大分移住手帖

ベリーダンスと子育てを通じて自然を身近に感じる暖かな暮らし。

Kg

取材者情報

お名前
横山敏江
出身地・前住所
大阪府
現住所
大分県大分市
年齢
36

何不自由ない都会で暮らしてきた横山さん。旦那さんに誘われて大分県を訪れた際に、「自然と触れ合う生活も良いかも」と感じ、移住を決断したそう。都会と移住先での暮らしの違いや、熱中しているベリーダンスのことなどをお聞きしたいと思い、横山さんを訪ねました。

積み木の森MUGAで遊ぶ横山さんとお子さん

生まれ育った都会での暮らし

横山さんは三人姉妹の末っ子として大阪府で生まれ育ち、高校を卒業後に就職しました。何不自由ない毎日を送っていたそうですが、何かに熱中する事などもなく、物足りなさも感じていたそうです。

横山 : 目標や情熱をかけるものは特になく、家族と地元の友達、職場の人など交流もごく一部でした。淡々と仕事をこなし、仕事が終わると地元の友人とクラブやカラオケなどで遊ぶ。適当に過ごす毎日でした。

部活動や習い事はしてきましたが、悔しくて泣くほど熱中したことはありませんでした。続けることはできますが「これが好き」というものや「心から夢中になれる」ものがなかったんです。

横山さんの心の内は、熱中することがない虚無感に囚われていたのかもしれません。

横山さんとお子さんは一緒にベリーダンスをすることも。

子供の頃夢見た自然豊かな生活へ

そんな横山さんが、縁もゆかりもなかった大分県に移住するきっかけは、旦那さんでした。

横山 : 夫の故郷が大分でした。「一回大分に来てみて欲しい」と言われて足を運びました。当時の私は全く移住する気はありませんでしたが、彼は一度でも良いから大分県に来れば気に入るのではと考えていたようです。

初めての大分空港から大分市までの景色は田舎そのもので、しかも遠い。本当に田舎だなと。

どこかは忘れたのですが、綺麗な川に連れて行かれて、野鳥を見ながら、水に足を着けました。都会にはない、自然に触れ合う機会が身近にあると感じました。テイクアウトした唐揚げやご飯を食べると、それがまた凄く美味しくて。お米に関しては、実家に古米を送っても喜ばれるほどです。

初めての大分県の感想は「何か良いかも。子育てには良いのかも。」胸にキュンと来た感じです。都会にはない部分を見ることができたので、意外性が良かったのかもしれません。

就職して4年目で淡々とした毎日を抜け出したい思いもあり、半ば勢いで移住を決断したそうですが、実際に大分市に移住するまでには時間がかかったそうです。

横山 : 当時はまだ若かったこともあり、都会の便利な暮らしや遊びが出来なくなること、仕事を手放すことや家族や友人と離れること、新たに自分の世界を広げること等に不安がありました。

また、母は山口県の周防大島出身で、私も子どもの頃の夏休みによく訪れて、自然豊かな場所で遊んでいたこともあり、母は賛成してくれましたが、父や友人には「そんな不便なところに移住なんて」と反対されました。

実際に移住を決めてから実現するまでに2年程かかりました。引っ越し費用のためにお金を貯めたり、仕事を辞めたりと色々ありました。

ステージでの横山さん

こうして2006年に大分市に移住した横山さん。最初は色々と戸惑いを感じたそう。

横山 : 移住した当初、時間はあったのですが、友達もいないため、図書館に行くなどして時間を過ごしていましたが、電車やバスの本数もとても少なくて、交通の便の悪さには馴染めませんでした。車を購入したことで買い物が便利になり、大阪から連れてきた犬と色々な場所をドライブして、温泉に足を運んだり、景色を見に行ったり、美味しいものを食べに行くことで、地元を離れた寂しさを紛らわしていました。時間はたっぷりあったので、車にはあえてナビは付けずに、事前に地図を見て頭に入れて、少しでも道を覚えられるようにしました。

化粧品や服など、大阪では当たり前に売っていた物が大分には売ってないことも多く、凄く驚いたし寂しい気持ちになったことを覚えています。ネットや通販、福岡まで買いに行くしかありませんでした。

言葉の違いも感じました。当然方言が違うため、大阪のようにハキハキと大きく話すと怖がられてしまうし、ツッコんでも怖がれるし、ボケるとポカンとされてしまいました。大分の人は比較的小さな声で話すため、上手く聞き取れず苦労しました。

毎日の散歩の中で犬友達ができました。ドッグランや別府公園に足を運び、その中で同じように県外から来た人と交流し頻繁に会うようになりました。東京・福岡をはじめ、私と同じく関西から来た方など、いろんな地域の方もいましたし、転勤族の方もいて励みになりました。

ご近所の人は皆さんとても優しい方でしたが、村社会だなぁと感じることはたくさんありました。例えば、地区の掃除は集合時間通りに行くと、既に作業が終わっている状態でした。聞けば、皆さんは1時間前や30分前に来て掃除をしているようでした。驚いて「何で集合時間より早く行くのか、早く集まるのであればなぜその時間を集合時間にしないのか」と聞いたら呆れられました。「田舎はこういうものだ」と言われましたが、今でも理解できません。

水族館での一枚

ベリーダンスとの出会い

そんな日々の生活の中で、横山さんはふと子供の頃からやりたかったことを思い出します。

横山 : 時間があるのでパートでもと考え始めた矢先に、子どもの頃からやりたかったダンスを思い出し、色々な場所に見学に行きました。バレエは体が固くて無理だったし、HIP HOPダンスはシューズなど買う物が多く、お金もかかってしまいます。もっと気軽に始めたいと思っていたところ、ベリーダンスは水だけでいいというベリーダンスのチラシを見て飛びつきました。

こうしてベリーダンスに通い始めて、昼も夜も夢中でレッスンを受けました。
1日の流れは
午前のレッスン → 昼食 → 家事 → 夕飯 → 夜のレッスン
という形で、初級者から上級者まで全てのクラスを受講し、夜中0時過ぎまで踊っていました。帰宅してお風呂に入って寝て、また朝8時に起きて1日の流れを繰り返す毎日です。「これがやりたかった!」という感じで、上手くなるよりも踊ること自体が楽しかったです。

慣れない大分市の生活を寂しいと感じる暇もなく、自宅でも練習していました。特に目標はなく、ただ楽しいから続けてきたのですが、いつのまにかメインでダンスショーに出演するようになり、ダンススタジオから「インストラクターになってみない?」と声をかけていただいて、今に至ります。ベリーダンスの師匠や先輩、たくさんの生徒さんや仲間と出会い、それまで以上にのめり込みました。今でもその時の縁で繋がっています。

こうして、友人や仲間に恵まれた横山さん。大分では定番のファミリーレストランに集ったり、唐揚げは家で作るものではなくお店で買うなど、大分ならではのローカルルールも覚えていったそうです。

横山さんとお子さんが作った雪だるま

母として新たなステージへ

移住生活の最初の10年間がベリーダンスで、その後から今に至る5年間が子育てと語る横山さん。そこにはこんな想いがあったそう。

横山 : 結婚して9年間は子どもを作りませんでした。姉の大変な出産姿を見てきたので簡単には踏み出せなかったですし、地元ではないので自分の両親にも頼れません。大分市の保育園や幼稚園の情報も知らなかったので、色々な知識を得て一人である程度できるまで待っていた部分もあります。

そんな中で、31歳の時に大阪市で開催されたダンスショーに出演できたことが、気持ちの区切りになりました。両親や姉など家族が見に来てくれ、ステージを見せることで一つ親孝行ができた気がして、子育てという次のステージに進もうと思いました。

横山 : 七瀬川に入ったり、凧揚げしたり、西寒田にホタルを見に行ったり、雪が降ったら雪遊びをしたり、鷺が魚を捕るところや鴨の縄張り争いを観察したり、どんぐりを拾って集めたり、土で遊んだりと、都会ではできない自然と触れ合う子育てをしています。私が生まれ育った都会は自然と触れ合う場が少なく、公園は狭くて清潔ではなく、安全ではないイメージがありましたが、大分市の自然や公園では安心して楽しむことができます。都会的な遊びは成長してからできますが、野山を駆け巡るなどは大人になったらなかなかできないので、子どもにとって凄く良い経験だと思います。

子育てに追われる日々の中で、ベリーダンスもできる範囲で再開したそう。

横山 : 現在はコロナの感染拡大防止のため子ども連れのレッスンは休止中ですが、大分市内のフィットネススタジオで週に1回レッスンをしてます。

母として我が子の成長を見守っています。

田舎の良いところと足りないところ

すっかり大分市での生活が板に付いた横山さん。これからも大分市に根を張っていきたいそうです。

横山 : 娘の幼稚園の前が田んぼで、田植えから収穫まで見ることができます。お米ができるまでの流れが分かり、一緒にお米の話をします。娘が「いただきます」という感謝の気持ちについて話すのですが、自分が子供の頃にはなかったので、良い影響を感じます。

他にも、例えば近所の方からのお裾分けに、畑で収穫したばかりの大根を頂くことがあります。都会のスーパーでは既にカットされた大根が販売されているのですが、土のついた自然のままの状態を知る事ができます。

その反面、自分の生まれ育った都会と比較して、田舎ならではの不満もあるそうです。

横山 : 大分県には大きな博物館や科学館がありません。子どもが図鑑などを見て興味を持った際に、足を運べて、自然以外のいろいろなに触れられる場所がもっとあれば良いなと感じます。

横山さん

思い描くこれからの暮らし

自然を通じた子育てを大切にしている横山さん。これからも自然と触れ合いながら子どもとの時間を過ごしたいと考えているそう。

横山 : 夫がキャンプにハマっていて、庭でキャンプをして飯盒でご飯を炊いて娘に食べさせると、感動してくれて。こういう風に、娘には原体験をさせてあげたいと思います。

ベリーダンスの活動でも、新たな想いを持っているそうです。

横山 :ダンス自体だけでなく、ベリーダンスが盛んな中東およびその他のアラブ文化圏の時代背景なども伝えていきたいですね。
ベリーダンスは本来生音でやるものなので、ダンサーもプレイヤーも全員大分県民で集まって盛り上げるような場も作っていきたいです。

横山さんとお子さん

移住希望者へアドバイス

今では大分市での暮らしに溶け込んでいる横山さんから、移住を希望する皆さんへ、自身の経験を踏まえたアドバイスを頂きました。

横山 : 移住への怖さは多少あると思います。「本当にやっていけるのかな?」という疑問、周りの反応や親のこと、「移住に断念して地元に帰るってことになったら恥ずかしいかな?」など。

大好きだった都会の景色は今も好きです。でも、自宅の窓からは大きな霊山の山が見えて、この景色も大好きです。娘が生まれてからは川や海や山で遊ぶ楽しさ、四季を楽しむことを知りました。

正直、村社会と思うことはあります。言われてしまったこともあります。「郷に入れば郷に従え」と言いますが、失敗して答えを学んでいます。子育てにおいては、大分市が運営する子どもルームも利用しています。困った時に行けば、担当の先生がアポ無しでも対応し相談に乗ってくれます。両親が近くにいない身としては、かかりつけの病院について、子ども服について、年齢に合わせた子どもの遊びついてなど様々なことを相談できるので、本当にありがたいと感じました。どんな保育園があり、現在の園の状況とかも教えてくれて、保護者の母親同士を繋げたりもしてくれました。

また、大分市では、市内に転入してきた親子を対象に、月に一度ウェルカムパーティー交流会を開催しています。人気のイベントで保育士さんもいて、子育ての情報を提供したり交換したり、親子でリズム遊びやおしゃべりなどを楽しんでいます。私が移住した時は、子どもが安心して遊べる公園・授乳室・トイレなどあるかも分かりませんでしたが、今なら自分が知っています。これから困っている同じような境遇のお母さん達に伝えていけるので、楽しみでもあります。

大分には「助けて、困っています」と声を上げたら助けてくれる人は必ずいます。色々頼ってみることをオススメします。

横山さんとお子さん

最後に

何不自由ないけどどこか淡々とした都会での生活から、移住して飛び込んだベリーダンスの世界や自然豊かな子育てを通じて、満ち足りた日々を送る横山さん。慣れない土地での環境の変化で、寂しさや苦難に見舞われても、自分が心から情熱を注ぐ事柄に出会うことで、充実した日々が過ごすことができ、また次に向かうべきステージも自ずと拓けるということを教えてくださった気がしました。

PHOTO

  • ベリーダンスと子育てを通じて自然を身近に感じる暖かな暮らし。
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WRITER 記事を書いた人

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株式会社モアモスト 取締役・一般社団法人まち元気おおいた 理事・Pdw 代表として、サイト・DTP・DTMなどディレクション〜制作をはじめ、ライターや撮影などの業務に従事。大分市府内5番街商店街振興組合の理事として、まちづくりにも携わる。

SC-RECS.com・クラブイベントインフォ・SCLS・DubRize・PLay・合同写真展などを主宰し、各種イベントのオーガナイズからDJやマシンライブなどまで展開中。テルミン使い。

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