大分移住手帖

贅沢の価値観が変わった玖珠町での暮らし

Tomomi Imai

取材者情報

お名前
山本千春さん
出身地・前住所
出身地:大分県玖珠郡
前住所:神奈川県川崎市
現住所
大分県玖珠郡
年齢
44歳
家族構成
山本雄一さん(夫)、子ども2人(中3、小4)
職業
ヤトカコーヒー
Webサイト
https://jatkaa.stores.jp/
Facebook
https://www.facebook.com/jatkaacoffee/
Instagram
https://www.instagram.com/chiharucoco/

関東で育った山本さん。長年の会社員生活をピタッと辞め、大分県玖珠町にある祖母の実家の一部をご夫婦で改装し、コーヒー屋さんへと転身し、自分たちらしい時間軸で暮らされています。そんな山本ご夫妻の移住の経緯と今をお聞きしました。

20年続けた会社員生活を終えて家族で引っ越し

祖母の家の一部を改修してオープンしたヤトカコーヒー

大分県で生まれ、幼少期に関東へ引っ越し、千葉県船橋市で育った山本さんは、就職を機に神奈川県川崎市へ引っ越しました。大手銀行の子会社へ就職し、総務・人事・経理などを担っていたそうです。

高校時代の同級生である現在の旦那さんとご結婚。お子様も生まれ、実家が近いこともあり、子育てに関しても何不自由なく暮らしていた頃、2011年に東日本大震災が起こりました。山本夫婦にとって、暮らしを見つめ直す機会になり、ぼんやりとその頃の暮らしに違和感を抱き、田舎暮らしがしたいと思うようになったそうです。

山本:生活に困ってはいなかったんですが、震災がきっかけで田舎に行こうと夫婦で話すことが増えました。その時期に叔父が「子どもが小さな頃に移住するのは楽だよ」と話してくれて。当時上の子が小学4年生、下の子が年中に上がる歳でした。2014年頃に、玖珠町にある祖母の家の一部を改装して、ここでコーヒー屋でもやりながら暮らしたいねとなって。決まってからは子どもには移住の良い点ばかり話して(笑)。戻ろうと思えば戻れるからということで、思いつきで決めちゃったんです。

こうして、大きなトラックに家族4人分の荷物を乗せ、日本を縦断しながら2016年に玖珠町に移住してきました。

未経験でコーヒー屋さんをオープン。

コーヒーを淹れる山本さん

元々カフェ巡りが好きだったという山本さん。移住してカフェを始めることを旦那さんに相談したところ、すんなり受け入れてもらえたそう。やると決めたらすぐに行動。会社帰りにセミナーに通い、コーヒーの淹れ方や焙煎を学んだのだとか。

山本:私は料理が苦手で、カフェの食事は主人にお願いしようと思い、家族の生活の食事も修業という名目で料理は主人、コーヒーは私、ということで役割分担しました。

開業に向けた準備が進む中で、店の改装は移住を後押ししてくれた叔父が良い大工さんを紹介してくれ、移住前から電話や郵送で図面のやりとりなどをしながら行ったとのこと。開業資金は今までの積み立て、川崎の家の売却、そして公庫にて創業支援金を借りるなどしながら作ったそうです。

山本:壁に貼られた杉の木は元々あったものなので、手をかけてないですね。改修したのは水場とトイレと、シャッターをとって入口にしたところが大きいです。やはり水場に結構かかりましたね。全部で300万円前後はかかったと思います。資金については商工会に相談すると良いと聞き、色々相談に乗ってもらいました。

のんびり「玖珠時間」に困ったことも

遊び心が見え隠れするインテリア

ただ、コーヒー屋さん開業までの玖珠の方とのやりとりの中で少しだけ困ったこともあったそうです。

山本:ほとんどのやりとりはスムーズだったのですが、いざこっちに来てみたら「玖珠時間」というのがあって。打合せ一つとっても6時集合だったら、みんな6時20分くらいに来て、なんとなくスタートしたり。きっちり始まらないんですよね。今まで時間に厳しい職場にいたものだから、この感覚に慣れるのに時間がかかりましたね。7月に移住して、9月にオープン予定でしたが、中々計画通りに進まないこともあって、結局10月にオープンすることになりました。1ヶ月一円も入って来ないというのは初めてだったので、ものすごくドキドキしましたね。

オープンした後も、玖珠時間に合わせてのんびりしすぎて、このままで良いのかと思ったこともあったそう。道の駅や他のお店に商品を置いてもらったり、お客さん経由で紹介してらったりしながら顧客を増やすことで次第に焦りは無くなったそうです。

玖珠町の人は手に仕事があるから忙しくて面白い。

オリジナルのサンクス(sun kusu)ブレンド

そんな玖珠時間も受け入れながら、移住6年目を迎えた山本さん。もう会社員には戻れないと感じるそうです。

山本:お金は全然ないけれど、今の方が楽しいからもう会社員には戻れないですね。決められたこと、押し付けられたことではなく、自分で考えてその時にしたいことが今はできているから。今の暮らしはちょうど良いです。物々交換もよくあります。会社はいつも同じ人にしか会わないけど、お店なら常にいろんな人と話せるから、情報ももらえるし、学びも多いですからね。

玖珠に住んでみた印象は、「みんな忙しい」ということだと語る山本さん。玖珠町には農家も多いですが、みんな1つの仕事だけでなく、いくつかの仕事を持っていて、1年中忙しく動いているなと感じるそうです。

山本:みんなやってることが一つだけじゃないんですよね。手に仕事を持っている人が多くて、みんな副業があることにびっくりしました。そういう方々と繋がるのが面白いんですよね。

玖珠町に移住して、食物を育てる体験をしてみようと、昨年から畑を借りて作物も家族で育て始めたという山本さん。固定種や在来種に拘り、種を蒔いた後は自然の力でどうなるのか見守る実験的自然放置農法をやっているそうです。

山本:玖珠に来た時に、人に助けてもらったように、今度は人が困っている時に助っ人になりたいと思っています。子ども達にも積極的に農家に手伝いに行って、草刈りとか色々学んで欲しいなと思っています。自分がやりたいことをやれるように、いろんなことを経験して欲しいですね。

山本さんと同じように田舎暮らしを求めて玖珠町に来ても、生業をこっちで探そうとしている人は苦労するのではと思うのだとか。助けてくれる人たちや環境はあるので、手に職を持ってくるか、何か自分で生業を作る計画を持ってくることをおすすめしますね。

町のサイズ感に合わせて

きこりが腰掛けている様子を小学生からの親友に頼んでロゴに

特に宣伝もせず、穏やかに始めたというヤトカコーヒー。「ヤトカ」はフィンランド語で「続ける」という意味。ロゴの由来は目の前に見える伐株山にきこりが腰掛けている姿をイメージして作ったのだとか。そんなヤトカコーヒーにはこだわりのコーヒーはもちろん、多彩な食事メニューがあります。

山本:小さい子からお年寄りまで幅広い年代層の方が来てくれるので、皆が食べられるものを提供しようと考えていたらメニューも結構増えました。高校生もたまに来てくれるので、貴重なお小遣いの中で美味しいものを安く食べて欲しいなと思って作ったメニューもあるんですよ。私たちもカフェ巡りをしてた際に普段食べられないものを食べられるのが楽しかったので。

遊び心あふれるメニュー。「おい」は鹿児島県の言葉で「私」という意味

ヤトカコーヒーの開店時間は10時。しかし、町を歩く人たちの朝は早いようで、10時より前に朝の散歩や通勤途中に寄っていく方々もいるそうです。そんな時は準備中でも快くドアを開けてしまうのだとか。
また、最近では店内のテーブルのサイズだけで行うマルシェのようなイベントもしているのだとか。自らも楽しみながら、無理のない規模感で行っているそうです。

山本:イベントに出ると大体1ブースのサイズがここの机と一緒くらいなんです。それならここの机を使ってマルシェのようなイベントをやってみようと思って始めました。革職人さんなどいろんな手仕事の方が出店してくれます。出店手数料は取ってません。飲食してもらえれば十分です。ここでいろんな人に出会えるので、自分が一番楽しんでいるかもしれません。玖珠町だけでなく別の地域の方とも繋がれるのも楽しいところです。

イベント時にブースとして用いるテーブル。

贅沢の価値観が変わった

お話しながら漂うコーヒーの香りが心地良い

玖珠町に移住して一番よかったことは「贅沢の価値観が変わった」ことだという山本さん。移住してから金銭感覚が代わり、本当に必要なものと、不必要なものが分かってきて、今はとても楽しいと語ります。

山本:お客さんで農家さんの人がいて、お手伝いに行った時にお昼ご飯がすごく豪華だったんです。お母さんたちがみんな料理がすごく上手で、終いにはお持ち帰り用まで用意してくれて。手伝いに行ったのに、報酬が見合ってない!と思いましたが、お母さんたちからしたら美味しいと食べてくれることが嬉しいそうで。お金で買える贅沢と、買えない贅沢ってあるんだと知りました。

最後に

未経験で始めたものの、いつの間にか玖珠町を代表するカフェになっているヤトカコーヒー。苦労話も含め終始楽しそうに語ってくれる山本さんの人柄もあってか、話を聞いているだけで、この町に移住したくなるほど心地よい空間でした。玖珠町でも貴重な自家焙煎のコーヒーが楽しめるこの場所で伐株山を眺めながら、のんびり移住相談をしてみるのも良いかもしれません。

FACILITIE

ヤトカコーヒー

玖珠町大字岩室35-14

贅沢の価値観が変わった玖珠町での暮らし
WRITER 記事を書いた人

Tomomi Imai

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25歳でフリーランスとして独立し、多様な分野にてプロデュースやディレクター業を経験。モノコトヒトをつなぐひと。多様な伴走を得意とする。絶賛子育て中。ヨガ・サーフィン・音楽・映画・コーヒー・日曜大工が趣味。

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