大分移住手帖

たくさんの“家族”に出会った町で、「土地の記憶と出逢うレストラン」を作る

fujiwara

「偶然」や「たまたま」といった予期せぬ出来事が、人生の転機となることがあります。

竹田市城下町にある、地元出身のシェフが開いたカジュアルイタリアン「Osteria e bar RecaD(オステリア・エ・バー・リカド)」。まちづくりの活動にも精力的なオーナーが営んでいるこのお店は、地域外から訪れた方や移住者と地域の方を繋ぐこの町に欠かせない交流拠点の一つでもあります。

そんなオーナーと“偶然”出会ったご縁で、2020年に竹田市へ移住してきたのが、松岡さん。

シェフが新規事業の準備のため、ランチタイムの営業をしていなかったことから、彼女はお昼にお店を間借りして、レストランをオープンすることになりました。

移住して1年目に夢だったレストランのオープンを叶え、更には「“家族”と呼べる存在もたくさんできた」と笑顔で話す彼女。そのドラマティックな人生をご紹介します。

日本各地を巡りながら、料理の技を磨く

大学卒業後、オーガニック化粧品を販売する会社に就職し、化粧品会社のイベント企画を担当していた松岡さんが料理に目覚めたのは、地方を旅したことがきっかけでした。

松岡:当時シェアハウスで一緒に暮らしていたメンバーと「どこか自然の多いところでみんなで暮らせたら楽しいね」と、日本各地を旅しながら移住先探しをしていました。その時に「地方で暮らすなら手に職がないと厳しい」と思ったんです。父が畑や野菜作りに興味があったこと、母が料理好きだったこともあり、自然と料理人の道に興味を持つようになりました。

25歳で会社を退職。「農家さんの想いまで届ける料理をしたい」という自分の夢を見つけた松岡さんは、島根県の邑南(おおなん)町に地域おこし協力隊として移住し、活動の中で料理の基礎を学びました。

邑南町は、B級グルメの全盛期に「地域の食材や料理をA級グルメに」という方針で、日本各地から料理人を呼び、研修を行っていました。そこで料理について学びながら、地元の野菜や特産品を使用したメニューを農家さんと一緒に考えるプロジェクトを担当することになった松岡さん。偶然研修で訪れた山形県にあるイタリアンレストランで、地域にある“いつもの食材”を主役にするシェフの料理に衝撃を受けたそうです。

松岡:「こんな野菜主役にならないでしょ」って思うような食材でも、シェフの独創的な視点で主役に仕立てる。その技術や見せ方をシェフのそばでもっと学びたいと思いました。

そうして2つ目の移住先に選んだのは山形県鶴岡市。ここでは、松岡さんが料理をする上で大切にしている「伝統野菜」との関わり方も学びました。

伝統野菜とは、日本の各地で古くから栽培されてきた野菜のこと。

市場で販売されているほとんどは、どこの地域でも栽培しやすいように品種改良された物が多く、形が揃うような技術が施されてますが、伝統野菜は栽培した野菜から種を取り、翌年にその種から育て、採種を繰り返す中で、その土地の気候風土にあった独自の野菜が採れます。その分、その気候風土の影響を受けるので、形や大きさが不揃いだったり、成長が遅かったりすることもあり、経済的メリットは少ないと言われています。

松岡:学生時代に世界を旅して回っていたときに出会ったのが、伝統野菜でした。非効率的な作物にも関わらず、地域に脈々と受け継がれてきた伝統野菜。そこには「家族が好きだから」「あの人の好物だから」「親から受け継いだものだから」という、他者への祈りみたいなものがあったのではないかと感じたのです。

地域に根付いた野菜の存在を知り、受け継がれてきた想いを感じ取った松岡さん。この想いを絶やさず、未来へと繋げていきたいと思った彼女は、山形のレストランで伝統野菜の活用や保全についての知識を深めました。その後、奈良県奈良市で伝統野菜を自ら発掘して保全し、それをお客様に提供する活動を行う農家レストランに転職しました。

ここで2年ほど勤務し、伝統野菜についての知見を広めた松岡さんは、いよいよ竹田市へと足を踏み入れることとなります。

一度の訪問で、レストランオープンが決定!?

3度の移住を経て、次のステージを探していた松岡さんに知り合いが紹介してくれたのが、竹田市にあるレストラン『Osteria e bar RecaD』でした。

松岡:知り合いから「竹田市に『Osteria e bar RecaD』という面白いお店があるから勉強に行っておいでよ」と紹介されて、早速行ってみたんです。そこでオーナーに、料理を教わりながら、自分の料理を提供させてもらえるお店がないか相談してみたんです。そしたら「ここでやってみれば。今は平日のランチ営業をしていないから、貸せるよ」と提案してくれたんです。オーナーには出会ったばかりで、自分の料理もまだ食べてもらってませんでしたが、これはチャンスだと思ってすぐに移住を決めました。

フットワークが軽いオーナーのおかげで、すぐ近くのシェアハウスに住むことが決まり、驚くほどスピーディーに移住&レストランのオープンが決定!

さらにオーナーが「かなちゃんが暮らしやすいように」と、地域の人や農家さんなど様々な方を繋げてくれ、開店までの準備も順調に進んだそうです。

こうして2020年8月、移住して1ヶ月経たぬ間にオープンした「kana’s kitchen at RecaD」。

松岡:移住先でいきなりお店を始めると決めた時は「お客様が来てくれるのか」と本当に不安でしたし、オーナーが竹田を盛り上げてきた大きな存在で、さらに同じイタリアンの先輩ということもあって、間借りして営業することにプレッシャーも感じていました。しかし、シェアハウスのメンバーやオーナーが一緒に告知をしてくれたり、声をかけてくれたりしたおかげで、なんとかスタートを切ることができました。

農家さんから届いた野菜をふんだんに使った彩り豊かな前菜

 

農家さんとお客さんを繋ぐレストラン

松岡さんは今までの経験を活かして、「土地の記憶=食の背景と出逢うレストラン」をコンセプトに掲げ、「農家さんを主役」にしたお店作りを始めました。

彼女が作る料理のメニュー名には「こだま農園さんの二色の玉ねぎと自家製ベーコンのペペロンチーノ」や、「阿南農園さんの白ナスのブラマンジェ」「馬場さんの花山椒とマスカルポーネのソース」など、農家さんの名前が入ります。

加えて、農家さんの写真や、どんな作物を育てているか、どんなことを大切にして育てているか、そしてお客さんへ伝えたいことなどをまとめたボードが用意されており、訪れた人は今食べている野菜をどんな人が育てたのかを知ることができるようになっています。

店内にある農家さんからお客様へのメッセージや野菜に込めた想いが書かれたボード

 

松岡:都会に住んでいた時は、今自分が食べている食材を誰が作ったのか知ることはできなかったんです。でも地方に来て、誰が作ったのか、さらには作り手の想いまで知って食べると味が全然違うと感じたんですよね。「この人が作った野菜なんだな」と、誰かを思いながら食べることができるのはとても幸せなこと。それをお客さんにも楽しんでもらいたいですね。

農家さんが手塩にかけて育てた地域の美味しい食材が、松岡さんのセンスで美しい一皿に。自らの野菜が主役になったプレートは、農家さんのやる気や喜びに繋がっています。

ランチを食べながら農家さん同士の交流&勉強会も行われている。

 

松岡:「自分の野菜が主役になる」ということをすごく喜んでくださっていて、年間の野菜計画表を渡してくれる農家さんがいたり、「この野菜が欲しい」と連絡したら「来週はこんなのが登場するよ」と連絡をくれたり。メニューの決め方も野菜ありきで考えるようになりました。家族を連れて食べにきてくれる農家さんもいて「自分が作った野菜を食べてくれている姿を見れて嬉しい」と言ってくださって、すごく嬉しかったですね。

お店が休みの日には農家さんの元へ車を走らせ仕入れを行う松岡さん

チームであり“家族”である仲間たちと助け合いながら暮らす

竹田で暮らし始めて9ヶ月。松岡さんのお店は、早くも地元の常連客でごった返すほどの人気店となっています。

松岡:お店では地域の伝統野菜の他に干したけのこなどの乾物も出しているのですが、地元のお客さんがそれをすごく楽しんでくれるんです。「干したけのことか小さい頃から見ていたけど、使ったことがなかった。でもあなたのパスタを食べてみてこの前買ってみたの。」という嬉しい声もいただけるようになりました。

干したけのこと荻町のトマトを使ったトマトソースパスタ

 

農家さんも地元の人も、新しい発見や驚き、喜びを感じることができる松岡さんの料理。しかし、現状に満足することなく、彼女は「もっと学びたい」と向上心を覗かせます。その姿は周囲の料理人たちに良い刺激を与えているようです。

松岡:料理人同士はライバルですが、「みんなでレベルアップしていきたいね」と、レシピや技術を余すことなく教えてくれるんです。そこに「じゃあもっと良い野菜を作ろう」って賛同してくれる農家さんたちもいて、切磋琢磨していく感じがすごく良いですね。

さらに松岡さんは、その仲間たちがまるで家族のように見守ってくれる大切な存在だと続けます。

松岡:料理仲間も、住んでいるシェアハウスのメンバーも農家さんも、竹田市にはチームのような、家族のような存在がたくさんいるんです。みんないつも気にかけてくれて、守ってくれて、困ったら駆けつけてくれる。最高の家族がたくさんいるのが幸せです。

今後は若くて志が近い料理人メンバーと一緒に、農家さんを巻き込んだイベントをやろうと企画していると話してくれた松岡さん。地域で暮らすたくさんの“家族”たちと支えあいながら共創を通じて、竹田市の新しい可能性を生み出そうとしていました。

 

シェアハウスで家族のような仲間と過ごす松岡さん

 

最後に

偶然の出会いに導かれながら歩んできた、松岡さんの食を巡る旅。最後に松岡さんから、今後移住や移住後の起業を考えている人たちに向けて、アドバイスをいただきました。

松岡さん:自分がこの場所でやりたいことをしっかりと伝えること、そして出会った人や繋いでくれた縁を大切にすると、自然と支えてくれる方が増えていくと思います。

移住早々レストランをオープンできたのも、導いてくれた縁や、出会った人、そして扱う食材や、作り手、継承されてきたもの等、彼女が様々な物事にしっかりと向き合い、感謝を続けて来たことが大きかったようです。

松岡さんの姿勢こそが良い関係性を作り、居心地の良い環境を築けている秘訣かもしれません。

取材者情報

お名前
松岡可奈(まつおか かな)
出身地・前住所
奈良県奈良市
現住所
大分県竹田市
年齢
30代
家族構成
独身
職業
イタリアンレストラン「kana’s kitchen at RecaD」
Facebook
https://www.facebook.com/kanaskitchen0430/
Instagram
https://www.instagram.com/kana.s.kitchen_at_recad/
FACILITIE

kana’s kitchen at RecaD

大分県竹田市竹田町498

WRITER 記事を書いた人

fujiwara

大分県大分市出身。「見たがり」「聞きたがり」「知りたがり」の“たがり”精神で活動する、好奇心旺盛なライター。竹田市地域おこし協力隊として移住者支援、空き家バンクの管理・運営に携わった経験を持ち、自身も竹田市に小さな空き家を購入。大工さんと二人三脚でリノベーションを行い、現在は収益物件として賃貸中。大家さん業で一攫千金を夢みるも、うまくはいかない今日この頃。

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