大分移住手帖

地域おこし協力隊として活動しながら、“綿から始まるものづくり”を目指す由布暮らし。

青木 奈々絵

祖母住む大分の自然に惹かれ、縁あって地域おこし協力隊として由布市へ移住した岡田さん。始まったばかりの由布暮らしは早くも「ものづくりの道」へと歩み始めています。移住して5か月目を迎える岡田さんに、大分へ移り住んだきっかけや今の暮らしを伺いました。

「由布」という響きに感じた縁。

東京都出身の岡田さん。今も祖母が杵築市に住んでいて、小さい頃からキャンプや海水浴などをしに大分へ遊びに来ていたのだそうです。いつかは田舎暮らしをしたいと思っていた岡田さんは、3年くらい前からぼんやりと移住を夢見て関東近辺を中心に移住先を探していたそうですが、幼少期に過ごした大分の景色が記憶に残っていたこともあり、大分へ思いを馳せるようになりました。

 

自宅から畑までの散歩もお気に入り

祖母いる杵築市を中心に移住を考えていたそうですが、住まいや仕事の面でなかなかタイミングが合わず、一度は時期を見送ることに。それでも大分に住みたいと思い、他の地域を含めて検討されたそうです。

「由布市は何度か行ったことがある程度だったんですが、由布岳が美しく、有機農業*や農家民泊*が盛んなことや、神楽(かぐら)*などの伝統文化が根付いていてとてもいい印象でした。大学時代からテキスタイル*を学び、と関わる仕事をしていたので、由布という地名の響き、昔は木綿(ゆふ)という布が織られていたことにも縁を感じていました。ちょうどいいタイミングで『移住定住』の分野において地域おこし協力隊の募集があって、自分の経験が生かせるかもと思い応募しました。」

岡田さんが着任したのは、移住定住担当。本来は移住相談員として首都圏の移住イベントに行くはずでしたが、なかなか県外に出れない状況下でも「由布市でできることをしたい」と、オンラインによる移住相談に応じたり、移住者の情報を集めインタビューをするなど、多面的な角度から積極的に活動しているそうです。由布市でものづくりをする方や農家さんなど、移住の有無に限らず由布市で活動している方を取り上げて市報で紹介しているそうです。

畑から始めつつ、手間暇も愛おしいテキスタイルの魅力。

畑で栽培したコットン

大分に来る前は東京で一人暮らしをされていた岡田さん。綿や麻などの天然繊維にこだわったものづくりに惹かれ、アパレル会社で販売やお店作りの仕事をしていました。一方で、自然や農業に興味をもっていた岡田さんは、有機農業を学ぶ講座に通っていたそう。そこで出会った友人とともに、休日を利用して畑をするようになったんだとか。今思えば、大分の祖父母の家で過ごした畑での経験がきっかけだったかもとのこと。

「野菜を栽培したいというより、綿や藍(あい)*を一から育ててみたいという気持ちで始めました。実際に収穫した綿から糸を紡いだり、藍で染物をしたりしていたんですが、手間がかかるけど、その過程がまた楽しいんです。」

由布市で借りて始めた畑。野菜の向こうでは綿栽培の準備中。

由布市に移住してからも畑を始めたという岡田さん。散歩をしながら畑ができる場所を探し、近所の方に声をかけながら土地を貸してくれる方を見つけたそう。移住5か月目を迎える彼女の畑には季節の野菜が植わり、今年の春から綿を育てる準備が進められていました。

仲間と地域に支えられながらの移住生活。

住む場所も仕事もがらりと変わった大分への移住。周りの方にサポートしてもらいながら仕事にも慣れ、やりたかった畑もできるようになって充実していると話してくれました。しかし、来たばかりの頃は環境の違いに戸惑うことも多かったそう。そんなときも、同じ時期に着任した地域おこし協力隊の仲間の存在が大きかったそうです。

「日頃の悩みを相談できるような、同じ境遇の仲間がいることはとても心強かったです。最初は知り合いもほとんどいなかったんですが、お互いが知り合った地元の方や移住した方を紹介し合ったりして、少しずつ地域の人も知れるようになりました。」

竹細工教室で作ったかご。竹細工職人の先生が丁寧に教えてくれる。

今は地域で2回開催されている竹細工教室に通っている岡田さん。竹細工職人の方に教わりながらものづくりを学ぶことができ、地元の方も多く通っているので関われるのが楽しいのだとか。教室では畑のことや野菜の保存方法など日々の暮らしのことをおしゃべりしながら活動し、地元の方とのコミュニケーションの場にもなっていると言います。

「作り手」を目指して。

綿の種を取りのぞく様子。

 由布市での生活はまだ始まったばかりですが、「自らの手で暮らしを整えていくような生活をしていきたい」と語る岡田さん。地域おこし協力隊の任期は3年間と限られてはいますが、活動をしながらものづくりの基盤を固めていき、いずれは展示や販売などをして仕事にしていけたらと考えているそうです。

「全部自分で経験してみたいという性格なので、素材から自分で育てて、糸を紡ぎ、織物を作り上げることができる『作り手』になることができればと思っています。そういう観点で見ると、由布市はものづくりをしている方が多くいるので、とても良い環境だなと思っています。」

最後に

自分のやりたいことに対して常にまっすぐ、そして驚くほど行動的な岡田さん。綿から種をとり、糸を紡ぐのは、見ていて気が遠くなるような大変な作業ですが、一つ一つを丁寧に愛おしそうに触れる岡田さんの姿はとても美しく映りました。そんな岡田さんをものづくりの世界へ導いたのは、由布市の壮大な自然、そしてあたたかく見守る地域の存在なのかもしれません。始まったばかりの由布暮らしが今後どのように変化していくのか、ぜひこれからも見ていきたいですね。

*有機農業は、化学的に合成された肥料や農薬を使用しないことを基本として、環境への負荷をできる限り低減した方法を用いた農法。

*農家民泊とは、農山漁村に滞在し農漁業体験を楽しみ、地域の人々との交流を図る余暇活動のこと。グリーンツーリズムと同意。

*神楽とは、日本の神道の神事において神に奉納するため奏される歌舞。現在由布市内には12の異なる神楽座が点在している。

*テキスタイルとは、布地や織物のこと。

*藍とは、藍染めの原料に使われるタデ科の植物。

取材者情報

お名前
岡田 鹿乃子(おかだかのこ)
出身地・前住所
東京都
現住所
大分県由布市
年齢
33歳
家族構成
独身
職業
由布市地域おこし協力隊
WRITER 記事を書いた人

青木 奈々絵

大分県杵築市へ移住。地域おこし協力隊として移住支援活動を行う。国東半島に伝わる七島藺(しちとうい)に惹かれ、工芸の技術を習得し、杵築七島藺マイスターとしても活動している。農家民泊の開業を目指して、築150年の古民家をセルフリノベーションに奮闘中。

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