大分移住手帖

若者と日田市がもっと暮らしやすくなるよう、日々走り続けるがむしゃらな“おとな”

Tomomi Imai

取材者情報

お名前
岡野涼子さん
出身地・前住所
出身地:大分県日田市
前住所:東京都
現住所
大分県日田市
家族構成
4人
職業
株式会社ENTO、一般社団法人NINAU代表
Webサイト
https://www.ninau.or.jp/about/
Facebook
https://www.facebook.com/staycafeento/
Instagram
https://www.instagram.com/staycafeento_hita_oita/

日田市生まれの岡野さんは、大学進学のために東京に上京しましたが、町を盛り上げることがしたいと、卒業後大分市へJターン。その後、仕事で日田市と関わる機会が増え、日田市に移住し、一般社団法人NINAUと株式会社ENTOを起業。高校生や大学生を中心に町の人が先生になる「おとな先生」という事業や、日田駅内に宿泊もできるカフェ「ENTO」をオープンし、経営されています。まさに日田市と人をつなぐ大事な役割を担っている岡野さんに移住秘話を含め、お話をお伺いしました。

地域活性化に取り組みたくてUターン。

高校生まで日田市で暮らした岡野さんは、大学進学のために東京へ出るも、学生時代から地域活性化に取り組みたいという想いが強く、就職と同時に大分県へ戻りました。大分市にある放送局へ入社し、番組制作の仕事をしながら20代を過ごしたそうです。

 

岡野:番組を作る中で元気な地域には元気な人がいるとわかり、「やっぱり人が大事」だと思って、放送局退職後にキャリアコンサルタントの資格をとりました。その後、大分大学のキャリア相談室で学生たちの就職活動のサポートを行っていました。その頃に日田市との協働活動事業で日田しごと学び舎」を発足するなど、徐々に日田での活動が増えていき、日田市に移住しました。生徒たちと企業訪問をしたり、座談会を企画したり。今行っている活動はその延長のようなものなので、日田市とはかれこれ8年ほどの関わりですね。

「どうせこの町は変わらない」と言われたのが悲しくて。

27歳と29歳の時に出産を経験した岡野さん。お子様も大きくなり、自由な時間も増えてきたので、地域活性化に本腰を入れるために大学職員時代に一般社団法人NINAUを立ち上げました。また、その3年後には株式会社ENTOを起業しました。

岡野:会社を興す前、「どうせこの町は変わらない」とある中学生に言われたことがとても悲しかったんです。みんなが諦めている状況が悔しく、自分にできることはないかと模索しました。起業がしたかったのではなく、やりたいことをカタチにしたものが法人でした。今となってはよく起業したなと自分が一番驚いていますけどね。

現在スタッフが3名、関わっている方々が7名ほどいるという岡野さんの会社。スタッフはそれぞれ、まちづくりに対して熱い思いがあり、岡野さんの会社で様々な経験を積んでもらい夢を実現してほしいと考え、一緒に仕事をしているのだそうです。

20-30代はまだ地域を諦めていない

日田市の商店街店舗でチャレンジショップを行う福岡や大分の学生たち

日田しごと学び舎の活動の中で、日田市内の学校で学校外部の大人が講演をしたり、子どもたちが会社訪問などを行う活動がベースとなり、「日田を担う人材育成事業」通称“おとな先生”という事業が生まれました。日田市にどんな仕事があるのか知ってもらうことと、自分がどのようにこれから生きていこうかと考える時間や機会を作ることが目的です。岡野さんの会社は、企業と学校現場の間に立ってコーディネーターとしてやりとりをします。一つの市の全小中高校で共通のキャリア教育を行っているのは大分県で日田市だけだとか。

この事業を通して日々高校生や大学生と関わりながら8年ほどたった今、日田市の若者はまだ地域に期待していることがわかってきたという岡野さん。

岡野:活動していてわかったのは、若者はまだまだ元気だということ。日田市の若者は元気だし、地域への愛着もあります。しかし、日田市や地方には仕事がないと思い込んでいます。日田で働く大人たちの姿を見せることで、日田市で働くという選択肢を与えたいと思っています。

自分で何かをする人とそのサポート体制が課題

日田市内すべての高校1年生が集まって自分たちの未来の事を考える「僕らのみらい会議」

今後日田市が活性化していくにあたって、どんなことが課題か聞いてみると、「個人が何かをしようというときのサポート体制が課題」だと感じているそうです。

岡野:お金の調達の仕方や店づくりを教えてくれるような起業支援はありますが、今課題だと思うのは、目に見えないものを売る人、例えばデザインやディレクションを行ったり、今までに無かったものを作り出すような人への支援だと感じています。特に現在の若者にはこの“見えないものを売る”仕事に就きたい人が多くいます。でも、普段大学生と関わっていると、入り口がわからない子が多いなと感じます。そういうやる気のある若者が1人でも地元で起業してくれればとても活気づくから、そういう関わりに対しての支援が必要だと感じます。

現在、プロデュースなど仕事の多くが目に見えないことである岡野さんの日常では、地域でまだ浸透していない職業を生業にしているのでなかなか理解が進まない場面もあるそうです。例えば、「何でご飯食べてるんですか?」「補助金を沢山貰ってるんでしょ?」というようなことを言われ、辛い思いをすることもあるそうです。

岡野:委託事業と補助金の違いなどを理解してほしいと思う瞬間も正直あります。今私がやっているような、細かい感情を共有して、みんなで話し合いをしながら良い方向に持っていくという仕事は、目に見えないけどすごく重要なんですよね。都市部ではディレクターや企画には予算を付ける文化があるけれど、地方にはまだまだ少ない。ただ今の若い子たちにはそういう素質があって、地域にも興味や意欲があるので、自分の仕事を通して今後彼らが暮らしていける土壌を作っていきたいですね。

行政とともに信頼を築く手伝いをしていきたい

「おとな先生」での訪問の様子

岡野さんは、日々日田市にいろいろな方々をつなぐ中で、関わる若者たちの特性を踏まえ、受け入れ側も若者たちがこれから活躍できるような道筋づくりをすることも大事だと感じています。

岡野:現在、地域おこし協力隊の制度が臨時職員のような扱いになってしまっていて惜しいと感じます。例えば、市役所内で2年間インターンシップをしてみるとか、受け入れ側にもう一工夫あるといいなと。今の若い子たちはチラシやweb、SNSを上手に作れますし、ITの知識も豊富です。役立てる能力を持っているからこそ、もっと受け皿を作れないかなとは思いますね。私のところに県外から来る大学生たちは、能力はあるのですが、地域のことを何も知らないで来ることも多いので互いに想いや意見がすれ違ってしまうこともあります。そのギャップを埋めていきたいです。

バックグラウンドが違っても協力しあっていきたい

「おとな先生」での訪問の様子

 

日田市がより活性化していけるよう日々奮闘する岡野さんは、毎日様々な打ち合わせを経て活動を行っています。いつも順風満帆なわけではなく、意見が合わなかったり、計画通りにいかないことも多いそう。それでもめげずに話し合いを続ければ、いつかは理解しあえると信じて進んでいるそうです。

岡野:簡単にうまくいってることなんて一個もないですよね。10個仕込んで3個形になれば上出来くらいの感覚です。今地域に必要なことって、民間だから行政だからではなく、バックグラウンドが違うもの同士が理解しようとしていくことだと思うんです。何かを始めようという時に、どんな小さなことでもまずは同じテーブルにつくというところから始めて、一緒に考えていきたいです。

そんな岡野さんのところで働きたいと思う若い子は多いのだそうです。現在多くの大学で地方創生関係の学びの場が増えていることも関係しているそうです。そんな若者を毎年新卒として採用してあげたくても、なかなかそうもいかない自身の会社の規模感と、そういう若者たちを日田市に留めてあげられないことに力不足を感じ、悔しいそうです。

また、「岡野さんを頼ってきてくれる若者を地域に還元できていない」のも、もう1つの課題だと感じているそうです。

岡野:私に関わったことで日田市に来てくれることはとても嬉しい反面、私以外の違う人や町と関わって欲しいのですが、それが出来ていないのも現状です。私のところで止めてしまってはダメだと思っていて。自分達で直接人や街と関わることにより初めてスタートに立つと思うんです。もちろん大変です。でもその経験がないと成長できない。私はあくまで“入り口”なんです。楽しそうが理由で良いから、その先にこの地域で暮らすフェーズまで持っていきたいとは思っています。

最後に

学生時代の経験から日田市を心の底から応援し続け、今は実際に移住して暮らしているからこそ感じる大変さや苦労もひっくるめて日田市を愛しているのだなと、インタビューの言葉の端々から強く感じました。紆余曲折ありながらも、この町でより若者たちが豊かに楽しく暮らしていけるよう支援し続けている岡野さん。彼女が運営する駅周辺のいくつかの拠点は、どこも公に開かれた空間になっていますので、ぜひ一度足を運んでみてください。

PHOTO

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FACILITIE

泊まることもできる町の入り口

STAY + CAFE ENTO

〒877-0013 大分県日田市元町11−1 日田駅 2F

若者と日田市がもっと暮らしやすくなるよう、日々走り続けるがむしゃらな“おとな”
WRITER 記事を書いた人

Tomomi Imai

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25歳でフリーランスとして独立し、多様な分野にてプロデュースやディレクター業を経験。モノコトヒトをつなぐひと。多様な伴走を得意とする。絶賛子育て中。ヨガ・サーフィン・音楽・映画・コーヒー・日曜大工が趣味。

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