大分移住手帖

ゲストハウスを通じて地域の方と触れ合う臼杵市での暮らし。

Kg

取材者情報

お名前
和氣 日向
出身地・前住所
出身地:東京都世田谷区(下北沢)
前住所:東京都世田谷区(下北沢)
現住所
大分県臼杵市
年齢
22
職業
ゲストハウス臼杵家 女将
Webサイト
https://www.usuki-ya.com
Facebook
https://www.facebook.com/hyuga.waki/

生まれ育った都会の高校を卒業したその足で空港に向かい、臼杵市へ移住した和氣さん。家族の支えもあり、ゲストハウス臼杵家を運営しながら地域の方々との交流を深め、今では臼杵市中央通り商店街の理事としてまちづくりにも携わり、充実した日々を過ごしています。そんな彼女の経験の中には、移住のためのヒントがたくさん詰まっていました。

高校卒業式の時の写真

都会での暮らし

和氣さんは東京都世田谷区で生まれ育ちました。幼稚園からインターナショナルスクールに通ったこともあり、幼い頃から英語に興味を持っていたそう。父が農民カフェを営んでおり、外国人のお客さんが多かったので、随分と語学力などを鍛えられたそうです。

和氣:高校生活では、英語を活かして奨学金を取ってアメリカに留学しました。また、昭和の映画が大好きなので小さな映画館に通ったり、下北沢の農民カフェでバイトに明け暮れるなど、充実していました。

そんな和氣さん。高校2年生の時に、大きな変化が訪れます。

和氣 : 家族が臼杵市へ移住をしました。私は学業があったので、1人で下北沢の農民カフェに住み込んで卒業するまで高校生活を送りました。友人は都会で大学に進学したり就職したりしていたので、なぜ私だけは田舎に移住しなければならないのだろうという葛藤は多少感じましたが、本気でやりたいこともなく先のことを全く考えていなかったこともあり、適当になんとかなるだろうと思っていました。

ただ、英語を使って外国の方とコミュニケーションを取れることは、私の一番の強みと思っていたので、そこを活かして頑張りたいなとは考えていました。

ニューヨーク留学中の写真

卒業と共に臼杵市へ移住

都会に残って生活を続けるという選択肢もあったと語る和氣さんですが、移住先での暮らしに可能性を感じるようになったそう。

和氣 : 高校卒業後、目標も野望もなく東京に居続けるよりは、地方に移住した方が大きな可能性があると強く感じました。先に移住して農業やカフェを営んでいる親から「ゲストハウスもやる」と言われていたこともあり、「それなら私の英語も活かせるし、人脈も広がっていくし、行くしかないよね」と思って移住しました。

移住に関する不安や迷いはそれほどなかったのですが、「なんで私の人生に“臼杵市”という選択肢が現れちゃったのだろう」とは思っていました。自分で決めた選択肢だけど、どこかで納得していない部分はありました。

こうして決断した和氣さんは、高校生活が終わってあっという間に臼杵市へ移住したそう。

和氣 : 卒業式の日に泣く暇もなく、移住しました。成田空港へ行き、LCCに乗り、あっという間に大分空港到着といった感じです。

大好きな商店街の方々との焼肉パーティー

充実した臼杵市での暮らし

移住して4年目の和氣さんに、現在の暮らしについてお聞きしました。

和氣 : とても楽しい生活を送っています。こんなに楽しくなるなんて、想像できなかったです。昼は臼杵家を1人で切り盛りして、夜はスナック徘徊…みたいな日々を過ごしています。特にスナック徘徊が私の生きる糧ですね。スナックで昭和歌謡を歌って、地元のおじさんやお姉様方と繋がるのがとっても楽しくて。

また、臼杵市はゆったりと時間が流れています。都会はみんな秒刻みで動いているため、余裕がなくて対応が冷たいですし、近所付き合いもありませんでした。臼杵市の方は困っていたら声を掛けてくれ、心が暖かいと感じます。余裕を持って色々なことを考えられるし、取り組めます。都会よりも臼杵市で暮らしの方がQOL(クオリティ・オブ・ライフ)は大幅に向上しています。

そんな充実した日々を過ごしている和氣さんですが、思うところもあるそう。

和氣 : 街中に移住したので、常に人の往来があり接する機会があるからこそ、楽しいという部分もあるのかなと。田舎の住宅地だったら違っていたかも知れません。

生活面で言うと、地方へ行けば物価が安いとよく聞きますが、個人的には感じたことはありません。周りの方々との交流の中で、野菜や魚などを物々交換したり頂いたりすることもあり、そういった面では助かっています。

例えば、かぼすがたくさん採れる時期になると「これ、持って行きよー」と、コンテナごと頂いたり、「今日は魚が釣れたけん、夕飯で食べて!」と魚をくれたり。こういうやりとりが生活の中でできるって素晴らしいことだと思います。

また、私は車の免許がないので電車の移動が主ですが、交通費はかかります。地方ではやはり車が必要だと思うので、その費用や車検代などもかかってくるかなと。さらに、都会ではなかった自治会費など、地域独特の必要経費もあるので、 物価の安さを目当てに地方移住するのはおすすめしません。

近所付き合いについては、私は全く問題ありませんでした。住まいが商店街の近くで商人の方々に囲まれていて、お互いがお客さんになることもあるので、オープンに接してくれます。

文化面については、都会にはないルールやしきたりも多いです。そういうものは、地域の方から教えてくれません。意地悪で教えてくれないのではなく、当たり前のことと思っているからです。前に、自治会費というのが東京になかったというと、「え!そうなの!?」とびっくりしていました。

臼杵家

地域に溶け込むまで

臼杵市での暮らしを満喫している和氣さんですが、移住当初は大変だったこともあるそう。

和氣 : 友達作りが一番大変でした。私の場合は、親が商店街に店を構えていたこともあり、商店街の方が私の最初の友達となってくれたことで、道が開いて行きました。地方移住して、友達作りをする際に言えることは、「同じ汗をかいて、同じ釜の飯を食う」ことだと思います。

私が商店街の方と仲良くなったのも、臼杵市で11月に行われる一番大きいお祭りで、竹灯籠を町中に並べることで有名な「竹宵」の準備の時がきっかけでした。一緒に竹切り作業をして、終わったら一緒に鍋を囲む。そうすると「日向ちゃんやったっけ? 今日はお疲れ様、臼杵市での暮らしはどう?」と話が広がっていきます。わからないことも、知ったかぶりせずに、ちゃんと聞く。変に格好つけるのが、一番良くないと思います。臼杵市中央通り商店街の理事に就任した年に、半世紀以上続く「夜市」というお祭りの実行委員長を任されたのですが、右も左もわからなかった私は、ただひたすら「ここがわからないです!教えてください!」と聞いていました。すると商店街の方々も「ここはこうするんよ。あ、後これもね、こうするんよ。」と1聞けば10くらい答えてくださいました。

地元に住む方のほとんどは、代々臼杵市を守って来られた方です。今こうして私が臼杵市で商売できるのも、地元の方が守ってきたからこそ。そこにきちんとリスペクトを払うことも忘れないことが大事です。自分がもともと住んでいた都会とは違う点はたくさんありましたが「郷に入れば郷に従え」だと思います。

その中でも和氣さんが大切にしていることがあるそうです。

和氣 : 飲みに行くことが大事です。会議で名刺交換することより、飲み会で一緒に昭和歌謡を歌う方がビジネスの話が進みます(笑)。臼杵市はスナックがとても多いので、地元の方とひたすら飲みに出歩いていましたし、宿のお客さんと行くこともあります。人とのコミュニケーションを深める場所になっていて、新たな出会いがあったり、お店の中にいる知らない方全員と仲良くなったりと、面白くて刺激的です。

そんな和氣さんにこれからの課題をお聞きしました。

和氣 : 悩みは特にありません!

仕事面に関しては、暮らしの中に宿業が溶け込んでいて気に入っていますし、父の営む農業などの手伝いもあり、現状でできることはやっているかなという感じです。

臼杵市の人々は本当に最高なので、これからは臼杵市の人々をもっとプッシュしていけるように、思いついているアイディアのうちいくつかできたらなと考えています。

和氣さんがモデルの臼杵市の公式移住ポスター

臼杵市を盛り上げていきたいと考えている和氣さん。これから先の構想も練っているそう。

和氣 : 有名な旅行ガイドブック「ロンリープラネット」に臼杵石仏が紹介され、臼杵市にはインバウンドでたくさんの外国人が足を運んでくれており、商店街にいる方々の体感としては、フランス人の方が一番多いそうです。中には、4年に1回は必ず臼杵市を訪れて、一週間滞在するフランス人夫婦もいますし、仲の良い友人もいます。そういった方々に向けて、臼杵市とフランス国内の市との姉妹都市化など、目に見える形で動きたいと考えていて、来年はフランスに一年間住む予定です。

私は臼杵市に移住して4年目になりますが、移住当初より店の数が減りました。そんな状況なので、臼杵市の街自体が盛り上がらないと臼杵家だけ見ていてもうまくいかないと感じています。臼杵市の観光は、臼杵石仏などの昼の世界がフォーカスされていますが、夜も素晴らしいと思います。臼杵市の夜を観光客の皆さんに楽しんで頂くために宿をはじめたこともあり、そういった魅力も伝えていきたいと思います。

オンラインサロンなどの活動も行う

移住を希望する方へアドバイス

移住先の臼杵市でアクティブに活躍する和氣さんに、移住を考えている皆さんへアドバイスをいただきました。

和氣 : 都会から地方への移住は、大きな不安があるかと思いますが、きっと成るように成ります!何より、先人たちへのリスペクトは絶対に忘れないでください。また、自分の住んでいたところと違う点が多く、戸惑うこともあるかもしれませんが、「郷に入れば郷に従え」でまずは受け入れてみることが大事です。困りごとなどがあれば、素直に地元の方に聞いてみてください。必ず明るい未来があると信じてきてください。

そして、ぜひ移住ライフを楽しんでください!

臼杵家に泊まってくれた、トライアスロンチームとの写真

最後に

ゲストハウス臼杵家を運営しながら、臼杵市中央通り商店街の理事としてまちづくりにも携わる和氣さん。お祭りへの参加から今後の海外での展開に至るまで、様々な角度から臼杵市に貢献しようと頑張っています。「郷に入れば郷に従え」の精神で、地域に根ざして活動を広げるその様は、まさに移住者の鏡というべきものかもしれません。持ち前の若さと行動力で、今後も更なる活躍を見せてくれるであろう和氣さんに、これからも注目したいと思います。

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WRITER 記事を書いた人

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株式会社モアモスト 取締役・一般社団法人まち元気おおいた 理事・Pdw 代表として、サイト・DTP・DTMなどディレクション〜制作をはじめ、ライターや撮影などの業務に従事。大分市府内5番街商店街振興組合の理事として、まちづくりにも携わる。

SC-RECS.com・クラブイベントインフォ・SCLS・DubRize・PLay・合同写真展などを主宰し、各種イベントのオーガナイズからDJやマシンライブなどまで展開中。テルミン使い。

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