取材者情報
- お名前
- 横田 拓未
- 出身地・前住所
- 東京都
- 現住所
- 大分県臼杵市
- 年齢
- 20代
- 家族構成
- 夫婦2人
- 職業
- 大分有機かぼす農園
横田拓未さんは徒歩で日本一周を完遂した元バックパッカーです。日本一周の途中で海外旅行にも行き、約6年かけて旅を終えた後に辿り着いた先が大分県臼杵市にある大分有機かぼす農園株式会社でした。
旅の途中で、元料理人で釣りを趣味とするアクティブな奥様と、出会って結婚。かぼす農園を経営するオーナー夫婦や周りの方に支えてもらいながら、ご夫婦ともに大分県での生活を楽しんでいます。今回は横田さんご夫婦の移住までの経緯や現在の生活について詳しくお話を伺いました。
ソーラーパネルを背負って徒歩で日本一周
北海道出身の横田さんは、大学進学を機に上京し卒業後に起業されたそうです。しかし、上手くいかず行き詰っていたそう。そんな時に友達から歩いて日本一周しないかと誘われたそうです。
横田:沖縄から歩き始めたんですが、肝心の友達は10日でリタイアしたんです。でもせっかく始めたからには一人で全ての都道府県を回ろうと考えました。お金がなかったので沖縄にとどまり5か月ほど住み込みでバイトをしました。
沖縄を出た後も、鹿児島で2か月ほど番台のバイトをしたり、熊本で熊本地震に遭い、災害ボランティアを2か月ほど行ったりしました。
横田さんは各地にとどまりながら気長に全国を旅し続けました。冬は野宿をすると寝袋が結露でびしょびしょになり、移動するにも重いしカビてしまうという問題があったそう。旅を重ねるうちに道具も増え、最終的にカバンにソーラーパネルを取りつけ充電し、照明や電源などに使用したそうです。
一番困ったのは泊まる場所を探すことだったそうで、基本は野宿でしたが、旅の途中で出会った人に泊めてもらうこともあったとか。他にも熱中症になりかけた時に助けてもらったりと、色んな人に助けてもらいながら旅を続け、その途中で乗り込んだ世界一周の船の中で奥様と出会います。
横田:26歳の時に日本一周の旅の途中で世界一周旅行にも行きたくなり、3か月で世界を回ることができる船に乗りました。そこで、現在の妻と出会って10日目には付き合うことになったんです。妻と一緒に世界を回って、船を降りた後はまた日本一周旅行を続けるため遠距離恋愛となりました。
奥様:私は岡山出身で、大阪の料亭で板前として働いていました。大阪では仕事と家の往復で遊ぶ暇も友達を作る時間もなく、辛い日々でした。全てを変えたくて仕事を辞めて一人で世界一周の船に乗りました。旅を終えて価値観が変わりましたね。彼をはじめたくさんの人に出会い、世界が広がったようでした。船を降りて私はそのまま大阪へ戻り、USJや保育園の調理師として働くなど色んな仕事をしました。
遠距離恋愛の間一度離れたこともあったそうですが、2020年の9月に横田さんがプロポーズし翌年の2月に結婚することになったそうです。
旅の途中で出会ったかぼす農園の社長を頼りに臼杵市へ
旅を始めて約6年後となる2021年7月に日本一周徒歩の旅を終えた横田さん。奥様と合流し向かった先は大分県臼杵市の大分有機かぼす農園株式会社でした。
横田:旅の途中で大分県を歩いている時に声をかけてくれたのが大分有機かぼす農園株式会社の國枝社長でした。一晩泊めてくれたお礼に次の日かぼす農園でお手伝いをしたんです。
それから3年後にアルバイトを探している友達を國枝社長に紹介したところ、僕もお手伝いにいくことになり、2か月ほど住み込みでアルバイトをしました。
そういった経緯もあり、「日本一周の旅を終えてどこに行こう」と考えている時に、國枝社長が頭に浮かんだんです。大分県は暖かくて、自然豊かで、趣味であるツーリングに適した場所も多かったので、國枝社長を頼りに大分県に移住しようと思いました。
横田さんは東京の賃貸アパートで生活していた際に、お隣から壁ドンされ、家の中で音を立てたら怒られるんだと衝撃を受けたそうです。その為都会ではなく、田舎で戸建てが建てられる場所に住みたかったそう。奥様は大分県の移住に対して抵抗はなかったかお聞きしました。
奥様:魚釣りが趣味で、釣った魚をさばいて食べるのが好きだったので、魚の美味しい大分県に来ることに抵抗はなかったですね。むしろ魚釣りがすぐにできる環境が嬉しいです。また私もバイクが好きなのでツーリングを楽しめる場所が多いところも気に入りました。
お二人はかぼす農園の近くで自然豊かなところに住みたいと思い、臼杵市で家探しを始めますが苦労したそう。空き家バンクや賃貸情報サイトなどで情報を集めましたがお二人の希望通りの空き家が見つからず、最初は大分有機かぼす農園株式会社の一角を借りていたそうです。最終的に國枝社長の親戚の方の紹介で今住んでいる空き家を借りることになりました。
家の中も外もまるでサファリパーク
國枝社長のご紹介で見つけた今のお家ですが、10年間空き家だったこともあり、住んでいて驚くことがたくさんあるそうです。
横田:引っ越した当初は、水道管が破損しており水漏れで床が腐っていたので、しばらくは水の元栓を閉めて生活していました。また、屋根裏に動物が住み着いていましたね(笑)。引っ越してすぐかぼす農園の繁忙期に入ったのでまだまだ途中ですが、少しずつ自分たちでDIYしています。
地域になじめるか不安はなかったのでしょうか。
横田:國枝社長の親戚の方に、「ゴミ出しの前に区長に挨拶をした方がいいよ」など地域のルールを事前に教えてもらっていたのでスムーズに溶け込むことができました。また区長さんが30代で年代が近く、いろいろ教えてくれるので、ご近所付き合いで特に困ることはありませんでした。それよりも動物がたくさんいるので、今は人相手より動物相手の防犯が必要になりました(笑)。
奥様:引っ越した時から、屋根裏にムササビが住み着いていて、いろいろ対策はしましたがいなくなってもすぐに戻ってきます。庭には猿が集団で現れて柿を屋根で食べていたり、家に帰る途中の道路に動物が飛び出してくることもあって、まるでサファリパークです(笑)。
猿が集団で庭にいるのは怖いですが、トラブルもひっくるめて楽しんでいる様子の横田夫妻。通販で買ったものは翌日に届くし、買い物には困ることはないそうです。かぼす農園の仕事が落ち着いたら本格的にDIYにとりかかる予定だとか。
國枝社長という知り合いがいて、何かあったら助けてもらえる環境だったので、安心して移住して来れたそうです。
大分県を訪れた旅人が泊まれる所にしたい
日本一周や世界旅行など刺激的な生活を送っていたお二人に、移住後の生活についてお聞きしました。
横田:引っ越してから、旅仲間がかわるがわる訪れてくれます。旅人に食事と寝床を提供し、原尻の滝や稲積水中鍾乳洞を案内することもあります。僕も日本一周の時に色んな人にお世話になったので他の旅人を助けたいという想いがあります。「旅人を100人泊める」ことを目標にしています。今後はゲストが遊びに来てもいいように部屋を3つくらい空けておきたいです。
定住して‘‘風の人から土の人‘‘になった今でも心は旅人です。毎年8月に青森のねぶた祭りに全国の旅人が集まり、テント村でキャンプしながらねぶたに参加して、終わったら高知県の香取神社の夏祭りに旅人が移動します。その流れで大分県に旅人が来てもらえるような祭りを自分たちで作りたいです。
奥様:色んな人が泊まりに来てくれるので毎日が幸せで楽しいです。来週は日本一周しているライダーカップルが泊まりに来てくれます。
大分県は食材の宝庫です。こっちに来て初めてカワハギを食べました。今後は船舶免許を取りたいという夢もあります。
おわりに
旅の途中で声をかけてくれた國枝社長との縁で臼杵市に移住された横田さん。困難さえも楽しみながらご夫婦で暮らしています。横田さんの旅のお話は面白く、旅の途中に手売りしていた写真集も一見の価値あり。また横田さんと同じくらいアクティブな奥様のお話を聞くのも楽しいです。そんなお二人が待っているお家を目的に旅に出るのも良いのではないでしょうか?
ご縁とご縁が繋がってどんどん大きな輪になるように、これから旅人の輪が大分県の中で広がっていくのがとても楽しみです。