大分移住手帖

豊かな暮らしを求めて辿り着いたひだまりの家。

アバター 青木 奈々絵

由布市庄内町で「畑のレストランひだまり」を営む稲田さん夫妻。自然農法*を学び、海外を旅してきたご主人の健二さんが出会ったのは、お金では買えない豊かさのある暮らしでした。住む場所も食べるものも自分たちでつくる暮らし。福岡から移住して14年目を迎えるお二人のお話を伺いました。

就職を辞めて興味をもった、農業の世界。

福岡県出身の健二さん。食べることが好きで料理にも興味があったことから、大学卒業後は外食関係の仕事に進む予定で、在学中に内定先の会社にインターンをしていたそうです。しかし、入ってみると予想以上に厳しい労働環境で、長時間労働などが当たり前のような働き方だったそう。この先ずっとここで働くのは難しいと思い、就職をやめることに。他の飲食店に就職することも考えたけれど、「どうせなら食材をつくるところからやってみたい」と思うようになり、そこから農業に興味をもつようになりました。

健二さん:福岡正信さんの「わら一本の革命」*という本を読んでみたら、一見すごく簡単そうに見えたんですよね。そこで福岡県の糸島市で自然農法をしている「松尾ほのぼの農園」に手伝いに行くようになりました。そこは集まる人も人間味がある面白い人が多くて、刺激的でしたね。

当時健二さんは25歳。松尾さんを手伝いながら自身も畑をしており、育てた野菜を使って移動ピザ屋をしていたのだとか。農閑期には日本各地のおもしろい百姓を訪ねて回り、その後、知人のレストラン開業を手伝うためイタリアへ渡りました。各国を旅しながら約1年半の期間を海外で過ごした頃、「野菜や米を育てながら、人が集まるような場所を作れたら良いなあ」と思い帰国したそうです。

もともと友人だった由美子さんとは帰国後しばらくして結婚し、ふたりで家探しを始めたのだとか。「水が美味しくて温泉があるところが良い」と色々探し回り、見つけたのがこの場所でした。

一目惚れしたホタル舞う幻想的な景色。

福岡出身ということもあり、九州内で場所を探していたお二人。中でも、福岡へのアクセスなどを考え熊本や大分が候補に挙がったそうですが、友人の家が大分の由布市にあったことで家探しのための拠点を構えることができたんだとか。

健二さん:実際に暮らしながら移住先を探していると、由布市の中でも庄内町は水が美味しくて湧き水が豊富だと知りました。その頃から、住まいを構えるなら庄内町がいいと思うようになり、地域を絞って探していましたね。当時から飲食でイベントに出店していたので『家を探してます』というチラシを作って配っていました。それを見た方がこの土地に住んでいる人を紹介してくれて、今の家に出会うことができました。

何よりも暮らしを優先したいと考えていた健二さんにとって、お客さんが来るには少し山奥であるこの場所も「日々の暮らしや畑仕事をするには最高」だと思っていたそうです。反対に、由美子さんは当初、お店を構えるのは観光地で人の目につくような場所のほうがいいのではと考えていたそうですが、この家に来てその考えが変わったそうです。

由美子さん:この家を紹介してもらったとき、試しに数日泊まらせてもらったんです。ちょうどその時期はホタルが舞う時期で、夜のお散歩をしたんですね。幻想的で本当に綺麗でした。それを見て、いいなあと思ったんです。

当時はこの家もだいぶ傷んでおり、屋根の重みでサッシが歪んで開かなかったり、雨漏りしていた箇所もあったそう。自分たちで改装作業をしていたところ、見かねた友人が加勢してくれて、少しずつ住まいを整えていったのだとか。そうして4か月かけて住めるようにし、その1か月後には自宅を兼ねたお店「畑のレストランひだまり」をオープンさせました。

店名の通り、あたたかな日の光が差し込む店内では、完全予約制でランチを提供。昨年にはテイクアウトや外カフェも始めました。栽培した季節の野菜をふんだんに使ったお料理に加え、加工品なども制作、販売しています。「ここでの暮らしをおすそ分けする気持ちで楽しんでもらいたい」と作られたオリジナルの瓶詰めは、根強いファンも多いのだとか。

お金では買えない豊かな暮らし。

今では野菜のみならず、お米作りもされているという健二さん。敷地内にはニワトリを飼い、卵とお肉を、ニホンミツバチには蜜蝋やハチミツをありがたくいただいているのだとか。また、猟師さんがイノシシやシカを仕留めると連絡をもらうことも多く、捌き方も教わりながら覚えていったそうです。

健二さん:田んぼや畑をしていると、地域の方が気にかけてくださって、色々声をかけてくれます。農機具を貸していただいたり、困った時には助け合ったり、人と人とのつながりを感じます。

畑も田んぼも養鶏も、家の修理も自分でこなす健二さん。なるべくお金をかけずに生活したいと話しますが、そんな健二さんを見守りながら由美子さんは言います。

由美子さん:きっとどんなにお金があっても、今のような暮らしをするんだろうなと思います。できることがどんどん増えていって、自分ができるようになったら今後は周りの人にそれをおすそわけして。都会では毎日お財布をだして何かを得ていたけど、ここの暮らしは自然がとても豊かですね。恵みがあり、生まれるということをとても身近に感じます。

最後に

優しく朗らかな笑顔が印象的な健二さんですが、イメージとは裏腹に、生きる力に溢れたたくましさに驚かされました。そんなご主人を由美子さんが穏やかに見守るご夫婦の仲の良さがこちらまで伝わり、ここでの暮らしにお邪魔させてもらっているような気持ちになりました。今も改装を続ける住まいとお店は、日々新しい姿に変化しています。ぜひ、足を運んでみてはいかがでしょうか。きっとおふたりのひだまりのような笑顔で迎えてくれますよ。

*自然農法とは、耕さない、草を敵としない、肥料を与えない、農薬を使用しないということを特徴とする農法。現在ひだまりでは自然農にこだわらず、それぞれの田畑と相談しながら農薬や化学肥料、除草剤を使わずに米や野菜を育てています。

*福岡正信著「わら一本の革命」

田を耕さず、肥料をやらず、農薬などまったく使わず、草もとらず、驚異の「自然農法」の思想と実践を易しく説いたロングセラー。

取材者情報

お名前
稲田 健二(いなだけんじ)
出身地・前住所
福岡県
現住所
大分県由布市
年齢
42歳
家族構成
4人家族(妻、子供二人)
職業
畑のレストランひだまり
Webサイト
http://hatakenohidamari.blog42.fc2.com/
WRITER アバター 記事を書いた人

青木 奈々絵

大分県杵築市へ移住。地域おこし協力隊として移住支援活動を行う。国東半島に伝わる七島藺(しちとうい)に惹かれ、工芸の技術を習得し、杵築七島藺マイスターとしても活動している。農家民泊の開業を目指して、築150年の古民家をセルフリノベーションに奮闘中。

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