取材者情報
津久見市保戸島は、津久見港から船で25分ほどの距離にある人口400人の島です。令和3年の夏現在、子どもは3人のみ。その内の1人の父親である神崎さんは、島の学校存続や伝統文化の復活などのために幅広く活動してきました。また、島おこし団体「穂門ノ郷」を有志と立ち上げ、移住してきた人や若者が活動しやすいようにと奮闘している神崎さんにお話をお伺いしました。
レトロな家々と迷路のように入り組んだ路地が特徴的
神崎さんが生まれ育った保戸島は、周囲が約4kmとコンパクトな島で、島の一部は日豊海岸国定公園にも指定されています。「まぐろはえなわ漁」の基地として繁栄しました。その繁栄の様子は、港町に広がるまるで西洋のような街並みにもよく表れていて、この保戸島集落の景観は「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財百選」にも選ばれています。自慢は島の景観だけではありません。食の面でも、マグロやサザエ、伊勢海老などが有名で海産物の宝庫です。
集落の中に入ってみると、上下左右、立体的に路地が入り組んでいて、少し歩いただけでも自分の居場所が分からなくなるほど。歩いていると、郵便局や商店、家庭菜園、井戸などがあり、島の人の暮らしを感じながらも、映画の世界を冒険しているかのような感覚になります。
保戸島は平地が少ないため、狭い土地に密集して家が建っています。そのためか、日本で一般的に見られる平屋や2階建ての家は少なく、コンクリート造りの3~4階建ての家が多いのが特徴。レトロな外観の家々が並び、それも相まってどこか外国のような雰囲気を感じます
新しいことを始めたい方大歓迎。
島民の主な職業は漁業ですが、兼業の方が多いようです。他にも商店を経営していたり、市役所・漁協・診療所・デイサービス等で働いている人がいます。保戸島への移住はどんな方に向いているのかお聞きしました。
神崎:現在いる島民の多くは高齢だし、これから島にUターンしたり移住してきてくれる若い世代には起業など新しいことをぜひやってもらいたいし、バックアップします。収入を確保するには1つの仕事だけに集中するよりも、複数持つ方が暮らしやすいかもしれません。たくさん儲けようというよりは、豊かな生活をしたいという方で、自分たちの手で一から仕事を作っていくような方が向いていると思います。起業だけにこだわらず、島暮らしに興味がある方は一度ご相談ください。
浄水も完備され、wifi環境も整っていて、ライフラインは問題ないですが、商店などは17時には閉まり、日曜日はどこの店もやっていないそうです。また、現在船は1日6便で、津久見港発最終便は18時という移動に関しての縛りはありますが、島の生活リズムに慣れてしまえば困らないと言います。
島の子どもは現在3人だけ。
現在、この島に住んでいる子どもは全部で3人。神崎さんは保戸島で生まれ育ち、現在は大分県漁協保戸島支店に勤務しながら、学校存続や伝統文化復活のための活動を始め、島おこし団体「穂門ノ郷」設立をするなど、島の存続のために幅広く活動されています。
神崎:島には高校がないので、現在小中学生合わせて子どもは3人です。未就学児はいません。かずまきという伝統文化が途絶えていたのですが、島おこし団体として作った穂門ノ郷のメンバーで、ルーツである対馬へ習いに行って復活させました。現在はUターンした30代後半の方が10年以上続けてくれています。小学校では、過去の空襲の歴史を伝えていくために、子ども達と一緒に歌をつくりました。島の存続を考えても、学校は残しておくべきです。令和6年に津久見市の中学校が統合するので、今後どうなるか気になっています。
現在3人が通う小中学校の目の前には海が広がっています。ここで遊んだり、課外活動をすることもあるのだとか。校庭も体育館もある立派な校舎です。
神崎:最近では、子ども達の方が色々知っていて、保戸島の活性化のためにクラウドファンディングをしたいなどと話しています。公立小中学校の中でも比較的学習内容や活動の自由度が高く、一人ひとりにきめ細かな指導が行われているのが小規模校ならではのメリットだと思います。
子どもを連れてくればみんなで見てあげられる
保戸島は、人と人の距離が近いからこそ、地域みんなで子どもを見守ることができ、親としても安心感があるそうです。
神崎:登下校の道には、毎日同じ時間におじさんやおばさん達が集まって談笑している場所があり、歩いているだけで会う人会う人に話しかけられるので、家に帰り着くまでに時間がかかることもあります(笑)。それだけ島民に見守られているので、寂しいということもないし、相談もしやすく、安心感がありますね。
面白くなるか廃れるかの瀬戸際だから面白い
今回の取材では、神崎さんを始め津久見市や保戸島を盛り上げたいと考えている方々が集まって座談会のようになりましたが、その中で話していたのは「何もないから面白い」ということ。このまま何もしなければ廃れていってしまうかもしれませんが、新しく面白いことを始められる可能性が無限にあると皆さん語ります。取材中も、カフェを作ったらどうか、民泊を再開したらどうかとアイディアがどんどん生まれていました。その後島を一緒に巡る間も「この空き家はカフェで使うと良い」など、島を熟知している人ならではの情報を沢山教えてくださいました。おしゃれな空き家も多いので、保戸島の豊かな自然環境の中でカフェや民泊を経営してみたい方にはおすすめかもしれません。保戸島には一緒に島を盛り上げてくれる人を応援してくれる地元民がたくさんいることがわかりました。
最後に
お昼にいただいたマグロ料理が美味しい小料理屋「穂門島大川」の女将さんも保戸島を盛り上げる担い手として活動されていて、一日いただけで保戸島のキーマンや面白い場所をたくさん知ることができました。そんな保戸島に興味がある方は「保戸島.com」から直接問い合わせて、ぜひ島の方々に会ってみてくださいね。