大分移住手帖

理想の子育て環境を求めてたどり着いた中津市の自然派こども園。

Tomomi Imai

福岡県出身の吉松さんは、看護学校への進学で関西に行きました。結婚を機に佐賀県に移住しましたが、離婚。シングルマザーとなり、看護師の仕事をしながら女手一つで子どもを育てる中、親御さんの介護も相まって、子どもへ向き合う時間も体力もなくなり疲弊していたと言います。そこで、理想とする子育てができるような環境を求め、九州や四国を中心に探している中で、大分県中津市にある自然派保育を行う「如水こども園」に出会い、縁もゆかりもないこの地に移住しました。そんな吉松さんの子育てと移住奮闘秘話をお聞きしました。

自分が働いている間にちゃんと育ててくれるところを求めて。

こども園での畑仕事の一コマ

関西にいる頃から、九州には戻りたかったと言う吉松さん。縁あって佐賀県に移住しましたが、離婚を機に福岡県に戻りました。それから12年後、子供ができましたが結婚には至らず、シングルマザーに。実家から職場が遠かったこともあり、フルタイムでの勤務をしながら子どもを保育園に預ける生活や、子どもの保育環境を考えるようになりました。

「最初は福岡の自宅から一番近い保育園に預ける予定で、入園のための説明を聞きに行きました。その保育園は、狭い部屋で赤ちゃんがベビーベッドに寝かされているだけでした。持っていくものを聞いたら『紙おむつや汚れた紙おむつを入れるビニール袋にも1枚1枚名前を書いてください』と言われてびっくりしました。でも、保育園ってこういうところなのかな?と違和感を感じましたが入園の申し込みをしました。

働いている8時間や残業と、前後の通勤時間を合わせると12時間近く保育園に預けることになるので、子どもは起きている時間の中で保育園で過ごす時間が一番長いですよね。だったら、その間ただ預かるだけではなく、私の代わりに育ててくれるところがいいなと思ったんです。」

さくら・さくらんぼ保育を実践しているこども園に出会う。

お泊まりでの川遊び

そんな中、知り合いの方が紹介してくれたのが、中津市にある「如水こども園」でした。「こども園」というのは、保育園と幼稚園の両方の機能を持ち、多くは0歳から6歳の就学手前までの子どもに対応しているので、世代の違う子どもどうしの交流ができたり、幼稚園での幼児教育を希望する場合、転園する必要がなく、一貫した保育、教育を受けることができる施設です。そして、如水こども園は、保育方針として「さくら・さくらんぼ保育」を掲げています。

さくら・さくらんぼ保育とは、島根県生まれの斉藤公子氏が「子ども達には、育つ可能性が充分にある。日本そして世界の子ども達が、その可能性を充分に発揮できるように。」と願い、1960年代に埼玉県深谷の地で、「豊かな感性・あふれる意欲・仲間を思いやる気持ち」という全面発達を大切にする目的で自身の保育園で実践した保育方法です。生活のリズムを整え、食事は旬の食材を中心に三食しっかり食べることを大切にしています。実践している多くの保育園が自然環境との共存や「リズム体操」と呼ばれる日本や世界の伝統音楽のリズムから人が本来持っている能力を引き出す遊びが行われています。

職場から近いということで、見学に来た吉松さん。園内に広々と広がる自然や大きな築山、日の光が心地よい木の香りが漂う校舎を見て、ここが良いと思ったそうです。

「見学に行ったらすぐ気に入りました。この保育園に入るには市民であることが条件だと知り、ならば引っ越そうと決め、6年前に中津市へ来ました。」

子どもに残せるものを考えて選んだ環境。

子どもたちが漬けた梅干し

晩婚化が進んでいるとはいえ、地方の多くは20代に最初の子どもを授かることが多い中、吉松さんは44歳で出産されました。そんな自分は「子どもに何を残してあげられるのか?何を与えてあげられるのか?」を考えたことも、保育環境を探すきっかけだったと言います。

「移住当時、母が体調不良で入退院を繰り返し、父は認知症だったので、中津市からたびたび福岡の実家に通うこともあり、なかなか大変でした。そんな中で生死について考えさせられたんですよね。若い頃には興味はなかったのですが、先に私が死ぬとして、子どもに残せるものって、良い環境や食べるものなのではないかと考えたんです。勉強し色々学んでいく中で、紙おむつも子どもに良くないなと思ってはいましたが、なかなか一人では解決しにくかったんです。そうしたら、如水こども園は赤ちゃんでも布パンツで過ごすと知ったのも決め手の1つでした。もちろん洗濯は大変ですが、砂糖を使わない給食を手掴みで食べたり、週に1回畑の作業があったり、泥んこ遊びなど、ただ預かるだけではなくちゃんと子どもが育つ保育を実施してくれているので安心しています。」

そんな如水子ども園に通う息子さんは、2歳になる頃には自分で身の回りのことができるようになっていたそうです。自分の服を片付けたり、着替えたりできるようになっている息子さんに驚く毎日だったと言います。また、生活や遊びの中で考え学ぶことで知育おもちゃも必要なく、たくさん遊ばせてくれるので、夜はぐっすり寝てくれるそうです。

ママ友よりも、趣味友との交流が多い。

保育環境や自然環境には満足しているものの、職場と家の行き来の毎日や、ママコミュニティでも年代が違うことで、なかなか繋がりができにくいと話す吉松さん。子どもの成長とともに催し事も増えるので、LINEグループなどで連絡を取り合い、お茶に誘われたり、飲みに行くこともあるそうですが、プライベートで行くようなママ友は特にいないそうです。

一方で、福岡にいた際に知り合ったセルフブランディング*講座で一緒だった仲間とは交流があり、年代も近く、中津市にもその仲間がいることから、交流の多くはその界隈なのだそうです。

「中津市に来ても、福岡での縁は変わらず残っています。福岡には面白いものがたくさんありますし、友人も多いので、結局福岡に遊びに行ってしまいますね。」

卒園後の進路に悩み中。

園で飼ってる羊

素敵な保育園に出会い、6歳になるまで充実していたものの、卒園を前に悩んでいるのが小学校選び。如水こども園のような自然派学習を主体的に行っている公立小学校が無く、フリースクールを探すようになったそうです。その中で、徳島県にある自然学校「トエック」を見学に行きましたが、空きがなく断念。北九州市にあるオルタナティブスクール*も応募が終わっていたりと、なかなかここという学校に出会えておらず、少し困っているそうです。

「子供が2〜3歳の頃に、保育園生活が充実してきたからこそ『小学校はどうしようか』と思うようになりました。中津市にある公立小学校にそのまま上がるのかなと漠然と思っていた時に、徳島県にあるトエックの存在を知りました。トエックを見学して、学校への価値観も変わったんですよね。時間割がなかったり、授業がなかったり、たくさん刺激を受けました。その中で『子どもは授業や教科書がなくても学び成長する』ということも分かり、公立小学校に通う必要性が無いとも思うようになりましたね。トエックに入学できるなら、看護師の資格を活かして徳島移住も考えたのですが、ご縁に至らず。中津市に来たときのように、ある意味どこへでも行ける気持ちで小学校探しを進めています。」

9つまではやりたいことをやらせるのが大事。

運動会の後、全員に園から下駄のプレゼント

保育園や小学校など、子どもにとって良い環境を探している吉松さんのこのモチベーションはどこから来るのかお聞きしてみました。返ってきたのは、母としてはもちろん、個人として大切にしている想いでした。

「こども園もそうなのだけど、もし自分だったらここに行きたいと思う場所を選んでいますね。自分が過ごしてきた小中学校時代を考えると、特別に良かったことも悪かったこともなかったなと。でももしその頃にオルタナティブスクールを知っていたら、絶対楽しかっただろうなと思ったんです。勉強は後からでもついてくるから、教科書からの勉強ばかりではなく遊びの中から学ぶことも大事だということに、とても共感したんです。

ある大学の先生が『”つ”のつく時代は遊ばせましょう』と話をしてくれたことがありました。『9つまではとにかく遊ばせることが大事。やりたいことをやらせることが大事。』だと語ったその先生は、戦前戦後育ちで、教育環境もままならなかった中で、今では立派な教授になっていて、必ずしも学校教育が頭の良い子を作るわけでは無いと感じたんですよね。どんな人も、自分のやりたいことに進みたいと思うだろうし、やりたくないことを詰め込まれてもきっと身にならないから、いっそしなくても良いよねと考えています。」

6つになる息子さんは今は遊びたい盛り。乗り物のおもちゃで遊んだり、何かを作ったり、絵本を読んだりと、1つに縛られずに多様な遊びを楽しんでいるそうです。

「こども園では、テレビよりも、もっと素敵で楽しい事がたくさんあるのを知って欲しいとの思いで、園の環境として、アニメのキャラクターなどメディアに繋がるものは置いていないので、自分で楽しみを見つけて遊べるようになってほしいと思っています。」

良い環境のためなら海外も視野に入れて。

手作りカブトと弓矢

中津市に6年ほど住んで、それなりに住み慣れてはきたものの、今でもホームは福岡だと感じているそうです。大分県の中にもオルタナティブを取り入れたフリースクールは少しずつ増えていますが、そこに決められない理由を話してくれました。

「今大分にあるオルタナティブフリースクールは、月水金だけ、週に◯日だけ、というところが多く、週5で働いている身としてはまだ使いにくいのが現状ですね。不登校児を受け入れるフリースクールは割とどこにもあるけれど、不登校児というわけでは無いので違うなと。そんな中、料理教室の友人の中で、保育士資格の関係でイギリスで学んだという方がいて、その方から海外の状況を聞き、国外も気にはなっていますが、外国でどうやって働けばいいのだろうなどと悩んでいます。最近では福岡にあるサドベリー教育*のインターナショナルスクールを見つけましたが、インターナショナルスクールに行くなら、アジアの国などもありなのかな?とも思っていますね。」

今は自分の時間が欲しい。

息子さんのためにほぼ一人で一生懸命情報を集め、環境を変え奮闘してきた吉松さん。手が掛かる時期を少し越えてきた今したいことは「自分の時間を持ってやりたいことをする」ことだとか。

「今特に料理を作ることが好きなんですよね。それで起業しようとか、カフェがしたいとか職にするかどうかはわかりませんが、今は趣味としてですね。小学校に入ればもう少し子育てから手が離れると思いますが、そうしたら自分の時間が欲しいですね。

40歳を越えて子どもを産むとは思っていなかったので、妊娠出産するまでは好き放題してきたんです。それが突然子どもができて、やりたいことが全部できなくなり『私の時間はどこへ?』と感じていました。もちろん子どもができたことは嬉しかったし、産めるのはこれが最後だと思ったので産みましたが、想像よりも何もできないのだなと(笑)。産むまで子育ては自分の全てを犠牲にすることだと知りませんでした。元々バイクに乗ったり釣りをするのが本来の私なので、息子が早く大きくなって一緒に遊びたいなと期待していますね。」

最後に

シングルマザーで自分の時間や環境も全て子どもに注いできた吉松さん。素晴らしいこども園に出会えたことで充実した保育ライフを過ごせたからこそ、次のステップへ進もうとしている真っ最中。縁あって中津市で過ごした時間が、吉松親子が自分たちらしく生きていく糧になっていたら嬉しいですね。このメディアでもフリースクールはいくつか取り上げていますが、そういった情報が届くべき人に届いていないというメディアのあり方にも課題があるかもしれません。吉松さんへの取材した私自身も学びが多い時間となりました。

 

*オルタナティブスクール
現在の公教育=一条校とは異なる、独自の教育理念・方針により運営されている学校の総称。

 

*セルフブランディング
SNS やブログを通じて、知名度を広げるための「自己発信」にとどまりません。 意識的に相手へ自分の価値を伝えることで、ビジネスで優位に立てるマーケティング手法のひとつ。

 

*サドベリー教育
子どもの個性・自主性を重視した教育。 

取材者情報

お名前
吉松沙織
出身地・前住所
福岡県田川郡
現住所
大分県中津市
年齢
50歳
家族構成
2人
Facebook
https://www.facebook.com/salweave
FACILITIE

自然の中でたくさん遊ぼう!「如水こども園」

太陽と水と土にまみれて遊ぶ。子ども時代は人としての育ちの根をじっくりはって、じっくり芽を出し、豊かな生活体験を積み成長してほしい!と実践に取り組んでいます。
子ども達のしなやかな心と体を育てることを大切にすると共に、大人達が学び合い、助け合い、支え合って生き合うこども園を目指しています。

ブログ
https://ameblo.jp/josui-fukushikai/

如水こども園

大分県中津市是則1246-2

理想の子育て環境を求めてたどり着いた中津市の自然派こども園。
WRITER 記事を書いた人

Tomomi Imai

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snufkiins LLC. 代表社員
離島移住計画 代表
Re-harmo PJ オーナー
25歳でフリーランスとして独立し、多様な分野にてプロデュースやディレクター業を経験。モノコトヒトをつなぐひと。多様な伴走を得意とする。国内外問わず事務局代行・企画編集など多様な業界を経て2018年に法人化。長崎県上五島にてキャンプ場兼カフェ「Re-harmo PJ」を展開し、島に仕事や場を作ったり。絶賛子育て中。ヨガ・サーフィン・音楽・映画・コーヒー・日曜大工が趣味。

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