大分移住手帖

デザインを軸に地域を巻き込んでいく、大人の秘密基地から始まる新しい暮らし。

青木 奈々絵

取材者情報

お名前
森 浩(もり ひろし)
出身地・前住所
(出身地)福岡県
(前住所)大分県国東市
現住所
大分県杵築市
年齢
50代
家族構成
夫婦
職業
株式会社森美
Webサイト
https://sin-bi.com/

福岡県出身の浩さんと、国東市出身のひとみさん。浩さんは以前デザイナーとして福岡のデザイン事務所に勤め、ひとみさんは「ヌイモリ」というお名前で刺繍の活動をされていました。浩さんが国東市を拠点とするデザイン会社に誘われたことをきっかけに、2010年に国東市へ移住。その後、個人事務所にするタイミングと娘さんの高校進学をきっかけに、杵築市への再移住を決めました。そんな森さんの移住秘話をお聞きしました。

都会の生活が忘れられず、移住当初はギャップを感じる日々

国東市へ移住したばかりの頃は、まだ都会での暮らしが忘れられず、休みの日もしょっちゅう福岡に行って過ごしていたという森さんご一家。デザインの考え方も都会と地方とで違いを感じていて、日々の生活だけでなく仕事面でも苦しむことが多かったとか。

ひとみ:地元の国東市に戻ってくるとは思ってもなくて、単身赴任してもらおうかと頭をよぎったくらい。最初は田舎での生活にも反対でした。

国東市の会社で3年間務めた後、独立と娘さんの高校進学を機に、杵築市への移住を決めた森さん一家。国東市に住んでいた頃から杵築市にある酒蔵・中野酒造によく遊びに来ていて、通っているうちに杵築市に惹かれていったそうです。

浩:中野酒造が行う田植えや稲刈りに参加させてもらい、地元の方々の暮らしぶりを聞くうちに、杵築市という地域や人との距離もぐんと縮まって、いつしかここに住みたいと思うようになりました。

移住後、デザイン事務所として「株式会社森美(シンビ)」を設立。独立したばかりの頃は地域にあまり知り合いがいなかったこともあり、東京や福岡など首都圏の仕事を受けることが多かったそうです。杵築市に暮らして8年目。今はできる限り地域に関わって仕事をしていきたいと考えているのだとか。森さんの言葉の通り、今では杵築市の特産物や老舗和菓子店のパッケージまで、あらゆるところで森さんのデザインを目にすることができます。

杵築城天守落成50周年記念に制作された缶バッチ

杵築城下町の酢屋の坂をモチーフに作られた手ぬぐい

コンセプトは「暮らし楽しむ研究所」。デザインの枠をこえたわくわくする田舎暮らし。

「森美」では、カフェ、養蜂、味噌作りなど、デザイン事務所と聞いてイメージすると驚くような多岐にわたる活動をされています。

ひとみ:デザイン事務所なのに、なんでカフェ?なんで蜂蜜?と当初は疑問に思うことが多かったですが、最近ようやく全部「デザイン」であることがわかってきました。

浩:今はデザインを軸に、好きなことをして好きなものをつくっています。仕事が暮らしで、暮らしが仕事という感じ。田舎の暮らしって本当にみんなクリエイティブだなと思います。海の生活や山の生活、それぞれにプロがいて。移住してから年々、人との繋がりが広がるのを実感しています。本職がある一方で、それとはまったく違う特技を持っていたり。ガス屋さんが「山のことなら何でもわかる!」みたいな。先日は山芋堀りに連れて行ってもらったのですが、ノコギリ1本で山に入って行って、山脈を見るだけでどんなものが植わっているか分かってしまうらしい。本当に知識や経験が豊富な方々ばかりで、聞いているだけでワクワクします。こっちに住むようになってそういう方々と関わることが多くて、「こんなこと都会じゃできなかったなあ」って毎回思います。

森美カフェの店内

家の敷地で行なっている養蜂

次は自分が伝える番。地元の人から学んだ豊かさを次の世代に伝えたい。

浩:地元のひとの知識や経験、教えてくれる一つ一つがすごいなあと感動してしまうんですが、こっちの人は何も特別なこととは思っていなくて。改めて「誰かに伝えよう」とはしてないんだろうけど、次の世代に伝わらないのは残念だなと感じているんです。なので、「森美カフェ」という場所を拠点に、今度は自分自身が伝える立場になることができればできたらいいなと思っています。

報酬は「物々交換」。お金にとらわれない地域との関わり方。

浩:最近は物々交換で仕事を受けることも多いです。農家さんのロゴをつくるかわりにお米をもらったり、パン屋さんのチラシを作るかわりにパンをいただいたり。もちろん全部が全部ではないですが。金銭のやりとりだけじゃなく、相手が感じる価値と自分が感じる価値がうまく合えば、それもいいかなと思います。こういう土地ならではのやりとりなのかもしれませんね。

デザイン一つとっても、今まで内装やディスプレイ、ウェブもあれこれやっていて、当時は「何につながるんだろう」と疑問に思っていた時もあったけど、今いろんなところでその経験が活きています。ホームページを作ってほしい人にはその手助けができるし、このカフェも、蔵を自分で一から改装しました。必要なものを必要なだけ、その人に届けられる仕事ができればいいな、と思ってます。

常に周囲を巻き込んで。大人の秘密基地から始まるわくわくすること。

都会でバリバリ働いて、何でも器用にこなしてしまう森さんですが、あえて周囲を巻き込んで物事をすすめているのには、ある理由がありました。

浩:人に頼むには、自分が一番理解していなければならなかったり、お金の面で利益は減るし、任せる責任もあるので簡単ではないですが、自分のなかに溜め込みすぎて、以前体調を崩してしまったこともあり、最近意識してまわりに頼るようにしています。自分でできることも得意な人にお願いしたり、できる限り関わる人を増やしたくて、もらうより先に手放す(与える)ことで、必ず巡って自分に返ってくるということがわかったんです。この歳になってやっと実感していますよ。

「森美カフェ」の蔵の奥には、昔ながらのかまどが佇んでいます。ある時はお米を炊いて、ある時は味噌づくりをして、地元の人たちが集うのだそう。「同じ釜の飯を食う」そんな言葉のとおり、この場所にはおもしろい楽しい暮らしを求める大人たちが集まり、日々作戦会議が繰り広げられているのかもしれません。

最後に

移住者でありながら、誰よりも地域に根付いている森さん夫妻。毎週末地元の方が集まる「森美カフェ」で、常にわくわくする暮らしづくりを企むお二人は、今や杵築のまちにはなくてはならない存在となっています。「田舎暮らしをクリエイティブだ」と語る森さんの新たな挑戦は、地域をさらに巻き込んで、これからの暮らしを彩っていくことでしょう。そんなおふたりの行く末が気になる方は、ぜひ森美カフェののれんをくぐってみてはいかがでしょうか。

WRITER 記事を書いた人

青木 奈々絵

大分県杵築市へ移住。地域おこし協力隊として移住支援活動を行う。国東半島に伝わる七島藺(しちとうい)に惹かれ、工芸の技術を習得し、杵築七島藺マイスターとしても活動している。農家民泊の開業を目指して、築150年の古民家をセルフリノベーションに奮闘中。

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