大分移住手帖

温泉が無いならサウナに入ろう!大自然ど真ん中で働く暮らし。

Tomomi Imai

取材者情報

お名前
高橋ケン
出身地・前住所
出身地:茨城・守谷
前住所:東京
現住所
大分・豊後大野
家族構成
3人
Webサイト
https://lamp-guesthouse.com/bungoohno/
Facebook
https://www.facebook.com/LAMP.bungoohno/
Twitter
https://twitter.com/lamp_bungoohno/
Instagram
https://www.instagram.com/lampbungoohno_guesthouse/

大分県といえば温泉ですが、実は大分市のとなりにある豊後大野市には温泉がありません。それを逆手に取ってフィンランドの文化であるサウナ小屋を建て、盛り上がっている宿が山の奥深くにあります。その名も「ゲストハウスLAMP豊後大野」。もともと町の持ち物でお化け屋敷とも言われたこの場所に茨城から移住し、管理運営しているのがWeb制作会社「LIG」(リグ)の高橋さんです。彼の移住話と、今についてお聞きすべく、祖母山の山奥に位置するLAMP豊後大野へ伺いました。

田舎にいたからこそ、田舎で暮らしたかった。

社内企画でLIG新入社員が日本一周していた時の車。

茨城県守谷市で生まれ育った高橋さん。住みやすく、買い物にも困らない、適度な田舎だったそうです。のちに秋葉原とつくばを結ぶ「つくばエクスプレス」が開通したこともあり、都会が遠くなくなった反面、それまで遊び場だったところが徐々に消えていく姿を肌で感じていたそうです。

 

「それまで通っていた遊び場も無くなったし、都会ではないけど田舎ではなくなっていく姿を見て、もっと自給自足をするような田舎に住みたいなと、漠然と思っていました。通勤電車に揺られる人たちを見てて、こうなりたくないなと子ども心に思ったことを覚えています。」

影響を受けたのは、こだわりの強い蕎麦屋さん。

お世話になったこだわりが強いお蕎麦屋さん。

その頃、家の斜向かいに蕎麦屋さんがあり、そこの店主が「本物を知っておけよ」と築地から仕入れた良い食材などをよく食べさせてくれたそうです。後に思い出すと、この店主の暮らしから受けた影響が大きかったと言います。

 

「今モノが溢れすぎちゃっているから、本物の味を覚えておけよと色々食べさせてくれました。蕎麦も石挽きで十割の国産蕎麦粉しか使わないなどこだわりもありましたね。大学生の時にそこでアルバイトをしました。お店は大工さんと一緒にセルフビルド*して、庭は大杉や杉苔とかで手入れしてすごくこだわっていたんです。小川まで流れていて蛍を自生させるほどでした」

 

この蕎麦屋でのアルバイトを体感して「自然豊かな山奥で生活がしたい」と思っていたそうです。

大学卒業後は編集三昧の毎日。

大学卒業後、テレビ関係の出版社に就職した高橋さん。新聞のテレビ欄などの校閲を4年ほど行っていたそうです。5年目から本格的に編集の道に入りましたが、先輩もいない部署で手探りの日々だったそうです。

 

「新聞って毎時間締め切りがあるんですよね。まだ何も知らなかったので“入稿”とか“校了”とか言われても分からず、とはいえとにかく毎日四苦八苦しながらの日々でした」

 

その後、社内で雑誌事業があり、そこでも揉まれながら紙の編集を学んだ高橋さん。楽しかったそうですが、休刊になってしまい、その後新規事業として始まった電子書籍の部署へ。月刊だったのもあり、締め切りに追われる生活は変わらず、なかなかきつかったそうです。

 

「企画会議したら、あと2週間で作らなくてはいけない。取材して作ってデザイン入れることをやらないといけない。そんな毎日でした。それをいつの間にか1人でやることになってしまったんです。編集長のような立場でもあり、営業でもあるような仕事でこれまた大変で。その後、アプリや書籍と電子書籍を同時に出すといったこともしていきながら、インターネットテレビガイドのリニューアルをしてその編集長をやりました。当時としては早い取り組みだったので、もちろん聞ける先輩なんていなくて。調べながらやっているうちに、『だったらこの業界の専門の会社に入って、後々独立したい』と思うようになったんです。」

転職と同時期に考えた米農家としての道。

自ら機材を運転しての米作り。

その転職先として縁があったのがLIG。webメディアとして有名な会社の1つでした。ここでは外部Webメディアの編集チームとして一からメディアを立ち上げる部署に2年ほどいた高橋さん。同じころ、米農家である奥様の実家では担い手不足が課題になっていたこともあり、web業界から退いて、米農家としてリスタートしようかと悩んでいたそうです。

 

「TPPの影響もあった時期だったので、日本の米の価値が海外で上がると思ったんです。妻の実家は米農家ですが、3姉妹なので担い手がいませんでした。蕎麦屋に教わった色々を思い出していて、だったら自分が継いでもいいなと思っていたんです」

記事を書きながら地方を回る仕事へ。

そんな矢先に、会社役員から「旅をしながら仕事しない?」と声をかけられた高橋さん。それは、地方を回りながら記事を書きつつコワーキングスペース「いいオフィス」でイベントする仕事でした。当時、大分県にて企画が決まった段階だったそうです。ちょうど仕事も落ち着いたころだった高橋さんは、軽い気持ちでそのオファーを受け取ったそうです。

 

「自主企画で、記事を書くことも営業もPRも全てLIGブログに集約していく企画でした。最初に行ったのは大分県。いきなり場を作るのではなく、各地の場を活用した『どこでもオフィス』という移住に関係する企画を始めたんです。」

 

「その仕事のなかに『どこでもオフィス』という企画があって。今でいうワーケーションみたいなものなのですが。当時はワーケーションという言葉もなく、その地域で何日間か仕事をしながらその土地を楽しむっていうコンセプトでやっていました。その第2回の壱岐島から企画や集客に携わることになり、県外のフリーランスの方々が多く参加してくれました。」

取材で訪れた豊後大野市。ここの農業を学びたくて。

現在のLAMP

人気だった「どこでもオフィス」の企画。回数を重ね、大分での第3弾の時に回ったのが豊後大野でした。この時、一緒に回った自治体の担当者から「使われていない大人の隠れ家があるので行きませんか?」と誘われ、不安になるほど山奥にある当時使われていなかった登山客用宿泊施設に案内された高橋さん。来てみたのは良いものの、ドアは閉まっていてボロボロ。改修は決まっているのに指定管理が決まっていないとのことでした。担当の方は一生懸命説明してくれたのですが、一緒にきた会社代表も高橋さんも最初は興味なかったそうです。

 

「お化け屋敷にしたら面白いかなくらいの気持ちでしたね。ITを駆使して、携帯電話を取り上げて、プロジェクションマッピングして。でも実際そういうお化け屋敷には人は来ていないのも知っていたし、この場所自体夏しかお客さんがいないと聞いて、最初は無理だと思ったんです」

 

しかし、会社はここを当時長野にあったゲストハウスLAMPの支店にすることに決めたのだそうです。理由は、関東では南海トラフ大地震の危険性が叫ばれていて、東京が万が一ダウンした時の避難拠点としてここで仕事ができるように。また、その際社員やその家族だけでも暮らせるようにという要素が大きかったそうです。

 

「この場所をLAMPにすることが決まり、本格的にここを動かしていくとなった時、『情報発信をしながらここで農業をやるのもすごく楽しそうじゃない?』と盛り上がったんです。派遣員として私の他にもう1人候補がいたのですが、同じような拠点を長崎県壱岐島にも作ることになり、その1人はそちらへいくことになりました。僕は変わらずここにいたいと思ってて。なんでかといえば、こっちの農業と関東の農業って、時期もやり方も違うんですよね。だから、こっちの農業を学べるなら行こうって思ったんです。だから米作りもしているんですが、これが結構大変(笑)。茨城では機械を使うけれど、ここでは昔ながらの手法だから手植えなんですよね。」

 

思ったより気軽に決まった高橋さんの豊後大野移住。奥様の反対はなかったのかお聞きしたところ「楽しそうだからいく!」と難なく一緒に来てくれたそうです。来た当時は夫婦2人きりでしたが、その後お子さんも生まれ、子育て環境としてもここを選んでよかったそうです。

LAMPや自分がここでやっている意味に悩んだ3年目。

現在のLAMP内のレストランゾーン。温かい雰囲気で居心地が良い。

そうして移住し、管理運営を始めて早4年になる高橋さん。指定管理は3年ごとに契約更新がありますが、実は3年目に悩みがあったそうです。それまでゲストハウスとして運営してきましたが、宿泊のみでの運営は、山目的のお客さんしか来なかったのだとか。

 

「30代家族連れ、子供が2人いるような方々に気軽にきてもらいたくても、来ても遊べる要素が少なかったんです。山や川は確かにありますが、何日も連泊する理由にはならないようでした。色々試行錯誤はしていましたが、なかなか活路が見出せず、今後も続けるべきなんだろうかと悩んでいました。豊後大野市が楽しくないのではなくて、お客さんに対してここを運営するのが“僕たちである意味”を悩んでいたんですよね。」

自分が楽しいことをしよう。サウナで見出した4年目。

最近建てられたREBUILD SAUNA

そこで着目したのが「サウナ」だった高橋さん。一時は自分である意味を悩み続けましたが、「やるのだったら自分が楽しいことじゃないと続かない」と気持ちを新たに、自身の趣味でもあったサウナを敷地内に建てました。

 

「会社に頼んでサウナ小屋を建てる予算をもらったんです。色々模索しつつ大工さんの協力もあり、あっという間に完成。サウナは2020年6月に泊まり客用としてスタートし、7月には公衆浴場の許可が降りたので、正式に「REBUILD SAUNA」というサウナサービスを始めました。

 

始めてみたら案外反響があって嬉しいですね。自分たちだけでサウナをやるのではなく周りを巻き込むことにしたのも良かったです。豊後大野市のキャンプ場の多くが川沿いにあって、フィンランドなどで行われるテントサウナなどには好都合だったんですよね。大分県は大抵温泉があると思われていますが、豊後大野市には温泉が無く、その代わりにサウナがあると認知してもらい始めていますね。」

 

新しい取り組みに対して、むしろ前のめりだったという豊後大野市の行政。市長も毎年年末の挨拶などで指定管理の場所へは顔を出してくれるので、直接話せる機会も多いそうです。そんな豊後大野市ではこういった新しい取り組みもやりやすいと高橋さんは語ります。

今後はもう1ステップ上に上がりたい。

看板もアイディア満載。

新たな活路を見出し、地域とも連携して盛り上げている高橋さん。そんな高橋さんは今後どんな暮らしをしていきたいか伺いました。

 

「今後は、ここを誰かに任せてもう1ステップ上に上がりたいなと思ったりしています。ここで今働いているメンバーが育って、結果が出ていくようになれば、僕はもう少し統括的にみられる立場になれれば良いなと思っています。僕は場所には特に拘っていないんです。仕事もフリーランスのような動きになるんだろうなと思っています。まだぼんやりとはしていて、町も自分も、今後どうなるかはわからないですね。サウナの件でフィンランドも近くなったから行くかもしれないし、この町も今より良くなっていく流れがあればより長くここにいるかもしれない。ある意味川の流れに身を任せていきたいなと思っています。」

豊後大野市はお金で買えない価値がある町。

あえて明確なゴールで自分を縛り付けるのではなく、身を任せつつ暮らす範囲を自分で楽しくしている高橋さん。そんな高橋さんから、移住を考えている方々へメッセージをいただきました。

 

「自分の住みたいところに住んだら良いと思うし、必ずしも都会である必要が無くなりましたよね。本社に行かなくても良くなるし、自分の好きな場所に住めるようになってきています。その場所の1つとして大分と選択肢を持つのも良いのでは?と思いますね。大分にはいろんな町があって、温泉好きな人だったら別府に住めば良いだろうし、温泉とちょっと小洒落た街に住みたいんだったら由布院に住めば良いし、都会が良ければ大分市があります。

 

その中で、豊後大野市は子どもを育てるにも仕事をするにも、ストレスがなくいつも自然に身を置いて働けるところが最大の強みだと思います。豊後大野市はお金で買えない価値がある町なんだなって思います。その価値をどう思うかですね。空が綺麗だったり、季節によって山や川が綺麗だったり。サウナに入って綺麗な川で水風呂に入って外気浴して、また次の日仕事に行く。そういう日常は多分他では絶対に出来ない贅沢ですよね。野菜も何時間も運ばれてきた物ではないし、魚は少し遠いにしても山の肉などが身近にありますので、僕はすごく住みやすい場所だなと思います。


また、独立だけが全てじゃ無いとも思います。僕は今この会社に所属しながらこの場を運営することができているのも事実。サラリーマンだって自分らしく暮らせるんだよって伝えたいですね。」

最後に

様々な仕事を経験した先に、蕎麦屋に教わった自分らしい豊かな暮らしを選択した高橋さん。ゴールや目標をあえて強く決めずに、流れに身を任せながら営む日々の中で、自分の暮らしは自分が楽しくするという心意気が良く伝わってきました。山道は決して緩やかではなく、行く道中だけでも大自然を感じられるLAMP豊後大野。険しい山道を越えた先に待っててくれる高橋さんの明るい笑顔にかなり癒されること間違いなしです。ぜひ出来立てホヤホヤのサウナと満点の星空を味わいつつ、高橋さんや個性豊かなスタッフさんとお話ししてみてくださいね。

*セルフビルド
住宅を自分自身で建てること

PHOTO

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WRITER 記事を書いた人

Tomomi Imai

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25歳でフリーランスとして独立し、多様な分野にてプロデュースやディレクター業を経験。モノコトヒトをつなぐひと。多様な伴走を得意とする。絶賛子育て中。ヨガ・サーフィン・音楽・映画・コーヒー・日曜大工が趣味。

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