大分移住手帖

人を繋げる場づくりと表現者として向き合う豊後高田で出会った本当の“暮らしやすさ”。

アバター 青木 奈々絵

偶然立ち寄った道の駅の看板がきっかけで、豊後高田市に移り住むことになった遠藤さん。地域おこし協力隊の制度を利用しながら、その先の暮らしを見据えて精力的に行動し、現在はパン屋として、また健康法の施術師として活動しています。必要とされる場所で自らの思いを発信する遠藤さんが考える地域の本当の魅力とは?『豊後高田!あるある本』の製作者としても知られる遠藤さんにお話を伺いました。

偶然立ち寄った道の駅にあった空き家バンクの看板が移住のきっかけに

熊本県で生まれ、学生時代を関東で過ごした遠藤さんは、大学卒業後にUターンし、美術の講師として地元・熊本の学校に勤めていました。講師を辞めてから旅すがら宇佐市に立ち寄り、近くの道の駅で夜を明かしたそう。そこで見つけた一つの看板がきっかけで、大分への移住へと動き始めます。

「深夜に温泉に入りたいと思ってたまたま宇佐市の妙見温泉に立ち寄ったんです。朝を迎えるとその周辺の景色がすごく良くてびっくりしました。道の駅に、ベニヤ板に油性マジックで『空き家あります』と書いてあったのを見つけました。それから空き家バンクを調べてみたのがきっかけです。」

宇佐市をはじめ、周辺地域の空き家バンクに登録した遠藤さんですが、中でも豊後高田市の対応がすごかったそう。登録した当日に電話がきて、どんな家がいいか親身に相談にのってくれたのだとか。希望条件にあった物件の資料を郵送してくれたり、遠方にいながらもこの対応の良さに心を動かされたそうです。そうして物件見学を重ね、豊後高田市に住まいを見つけるに至ったそうです。

地域おこし協力隊活動の傍ら、1年間関西に通い習得した楽健法。

地域おこし協力隊として豊後高田市へ移り住んだ遠藤さん。活動内容は、高齢者向けの健康寿命をのばす運動のインストラクターでした。教員経験がある遠藤さんは人前で教えることは得意でしたが、専門知識がなかったため福岡にヨガのインストラクターの勉強に通い資格を取得したのだそうです。また、行動派の遠藤さんは当時本で読んで興味をもっていた楽健法(らっけんほう)についても学ぶため、大分から関西へ出航するフェリーを利用し、楽健法の本部・東光寺がある奈良まで1年間通いました。

「楽健法は正式名称で『二人ヨーガ楽健法』という、全身を足で踏みあって体をほぐす健康法なんですが、独学でやってみたらすごく効果が感じられて。せっかくなら本部で学びたいと思って、1年間通うことにしました。

健康のためのパン作り。発信ツールとして焼き続けたい。

地域おこし協力隊の任期終了後、豊後高田市にある「花いろ温泉」内に、楽健法と楽健寺天然酵母パンの店「クレージー伊勢屋」をオープンしました。「健康法とパン?」と疑問に思い伺うと、人の体のこと、そして表現者としての思いを語ってくれました。

「いくら体をほぐしても、食生活がひどいと体は凝り固まってしまう。外から与えるものだけでなく、内側からも健康にしていこうという考えに基づいて、楽健寺天然酵母パンがあります。楽健寺天然酵母パンは、23週間常温に置いたままでもカビが生えないんです。現代の常識では、カビが生える=保存料が使われていなくて体にいいものとされていますが、「カビが生える」というのはイースト菌を使うことで完全に発酵していないのにパンとして出来上がってしまっているという現象。イースト菌を使えば早くて簡単にパンはできるので、一見良いことのように思われがちです。

本当にいいものというのは、“簡単・便利”であることとは限りません。“簡単・便利”になったからこそ、本質が見失われているということも往々にしてあって、あらゆることに共通していると思うんです。文明が発達したことで失われてしまう本質があると考えています。私は、パンを焼くことで、それらのことを少しでも知ってもらう機会になったらいいなと思っています。発信する手段として楽健寺天然酵母パンを焼いているんです。」

師匠である楽健法の先生が、「文明批評のための発信ツールとして80歳を超えた今もパンを焼き続けている」というその考えに共感して、遠藤さんも楽健法とともにパンを焼き始めたのだとか。「実はパンはあまり好きではないんです」と笑いながら話す遠藤さんからは、師匠から受け継いだ強い思いを感じました。

移住者と地域住民の枠にとらわれない場所で人と人を繋げる。

個人としての活動をする傍ら、協力隊の任期終了に伴い、「楽しい暮らしサポーターズ事務局*」を発足。現在は4名の仲間と運営しており、遠藤さんが代表を務めています。「ブギウギお茶会」と称した市内外から誰でも参加できる交流の場や、不定期でイベントを開催するなどして人が集う場所づくりを行っています。地域住民と外から来た移住者が区別なくつながりをもってほしいという思いから、移住という言葉を使わず楽しい暮らしとして活動し、現在3年目を迎えています。

イベントは、素敵な場所なのにあまり使われていない市営の施設などで、既に仕事を退職された世代の方や、お店をやっていないけどすごい趣味があるなど、あまり表に出ない方にもワークショップをお願いしたりしています。今まで開催した内容には、家具職人さんによる漆喰塗りのリフォームワークショップや、台湾から移り住んだ方による皮から作る餃子作りなど。交流の場が生まれるきっかけになり、それでいて自分たちが『楽しそう!』と感じることを大切にしています。嬉しいことに年々参加してくれる人は増えていて、継続こそ大切だと思っているので、これからも人と人が繋がるような活動を続けて行きたいです。」

この事務局では、移住者が経験する驚きや戸惑いを率直に描いた『豊後高田!あるある本』も製作しており、遠藤さんがイラストを手がけています。自虐を踏まえた、市民も思わず笑ってしまうようなネタが満載で、20201月には地域活性化センターの『地域プロモーション大賞』のふるさとパンフレット部門で大賞を受賞しています。

頼れるのは近所の人。地域の本当の魅力を実感する豊後高田のまち。

豊後高田は人が良く、地域としてつながりができやすいことを実感しているという遠藤さん。生まれ育った場所が都市部だったため、地元では地域との交流はほとんどなく、実家では近所の方や隣に住む人さえ知らないと言います。

「ここでは、わからないことはとりあえず近所の方、地域の方に相談します。遠くの友人や親戚ではなく、隣の人を頼るんです。これって当たり前のことではないんですよね。狭いネットワークなのですぐ人と繋がって、その人がまた別の誰かと繋げてくれて。何かやりたいことができた時の、周りの人たちの協力する姿勢とそのスピード感に驚かされます。地域の本当の魅力ってこういうところにあるのだと、豊後高田の人と出会って感じています。」

 

*豊後高田!あるある本

豊後高田市で創設した「楽しいくらしサポーターズ事務局」により発行。地域のあるあるネタを軽妙なイラストなどで紹介している。自治体のプロモーション活動を表彰する「地域プロモーション大賞」(一般財団法人地域活性化センター主催)のパンフレット部門で20201月に大賞を受賞。

楽しい暮らしサポーターズ事務局

2018年に発足。移住者や地域住民の交流の場として、不定期でイベントや交流会などを開催している。

最後に

遠藤さんが語ってくれた、人との交流がある暮らしやすさ。そこには移住者と地域住民という枠は感じられませんでした。「同じ空気を吸う人みんなで楽しく豊かに暮らしをよくしていこう」という思いが込められているのかもしれません。今や「住みたい田舎」として全国に名をとどろかす豊後高田市ですが、メディアだけでは知ることのできない、その町で暮らす心地よさを遠藤さんのお話から感じることができました。ずっとこの場所に暮らしてきた人には当たり前で気づかない地域の魅力を、遠藤さんの言葉でハッと気づかされる方も多いかもしれません。ブギウギお茶会から生まれるアイデアは、きっとこれからの暮らしをより豊かにしてくれるはず。気になる方はぜひ、気負わず参加してみてくださいね。

取材者情報

お名前
遠藤愛子(えんどうあいこ)
出身地・前住所
熊本県熊本市
現住所
大分県豊後高田市
年齢
30代
家族構成
夫婦2人と柴犬1匹
職業
クレージー伊勢屋
楽しい暮らしサポーターズ事務局
Webサイト
https://bungotakadakurashi.jimdofree.com/
Facebook
https://www.facebook.com/crezyiseya/

PHOTO

  • 人を繋げる場づくりと表現者として向き合う豊後高田で出会った本当の“暮らしやすさ”。
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WRITER アバター 記事を書いた人

青木 奈々絵

大分県杵築市へ移住。地域おこし協力隊として移住支援活動を行う。国東半島に伝わる七島藺(しちとうい)に惹かれ、工芸の技術を習得し、杵築七島藺マイスターとしても活動している。農家民泊の開業を目指して、築150年の古民家をセルフリノベーションに奮闘中。

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