取材者情報
- お名前
- 村上 陽
- 出身地・前住所
- 出身地:沖縄県
前住所:沖縄県島尻郡与那原町東浜
- 現住所
- 由布市狭間町古野
- 年齢
- 39
- 家族構成
- 妻、子2人(お腹の中にもう一人)
外国人向けガイドとして、繁忙期は日本全国を飛び回る忙しい生活を送りながら、地元の沖縄から由布市狭間町に移住して家族で暮らしている村上さん。子どもの教育環境を考えて見つけた理想の保育園と自然環境豊なこの地で暮らしを満喫している村上さんに、移住に至るまでと、移住後に通っている保育園についてお話を伺いました。
子どもたちに四季のある生活を
移住するまでは沖縄で生活していたという村上さん。移住に至るまでをお聞きしました。
村上 : 一年を通して温暖な沖縄で生まれ育ちました。日本の学校には一度も通ったことがなく、幼稚園から高校までインターナショナルスクールで学びました。
高校時代、マクドナルドでのアルバイトからはじまり、居酒屋、アパレル、旅行会社、アマチュアバスケットリーグの運営、家具作り、カフェ経営、宿経営、フリーのガイドなど色々な経験を経て、今は外国人旅行者向けのガイドとして働いています。
現在の仕事はウォークジャパンからの依頼が中心で、熊野古道や中山道などの古い日本の街道を外国人旅行者にガイドしながら、一緒に歩きます。大分でも国東半島や別府・由布院などのツアーがあります。主なシーズンの春と秋は日本全国を飛び歩き、夏と冬はゆっくり過ごしています。
いずれは日本人を海外に連れて行く旅行会社を立ち上げたいと考えていたのですが、縁あってウォークジャパンの社員さんと仲良くなり、仕事を紹介されて以来一辺倒です。
移住前も子育て中心で、移住後の今の生活とあまり変わらないという村上さん。移住自体にも前向きだったそうです。
村上 : 仕事柄どこに住んでいても問題ないし、日本一周原付の旅やヨーロッパ周遊車中泊の旅を経て、その気になればどこでも住めるなとも感じていました。毎日移動しながら住むという面白さに気づき、1年以上家族3人で小さなキャンピングカーで暮らしていたこともあります。そういった経験もあり、他の方に比べると移住についてフットワークが軽い方だと思います。
移住前も特に大きな悩みはありませんでしたが、妻が宮崎の出身で、四季のある生活が恋しいと言っていたことがきっかけで、自然と子どもにも四季のある生活を送らせてあげたいと考える様になりました。
自然が豊かで、湧水で畑ができるような、子育てをするのに適した場所に出会えたらいいなと思っていました。
移住に至る経緯・決め手
温暖な気候の九州へ移住したいと思っていた村上さん。当初は子どもの教育環境を考えて選択肢が多い福岡が候補に上がっていたそうです。
村上 : 自然環境もそうですが、良い保育園があるということを最も重視していました。沖縄で通っていた保育園はシュタイナー教育*1を取り入れていて、福岡県糸島市で同様の教育を行うところを見つけ、早速見学しました。とても気に入ったのですが、同じタイミングで糸島市内に大学が分校を作った影響で大学生がたくさん引っ越してきていて、住居が確保できなかったため、福岡移住は断念したんです。
他の県も含めて探し始めたところ、由布市狭間町にある保育園「こどものにわ楓」を見つけました。現地に足を運んでみたところ、通っている子どもがのびのびしていて、子どもたちのご両親も素晴らしい方々ばかり。子どももフランクに接してくれるなど包容力があり、「大分の人って優しいな」と感じ、すっかり気に入りました。
保育園を見学した際に、付近を散策する中で出会う大分の人々も優しかったそう。特に子どもに対しての接し方が柔らかく、車を止めてわざわざ声をかけてくれたことも。
この体験が忘れられず、翌日に移住を決断した村上さん。不動産屋で良い物件に出会いすぐに契約し、見学から1ヶ月後の2019年5月には移住したとのこと。
村上 : 移住を決めてから実際に引っ越すまで短かったため、公的な支援などはどんな制度があるのか、どんな人がいるのかもそこまで調べずにきたので、これから学んでいきたいと思います。まずは今の家を拠点に子育てを充実させて、いずれは田舎に引っ越すための準備をしていこうと考えています。
新鮮な日々
慌ただしく移住した村上さん。大分に越して来てまず感じたのは、やはり人の優しさだったそうです。水も美味しく、保育園も抜群に良いし、言うことなしとのこと。
村上:引っ越してから出会った方々は、同世代でもしっかり畑をやっていたり、にわとりを飼ってたり、一家に一台というぐらいチェーンソーを持ってたり。そんな方々は周りにあまりいなかったので、いい意味でカルチャーショックを受けてます。
繋がりができていく中で、林業や農業を体験しつつ楽しんでいるという村上さん。最近は、スイーツ作りやベーコン作りなど、家でできることにハマっているそうです。移住するまで沖縄で生活していたため、季節感を今まで感じたことがなかったので、秋には栗を拾って食べるなど、食を通じて四季を感じ、自然のなかで暮らせる大分での生活に満足しているとのこと。
子育ての理想の環境を求めて移住した村上さん。生活も徹底して子ども中心に考えているそうで、現在お子さんを通わせている保育園から良い影響を受けているようです。
村上:子どもに意思を持って、自分の軸を育てて欲しいと思っています。上の子が来年小学校に進学するのですが、「こどものにわ楓」の園長先生が、来年フリースクール*2のような小規模なオルタナティブスクール*3の考え方をベースとした小学校をつくるそうで、そこに通わせたいと考えています。
シュタイナー教育を取り入れている保育園は子ども中心に運営されていて、のびのびした雰囲気があると感じます。保育園側の色々な都合に園児が振り回されずに、その子が興味を持った部分を尊重し、子ども一人一人の発育ステージに合わせて、どう伸ばしていくかを考えてくれています。例えば、お遊戯の時間に、部屋を真っ暗にしてろうそくに火を灯して集中力を高め、ふっと火を消して光も音もない静寂な時間を作って、ファンタジーの世界を思い描く様な想像力を育むなど、通常の保育園ではなかなかできない取り組みを行っているところが魅力的です。
これから先も、子どもを一人の人間として尊重して、大切に育んでいきたいとのこと。
村上 : 今の子どもは礼儀やルールに縛られていて、あまりにもガチガチだと感じています。私達は子どもの行動を制限することなく、常識を踏まえつつも自分の気の向くままに生きていって欲しいです。もちろん、「どこまで口を出すのか」など親も迷いがありますので、葛藤しながら家族で進んでいければと考えています。自分の子ども達に関しては、どの様な形で社会に出るとしても、将来を自分で責任を持って選んでくれればと思います。
理想の一軒家を探して
今の暮らしを満喫しているという村上さんですが、悩みや課題がないかお聞きしました。
村上 : 暮らしに関して、今のところ悪いところはないです。沖縄出身なので、季節ごとの服のコーディネートの仕方がいまいちわからないくらい(笑)。まだ自分たちの理想の家には出会えていないので、とりあえずと思って借りた場所から動けていないことが、当面の課題です。
庭があって農作業ができる様な一軒家に憧れがあるので、まずは理想の家を探したいと思います。いずれはその家の周りで畑をしたり、自給自足に近い暮らしをしたいと考えています。早く落ち着く家を見つけたいですね。
何でも楽しもう!
現地を見学した翌日には移住を決め、1ヶ月後には移住したという行動力がある村上さんに、移住希望者の皆さんへアドバイスをいただきました。
村上 : 直感にしたがって飛び込みましょう。何でも楽しもうという軸があればなんとかなると思うし、面白い発見ができると信じています。
初めの一歩を踏み出そう
子どもにとってより良い環境を得るために移住したという村上さん。ご自宅で取材させていただいたのですが、居心地の良いほんわかした雰囲気の中で、ご家族の会話や笑顔が溢れていました。きっとどうにかなると少し楽に考えて、失敗を恐れず、初めの一歩を踏み出してみれば、きっと明るい暮らしが待っている。ご家族を愛おしそうに見つめる村上さんから、そんな事を教えていただいた気がします。
*1 シュタイナー教育
シュタイナー教育とは、20世紀はじめのオーストリアの哲学者・神秘思想家ルドルフ・シュタイナーが提唱した「教育芸術」としての教育思想および実践であるヴァルドルフ教育を日本で紹介する際に名付けられた呼称のひとつ。教育という営みは、子どもが「自由な自己決定」を行うことができる「人間」となるための「出産補助」であるという意味で「一つの芸術」であると考えられており、独特の芸術教育などが知られています。
via : https://bit.ly/3q7Z6D3
*2 フリースクール
何らかの理由から学校に行くことができない、行かない、行きたくても行けないという子どもたちが、小学校・中学校・高校の代わりに過ごす場所です。不登校やひきこもりをはじめ、軽度の発達障がい、身体障がい、知的障がいなどの事情を抱えるたくさんの子どもたちを受け入れ、学びの場を提供しています。
via : https://bit.ly/3fMeeRw
*3オルタナティブスクール
ヨーロッパやアメリカの哲学的思想をもとに発展していったオルタナティブ教育を取り入れた学校のこと。画一的な教育ではなく、個人を尊重し子どもが本来持っている探求心に基づいて、自律的・主体的に学習や行事が展開されるようにカリキュラムが組まれていることが多いのが特徴です。
via : https://bit.ly/3o901kM