大分移住手帖

自分らしさと居心地の良さを求めて佐伯の仲間と共に暮らす。

Tomomi Imai

取材者情報

お名前
平井佐季
出身地・前住所
出身地:福岡県福岡市
前住所:福岡県福岡市
現住所
大分県佐伯市
年齢
33歳
職業
佐伯市地域おこし協力隊
他フリーでイベント企画、藍を使った商品開発販売、実家の花屋「花キク」関連のお仕事も。
Webサイト
https://kurenoaisk.stores.jp/
Instagram
https://www.instagram.com/sakiiiness/

福岡・中洲にある花屋生まれ育ちの平井さんは、元々水上スキー選手・水上スポーツインストラクター。笑顔が素敵でいろいろなところに友達も多い平井さんが移住したのは、大分・佐伯でした。彼女が大分・中津での青春期を踏まえ、佐伯移住に至った経緯と、彼女の今と今後についてお話をお伺いしました。

ザ・博多っ子。中洲のど真ん中で生まれ育ったアクティブ女子。

花キクで働く平井さん

 

中洲の真ん中にある花屋「花キク」で生まれ育った平井さんは、山笠やお祭りどんたくにも出るようないわゆる“博多っ子”。幼い頃から広島や北海道に行くほどスキーに熱中し、幼なじみともよく高速バスに乗って通っていたそうです。中学2年生の時にスノーボーダーへ転身し、週1で雪山へ通うほどだったそうです。大学に入り幼なじみがいると言うことで、水上スキー部に入部し、のめり込む毎日。その部活のホームが大分・中津にある耶馬溪であったことから、これまた週1ほどは福岡から耶馬溪へ通っていたそうです。

水上スキーのトレーナーとして中津市耶馬溪へ移住。

水上スキーを満喫する平井さん

大学卒業後は福岡の実家の花屋を手伝いつつ、スチール*のカメラスタジオに勤務していた平井さん。その頃、色々手広くやっていたこのスタジオからの勧めで広告代理店営業として熊本へ1年ほど住むことになったそうですが、始めての土地で未熟だったこともあり、これが結構大変な日々だったそうです。

そんな頃に水上スキーの上司が「枠が空いたよ」と声をかけてくれたことで、24歳の時に水上スキーのインストラクターとして中津市耶馬溪へ移り住みました。

水上スキーで日本代表を目指していた平井さん。毎日トレーニングの日々だったそうですが、なかなか代表にはなれなかったそうです。それでも諦めきれず頑張っていた矢先、右足に大怪我を負ってしまいます。

4ヶ月ほど入院している間にプロとしての自分を見直し、体も鍛え直しながら、水上に復帰。29歳の時にようやく全日本水上スキー選手権に出場し、見事3位に輝くほど驚きの復活を見せたそうです。

同じ年の冬についに転機が訪れます。

先の選手権での結果順位に基づいて、アジア・オセアニア大会出場へ声をかけてもらえた平井さん。開催場所はニュージーランド。当時トレーナーとしても活躍されていましたが、意を決して参加することにしたそうです。ずっと見たかった世界を見に行き、すごいアスリートたちがいる中で、レベルが全然違うことも知った上で平井さんが感じたのは「ここ以外にも自分のいる世界/領域がある」ということでした。

「休む」ことを知り、当時関わっていた耶馬溪のことも見直したそう。耶馬溪は日本でも早い段階からオーガニックや安全な食などに関して取り組んでいた地域で、地域内での「循環」を意識している方々も多かったので、そんな場所に自分が暮らしていたのだと改めて見直す機会にもなったそうです。

ニュージーランドから帰国後、水上スキーを引退し、2018年に耶馬溪を出て期限を決めずに一度福岡へ帰ることにした平井さん。福岡が大好きなのは変わらず、家業である花屋を手伝いながらも、ニュージーランドや耶馬溪で学んだことと、都会の中心にいる自分とのギャップを感じるようになっていったそうです。

友達の縁でたまたま訪れた佐伯にハマって「月一佐伯/ツキイチサイキ」活動を開始。

佐伯で行われているアイリッシュミュージックのイベント

そんな平井さんが佐伯と出会ったのは、中津にいる間に出会った長野県で暮らす友人から「佐伯でリノベーションの仕事をするから遊びにおいでよ」と誘われたのがきっかけでした。

「最初は手伝っている現場にいたのもあり、佐伯の人にそこまで会わなかったのですが、天気が良かったのもあり、現場に向かう道中景色も綺麗ですごく楽しかったので、印象に残っていました。その数ヶ月後また行ったのをきっかけに月に一度佐伯に行く『ツキイチサイキ』とう活動を始めたんです。」

こうして、約1年ほど毎月福岡から電車や車で佐伯に月1回通っていたそうです。「福岡にいる自分より佐伯にいる自分が好きだから」、そんな自分に会いに行っていたという平井さん。

そうして「ツキイチサイキ」を何度か行う中で、移住を決めた場面があったそうです。

「佐伯は“目があったら知らない人でも挨拶をする”文化があるんです。ある夕方に土手を歩いていた時に、あるアパートの部屋の窓をの方をふと見たら、知らない小さな男の子が自分の方を見て手を振ってくれたんです。『え、私に?』と驚きつつも、『こんな人懐っこい子供が育つ町なんだ』とすごく温かい気持ちになり、ここで暮らしたいなと思うようになったんです。」

役場職員のアシストで地域おこし協力隊として佐伯へ移住。

リヤカー商店街を企画したときの集合写真

日頃からいろいろな地域へ足を伸ばしている平井さんは地域おこし協力隊(以下協力隊)の友人も多かったそうです。良いことも大変なことも色々聞いていたのもあり、活動内容もある程度イメージできていたそうです。そこで、佐伯市に住む方法としても自由度が高く、尚且つ、佐伯市役所員の友人から協力隊を進められ、協力隊への応募を決意したそうです。通う中で出会った役場職員のアシストもあり、佐伯移住の準備が着々と進んで行き、2019年5月に赴任し、佐伯へ移住しました。佐伯の協力隊は当時で14人ほど。年齢も幅広く、上は60代もいるそうで、経験豊富な方々と一緒に活動することで学びが多いそうです。

現在は「サイクルツーリズム推進課」に在籍している平井さん。サイクリングを日常から文化にする企画を担当しています。その中でも行っている企画は「佐伯の日常が体験できるツアー」。大入島を一周して写経したり、キャンプ場へ行って一泊し、翌日藍染体験ができるものや、海に日の出を見に行ってゲストハウスで野草の朝ごはんが食べられるなど、ワークショップを自転車ツアーに組み込んでいるそうです。元々求められているのはもっと観光よりだったようですが、暮らしが先に見える観光で、息が長い企画をしたかったそうです。

今後は「暮らす働く住む」がお試しで体験できるような場所を作りたい。

地域おこし協力隊の卒業が目前の平井さん。卒業後は、こちらで見つけたみどり荘という建物を「住む働く暮らすがお試しで体験できる場所」にする場づくりを計画中だとか。みどり荘は、裏には佐伯のシンボルである城山があり、おばあちゃんの畑もありつつ、道に面していないので静かで落ち着けるようなちょうど良い立地だそうです。

「今、佐伯には“お試し移住”ができる施設はないんです。空き家でしようとすると、案外家賃が高いのが現状です。また、私はキーパーソンがいたからすんなり佐伯のコミュニティに入れましたが、みんながそうできるわけでもないと思うんです。いろんなタイプの人にとって“暮らしのハブ”になるような場所を作りたいと考えています。上はお試し移住ができて、1Fはスタートアップ店舗やコワーキングとして使いたいなと。旅もできるし暮らすこともできる、働くことも暮らすことも考えられる場所にしたいですね。なんでやりたいかというと強い理由はないのですが、“旅”や”暮らし”という言葉の周りにいる人たちとの出会いが好きなんです。」

大分はどこが一番ということに拘らない。自分らしい普通の暮らしをすればいい。

福岡と大分で暮らしてきた平井さんは、どちらにも友人が多いですが、大分と福岡で友達の作り方は違うと言います。そんな大分の印象と、今後佐伯に移住したい方々へのメッセージをお聞きしました。

「大分は真面目で突き詰める人たちが多いなと思いますね。とってもゆっくりしてる人が多いとも感じます。どこが一番というのもそこまで拘ってないのがいいですよね。博多っ子は博多が一番!と思わず言っちゃうことが多いですが、大分ってお互いの地域を尊重しあっている印象があります。

コミュニティに入るには何か特有なスキルがいるのじゃないかと思ってしまう人も多いかもしれませんが、あっても無くてもいいと思います。移住者に課題を与えすぎる必要はないと思うんです。特殊能力がなくても問題なく佐伯では暮らせます。飛び抜けてなくていいし、目立つコミュニティに無理して入ろうとしなくてもいい。能力や肩書きがあるならそれはそれで活かせばいいし、無くても自分らしい普通の暮らしをすればいいと思うんです。どんな人でも入ってきやすいような“佐伯の入り口”を私は作りたいですね。」

最後に

元々は水上スキーやウェイクボードといった特殊スキルを持っていたものの、それらを一度横に置いて、本来の自分らしさや自分らしい暮らしを模索している中で出会った佐伯という町。彼女にとっては人生の通過点かもしれないけれど、ここで出会った唯一無二の仲間たちと織りなす日々のなかで、自分自身も町の入り口になりたいと思うようになったのは、既に“佐伯市民”としての意識が芽生え始めているからなのだろうなと感じました。彼女にそう思わせてくれたのは、きっとこの町の人や風土のおかげかもしれません。強い目的を持って移住するのももちろん良いですが、彼女のように風来坊のようにやってきて、自分なりの居心地の良さを見つけて暮らすような、軽やかな移住の仕方も今後増えていくかもしれません。そんな移住の仕方に悩んでいる方は、ぜひみどり荘に立ち寄って平井さんとお話ししてみると、いろいろなアイディアをもらえるかも。佐伯に今度どんな人たちが降り立っていくのかが楽しみです。

*スチール
静止画

WRITER 記事を書いた人

Tomomi Imai

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25歳でフリーランスとして独立し、多様な分野にてプロデュースやディレクター業を経験。モノコトヒトをつなぐひと。多様な伴走を得意とする。絶賛子育て中。ヨガ・サーフィン・音楽・映画・コーヒー・日曜大工が趣味。

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