大分移住手帖

大分県で働こう!~竹工芸家編~大分県で竹工芸家として活躍する竹工芸訓練センターの卒業生にインタビュー

Tomomi Imai

取材者情報

お名前
こじまちから
出身地・前住所
出身地:大分県津久見市
前住所:大分県大分市
現住所
大分県別府市
年齢
非公開
家族構成
3人
職業
竹藝家
Webサイト
https://synergiez.net/
Facebook
https://www.facebook.com/chikara.kojima

大分県は真竹の生産量が日本一で、竹工芸が盛んです。中でも別府市の「別府竹細工」は大分県で唯一、経済産業省から伝統的工芸品に指定されています。大分県は竹工芸産業の後継者を育成するために、「職業能力開発校」の竹工芸訓練センターを設置しています。竹工芸訓練センターとはどのようなところなのか、また大分県で竹工芸を生業にして暮らしていけるのか、竹工芸訓練センターの卒業生であり、実際に別府市内で竹工芸を生業にしている竹藝家(バンブーアーティスト)のこじまちからさんにインタビューしました。

大分県立竹工芸訓練センターで竹工芸が学べる

作業をするちからさん

まず、竹工芸訓練センターとはどのようなところなのでしょう。現在日本全国で竹工芸を学べる学校は2つしかありません。1つは京都にある京都伝統工芸大学校。そしてもう1つが大分県別府市にある「大分県立竹工芸訓練センター」です。職業能力開発校という立ち位置なので、求職者や離職者を対象にしており、試験に合格し入学が決まれば、授業料や入学金はかかりません。(教科書代は別途かかります。)

入学資格は高校卒業(見込みを含む)以上か同等の学力を有する18歳から39歳までが対象です。与えられた課題をこなしつつ、2年間で卒業となります。

かつては1学年30名程度の定員だったそうですが、近年は1学年12名程度になり、狭き門のようです。応募期間は毎年11月〜1月、試験は2月に行われ、4月より入学します。

オープンキャンパスも行われていて、予約すれば平日開校日に見学することも可能です。今年度はzoomによるオンラインオープンキャンパスも行われたのだとか。

卒業生の多くは竹製品製造企業へ就職したり、竹工芸作家の弟子になったり、工房を開いて自営したりするそうです。

卒業生インタビュー

竹藝家 こじまちからさん

竹工芸訓練センター卒業生で、現在竹藝家(チクゲイカ)として活躍されているこじまちからさんに、センターへ入学した経緯から、竹工芸を生業としている現在の暮らしまでお聞きするべく、ちからさんが経営しているものづくりコワーキングスペース「synergiez」へお邪魔しました。

日本文化に関わる仕事がしたくなり、竹工芸を学ぶ

竹ヒゴを作る作業を見せてくれたちからさん

 

高校を卒業後、大分市内で仕事をしていたちからさん。イベントの企画や店舗運営など色々な仕事をしながら、学生時代から続けてきたコントラバスの演奏をしていたそうです。会社員と演奏活動を両立していたちからさんは演奏での遠征も多かったそうで、ある時ロンドンに行ったのだとか。その旅先で外国人の友達ができ、話をしている中で日本のものづくりを高く評価してくれることが印象に残ったそうです。元来DIYが好きだったちからさんは、帰国後、改めて日本の文化や製品が地球の裏側まで届いていることを面白いと感じ、世界に認められていることが嬉しかったそうです。

ちから:この経験がきっかけで、日本文化に関わる仕事をしたくなったんです。当時コントラバスの演奏をしていましたが、コントラバスはヨーロッパで生まれたものですし、日本的なものづくりがしたくなったんです。そこで、地元の工芸を見直したら、竹細工があり、学校があることもわかったので、一念発起して仕事を辞め、センターへ通うことにしたんです。演奏と同じで、コツコツ練習して上手くなっていくものだと思ったので、時間がかかることを前提に挑戦することにしました。

卒業後はその人次第

竹ヒゴから編み上げていくちからさん

ちからさんが入学した頃に定員数が12名に変わり、途中で辞めてしまう人もいたそうで、一緒に卒業したのは8名だったと言います。この内、大分県に残ったのは半数以下。全国から学びにくるので地元に帰ったり、県外で活動している竹工芸家に弟子入りしたりしたそうです。2年間のカリキュラムは、竹工芸を学ぶには最適だったと話すちからさん。卒業した後、どうしていきたいかを考えながら学ぶことが大事だと話します。

ちから:受講生の多くは関東や関西などの都市部から来ている方が多かったですね。都会での暮らしに疲れて大分県に移住目的で来られる方もいますし、先祖代々竹工芸をやっていて継ぐために来る人もいます。竹工芸を学ぶ場が全国でも京都と大分にしかなく、大分は生活コストが低いのも魅力の1つのようです。ただ、卒業したところで上手くいく保証は何もないので食べていくために複業をしている人も少なくありません。僕もある意味その1人で、軸は竹の仕事にありますが、いろんな仕事と兼ね合わせてやっています。僕は独立して4年目になりますが、技術だけがあれば独立できるわけではないんですよね。独立して上手くいくかはその人の資質と覚悟によりますよね。

ちからさんの場合、卒業してすぐに竹工芸の仕事があったそうです。学校に通っている間に先輩の仕事を手伝ったりすることで顧客に繋いでもらったのだとか。技術力はもちろんですが、ある程度人とのコミュニケーションが取れることも、仕事を作る上での1つのスキルだと話します。

ものすごいスピードで竹を加工していくちからさん

ちから:学校で竹ヒゴの作り方を習うんですが僕らの仕事は竹ヒゴを作ることが作業の8割を占めます。今は職人不足でアシスタントが欲しいくらい制作できる人がいないんです。そんな人手不足の業界ではありますが、多くの竹工芸作家と同じ様に、僕も最初は竹細工だけでは食べることはできませんでした。ただ物を作るだけでなく、販路というか出口を作ってあげることが大事ですね。作っただけでは売れないので、そのバランスを保つことが難しい部分ですね。

さまざまなサイズの竹ヒゴを作る

独立後、手数を増やしていった

竹細工ができるまで、ちからさんも実際に山へ入って竹を選び、切って、加工して、竹ヒゴを作ったり筒を作ったりしますが、実際の作品を見ただけではその大変さを分かる人は少ないです。多くの方がアナログな作業を想像しがちな竹工芸家ですが、ちからさんはより竹工芸を発展させるために今までの枠を超えた活動を行っています。

例えば、ガレリア竹町で行われた「うつくしツリー」企画では、地上10mにもなる巨大クリスマスツリーの部材、約100メートルを竹で作りました。この際、先輩職人も含む県内の竹工芸作家を集め、自ら企画書を書き、プレゼンテーションしたそうです。これ以外にも、行政案件を中心に、大規模な企画を進んで行うようになったそうです。消費者に出来上がったものだけでなく、作り上げる過程も知ってほしいと思い、自分たちで竹工芸を制作中の様子を収めた動画を作っているのだとか。

シェアワークスペース「synergiez(シナジーズ)」の新しい挑戦

synergiezでは最新型レーザー加工機による文字やロゴの刻印などもできる

大きな作品作りをするために5年ほど前に作業所として借りた空き店舗を、2019年よりコワーキングスペース兼シェアワークスペース「synergiez」としてオープンし、ちからさんはクリエイターとして新たなステップへ進もうとしています。

3Dプリンターや業務用ミシンなどあらゆるものづくりに対応している「synergiez」

ちから:ここにあるのは僕の所有している工作機械です。様々なジャンルがあるので一部はものづくりをする方々へお貸ししています。現在はこのスペースの経営もしていて、株式会社synergiezとして法人化しました。個人の仕事では小さな竹細工から、竹を利用した楽器、公園やビルの空間演出などの大きな作品までデザイン・制作します。一般的な竹工芸だけでは今後需要を獲得するのはなかなか難しいかもしれません。竹工芸を軸にしていろんなことに挑戦してみるといいと思います。synergiezでは、竹工芸だけでなく、さまざまなものづくりの方が集まれるようにしました。吹き付け作業や3Dプリンター、レーザー加工による彫刻や切断、ミシン作業に至るまでなんでもできます。この中で竹との触れ合いを増やして、需要を作っていきたいと考えています。開業時期がコロナ禍と重なり、PRもままなりませんでしたが、この1年半で現在数社の企業が利用してくれていて、個人も数名通っています。

現在、竹工芸を中心とした仕事でどのくらいの収入があるかお聞きしたところ、「好きな車には乗れている」「家賃だけでも20万円ほどの固定費は払えている」というちからさん。クライアントの約半分は行政関係だそうです。また、外国人観光客への体験提供も行っていて、例えば刃物の研ぎ方や日本の伝統工芸品に関わるワークショップを提供したり、今年はパリとニューヨークに出店することも決定しているのだとか。ちからさんの活動はもはや世界に広がっています。

ワークスペースとコワーキングスペースがある。取材時はIT関係の学びが展開されていた。

多くの人の目に触れて欲しい

現在試作中の竹細工でできた蝶ネクタイ

現在別府市内には50人以上の竹工芸作家(主に伝統技法を主とする)がいるそうで、多くは製竹所の関係で朝見神社の付近に集まっているそうです。案件の規模が大きくなってくると、別府市内の作家だけでは難しいこともあり、繋がりが増えることは嬉しいものの、別府市内だけで完結できないジレンマもあるようです。

ちから:大分県は真竹の生産量が日本一で材料は充分にあるのですが、竹を山から取って来ても、作品によってはすぐに使えません。油抜きをして、加工しやすい状態にしたり、染色したりします。竹の材料を作ってくれているのが製竹所(セイチクショ)なのですが、昔は相当な軒数があったものの、竹が生活に使われなくなって、現在別府市内には120年続いている1社しかありません。産業存続の観点から製竹所の存続は死活問題です。だから大きな作品作りを行い、竹をたくさん使って、多くの人に竹工芸をPRし、業界全体を盛り上げていきたいです。

最後に

竹工芸だけを生業にして暮らしていくには工夫が必要なようです。しかし、産業として成り立たせていく上で、大分県のサポートが手厚いので助かっているというちからさん。竹工芸で有名な別府市でさえも、材料を作り出す製竹所が1軒しかないというのには驚きを隠せませんが、担い手が減っているというのはある意味挑戦できる枠があるとも考えられます。都市圏から移住してきて作家になるケースは多く、ちからさんのように敢えて多業種と積極的に交わることで新たな道を作っていくこともできるというやり甲斐や可能性を感じました。synergiezでは竹工芸だけでなくITの仕事や飲食など幅広い使い方ができるそうなので、別府市に来た際はぜひ一度寄ってみてください。

子育てと両立を目指しながら日々制作作業を行うちからさん。

FACILITIE

シェアアトリエ
月会員  8000円
時間利用 4000円/day
     1000円/h 

SynergieZ(シナジーズ

〒874-0933 大分県別府市野口元町4-29 1F

大分県で働こう!~竹工芸家編~大分県で竹工芸家として活躍する竹工芸訓練センターの卒業生にインタビュー
WRITER 記事を書いた人

Tomomi Imai

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25歳でフリーランスとして独立し、多様な分野にてプロデュースやディレクター業を経験。モノコトヒトをつなぐひと。多様な伴走を得意とする。絶賛子育て中。ヨガ・サーフィン・音楽・映画・コーヒー・日曜大工が趣味。

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