」「対人力」そして「探究力」を学べる機会が減っているとのこと。だからこそ、まずは“遊んで”自分を満たすところからスタート。

②中期:わたしを探す(対象年齢9-13歳)

前期に遊んでいた中で、「自分はこんなことに興味があるのだなあ」ということを十分に貯めた段階で、次は自分の時間割を自分でつくります。この時期は、基礎学習と探究学習を両方行き来するような学び方をこども自身がしていく形。自分はICTを使った方がわかるなとか、話を聞いた方がわかるなとか、そういう“自分のスタイル”がわかってくるようになるのが中期の目標。この期間に自分らしい勉強スタイルを探す。好きなこと・嫌いなこと・得意なことというのを見つけていきます。

③後期:わたしを作る(対象年齢14-18歳)

サドベリースクールのスタイルがお手本。学校のことも、お金のことも1日の全てをこどもたちが全部決めます。何時にきて、何時に帰っても良くて、家にいて勉強するのでも良い。中期に自分を探した上で、自分が気持ち良い、好きな過ごし方を踏まえて自分で1日を作り上げます。

卒業する時期はいつでも良いけど、「卒業プレゼン」が待っています。

「あなたにとって自由とは?幸せとは?」という問いを持ってもらって、それに対する“わたしの答え”をプレゼンしてもらい、学校にいる人全員に聞いてもらい、みんなが納得して頑張れよと言ってくれた時点で卒業できるというのは、少しアメリカの教育っぽさがあるかも。

 

■1日の過ごし方

8:30  登校開始

9:00  バス到着(三重駅から大野町の道の駅まで出ていて、そこからみんな歩いてくる)

9:30  朝の根っこ(朝の会のようなもの)

10:00  遊び・学び・生活=自由時間

13:00  土づくり:校内のミーティング

    →旅行に行こうとか、講師を決めたりいろんなことを話します。

14:00- 遊び・学び・生活=自由時間

15:00- 掃除

15:15   帰りの根っこ=帰りの会

15:30   下校(バスは16:00過ぎに来ます)

朝の掃除の時と、15:00の掃除の時にベルがなるだけ。

どこにいてもOK。居場所も過ごし方も自分次第。

学校で働いていたからこそわかった日本の教育システムへの不安。そこで出会ったオルタナティブスクールという“教えない”という教育。

左からこうちゃん、ななっぺ、ももちゃん

 

別々の理由から「学校を作りたい」と立ち上がったこうちゃん、ももちゃん、そしてななっぺ。三人は、なぜ学校を作りたかったのか。特にななっぺに至っては元々教員。それを辞めてまで変えたかったのは、現場にいたからこそ肌で感じた「日本の教育への不安」がきっかけだったそう。

 

ななっぺ:6年間小学校で働いていたけど、その間すっごい楽しくて。野菜を売ったり料理したり、どんどん自由にやってたんです。
でも、10年前から始まった学力テストで点数学力偏重型になっていくのを肌で感じていて、親も子もテストの点数ばかり気にしていたし、将来を不安がっていて。このままだと学ぶ意欲も奪われてしまう。システムを変えないといけない。そう思って、自分の中でシステムを変える方法を考えてみたのですが、校長先生になっても難しいよねって思ったんです。

そんな時に、辞める前の育休中に、豊後大野にある「おひさまのたまご*」に通い出したら、そこでの学びがすごく多くて。一番大きかったのが「大人が子供の育ちを邪魔しなければ子供は勝手に育つ」という逆の発想でした。今までは「教える」ばかりで、それってなんだか違うような気がしていた中で、「オルタナティブスクール」という存在を知ったんです。

それから全国各地・九州中のオルタナティブスクールを見に行きました。下の子が当時まだ11ヶ月だったのもあって、大阪まで日帰りで見に行ったり。

和歌山のきのくに子どもの村学園はイギリスのサマーヒルスクールをモデルにした学校で、自分で学習する教育方法を採用していて、全国に6箇所あります。私立で学校法人になっていて、北九州にもあります。先日長崎にもできました。ここがやっている「プロジェクト学習」というのがすごく面白くて。

 

こうちゃん:とんでもなく長い滑り台を子供たちで作るとかね。

 

ななっぺ:その設計の中で算数が必要だったり、経験が先で、後から知識をつけるやり方でした。このやり方に感動して、育休明けて1回学校には戻ったんですが、学校を作ろうと思って辞めたんです。

 

こうちゃんとももちゃんはなんとペアーズで出会い、遠距離を経て結婚。ななっぺは豊後大野が好きで、もはや半移住状態。三人は1年半ほど前に豊後大野で出会い、意気投合し、12月頃から場づくりを始めたそう。

 

ななっぺ:その頃「おひさまのたまご」の小学部が月1回活動していて、そこへお手伝いに来ないかと誘われたので、まず保護者会に見学に行ったんです。

 

こうちゃん:僕とももちゃんもその保護者会に参加していたんですね。それがななっぺとの初めての出会いで。その時にみんなでオルタナティブスクールが作りたい旨を相談して。僕は中学生の頃から作りたくって。中学生の頃、学校にいきたくなくなった時期があったんです。その時にノートにいきたくない気持ちをひたすら書いていたのだけど、それだけ書いてても仕方ないなとは思ってて。その頃から「どういう仕組みなら学校って変わるんだろう」というのをノートに書き始めたんです。

その頃から考えていたのは、学校というものをそもそも無くして、学校の役割は地域の中にいくつかあって、その中から講師を自分で選んでその時間を受講できたらいいのではないかなと。

ももちゃんへは僕がその話をひたすらしたんですよね。彼女は環境のことに興味を持っていて、小さな頃に役所からゴミ袋をもらって一人で町のゴミを全部拾うというようなことをやっていたようで、すぐ参加を決めてくれました。今ではここのねの裏ボスです。(笑)

自分たちにできることからコツコツと。フリースクールの今を変えながら居場所を作っていきたい。

全国の現在の不登校児童数は約16万人。

これは前年より2万人増。大分県では約1600人の小中高校生が不登校となっている。また、全国的に見て、長期休みの18歳以下の自殺が後を絶たない。もちろん、国もいろんな対策をしてくれているけれど、不登校の子供たちがフリースクールなどに通ったとしても、出席扱いにならないし、通っているのは全体の3〜4%だけ。通えない理由のほとんどが「情報が届いていない」「場がない」「経済的理由」なのだそう。

公立の学校では、机、イス、黒板などの備品や教科書、電気や水道、校舎の維持管理費、職員の人件費など多くの費用を国や都道府県、市町村で負担しています。この公立・私立の学校ならある公費負担が、フリースクールにはないのだ。同じように税金を納めているにも関わらず、制度上補填はないので、二重で教育費が必要になってしまうし、現在の制度ではその分のお金は使われずになってしまう。こういった現状の中、「ここのね自由な学校」は教育委員会や各所に対して積極的に現状を伝え、連携を図ろうと奮闘している。

 

こうちゃん:この学校を一条校*にしたいんです。そうすれば、本来使われていない税金を、ここにきている子供たちのためにも使えるようになる。もちろん、学校法人になるにはかなりのハードルがあります。でも各地で少しずつ増えつつあります。僕たちも小さなことからではあるけれど、「ここのね未来チケット」制度を作って給付型の奨学金を始めたり、ここのねクリエイター制度を設けて、町にいる大人が先生になることでいろんな知識や技術を学べるようにしたりなど、少しずつ実績を貯めながら社会を変えていきたいですね。

*オルタナティブスクールとは

ヨーロッパやアメリカの哲学的思想をもとに発展していった多様な教育方法を取り入れた学校。画一的な教育ではなく、個人を尊重し子どもが本来持っている探求心に基づいて、自律的・主体的に学習や行事が展開されるようにカリキュラムが組まれていることが多い。

*フレネ教育とは

フレネ教育とはフランスの教師であったセレスタン・フレネが自身の勤める公立学校で始めた教育である。現在では「現代学校運動」と呼ばれ発展を続け、スペイン、ドイツ、ブラジルなど世界38か国に広がっている。子どもたちの生活や興味から出発した自由な表現による学習を重視しており「自由作文」「学校印刷所」「学校間通信」などの実践が行われている。学習は個別化されており自分で計画を立て協働しながら学習を進めるという方法を取っている。また学年ごとにクラスが分けられているということはなく、子どもたちが異年齢集団の中で助け合ったり学び合うことを学ぶ。

*イエナプラン教育とは

イエナプラン教育とは、ドイツのイエナ大学の教育学教授だったペーター・ペーターゼンが 1924年に同大学の実験校で創始した学校教育。 子どもたちを『根幹グループ(英語ではファミリー・グループを訳されることが多い)』と呼ばれる異年齢のグループにしてクラスを編制したことに大きな特徴がある。

*一条校とは

学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に掲げられている幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校のこと。

*美濃保育園

https://minohoikuen.com/

 

■各種データ参照元

https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/content/000021332.pdf

https://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/2063892.pdf

http://www.fukui-city.ed.jp/kyouiku/sozei2-e/html/school/index.html

 

PHOTO

  • 先生は町の人。時間割は自分次第。いまを生きながら「わたしのこたえ」を創る、想いでつながった3人が豊後大野で始めたここのね自由な学校。
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FACILITIE

"わたしのこたえ"を作る、ここのね自由な学校

対象年齢は6歳〜18歳。
募集定員:30名。
活動日:月火 9:00-15:30。
*9月からは月火水。
*来年度から毎週平日になる予定。
料金:1日3000円。
*現在は単発開催のみ。
*今後月額・年額に変更していく予定。

ここのね自由な学校

〒879-6441 大分県豊後大野市大野町田中2400

先生は町の人。時間割は自分次第。いまを生きながら「わたしのこたえ」を創る、想いでつながった3人が豊後大野で始めたここのね自由な学校。
WRITER 記事を書いた人

Tomomi Imai

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25歳でフリーランスとして独立し、多様な分野にてプロデュースやディレクター業を経験。モノコトヒトをつなぐひと。多様な伴走を得意とする。絶賛子育て中。ヨガ・サーフィン・音楽・映画・コーヒー・日曜大工が趣味。

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