取材者情報
- お名前
- すう
- 出身地・前住所
- 京都府京都市上京区
- 現住所
- 杵築市山香町
- 年齢
- 40歳
- 家族構成
- 夫、息子
“すうさん”は、彼女のライフワークである烏龍茶作りを山香町で行うために京都府から大分県へ移住してきました。移住後は訪問看護師として働き、結婚・出産を経て一児の母として子育て奮闘中でもあります。
今回はすうさんの移住前や現在の生活、烏龍茶作りについてお話を伺いました。
烏龍茶と山香町にあるカテリーナ古楽研究所との出会い
福岡県出身で、大分県に移住する前は京都府で看護師として働いていたすうさん。中国・台湾の烏龍茶が好きで中国茶の作り方を何度か習ううちに自分でも作りたいと考え、お茶が作れる田舎に行きたいと思うように。その頃に出会ったのが大分県杵築市山香町にあり、古楽器の復元と研究を続けているカテリーナ古楽器研究所でした。
カテリーナ古楽器研究所はヨーロッパにある古楽器を日本の樹木や竹素材を利用し再現しています。楽器作成以外にも全国各地でワークショップや講演・コンサートなどを行っており、ファンも多く、カテリーナ古楽器研究所を訪れて大分県に移住をする方も多くいるそうです。
すう:元々、老後は田舎で暮らしたいと思っていたんですが、京都に住んでいた時に、岐阜県の春日というところにある「薬草の里春日」に通っていて、同年代の友人が田舎暮らしをしているのを見て、体力のある若い時から田舎暮らしを始めるのも良いなと思いました。
友人のいる春日への移住も考えましたが、福岡にいる家族に何かあれば九州に移住しようと思っていたので、それならば最初から九州に移住し春日の友人の元には時々訪れようと考えたんです。
九州では烏龍茶作りが継続でき、公共交通機関で行くことが出来る場所を一か月かけていろいろと訪ねました。その時に以前から素敵だなと感じて何度も行っていたカテリーナ古楽器研究所の演奏会について九州内で開催する予定がないか直接問い合わせたところ「演奏会はないけれど大分に来ることがあれば遊びに来てもいいですよ」とお返事をもらい、初めて山香町を訪れました。
山香町を訪れたのがちょうど9月で、道には稲穂が実る美しい風景が広がっていて感動しました。カテリーナ古楽器研究所のみなさんも温かく迎えてくれたので、山香に家が見つかったらぜひ住みたいと思いました。
毎日旅をしているようなときめきを感じる
2015年9月にカテリーナ古楽器研究所を訪れて翌月の10月には山香町で家探しを始め、12月には賃貸で契約した空き家に引っ越してきたそうです。そこは寄合や地域活動などが盛んな場所でした。
すう:山香で見つけた家は賃貸物件でしたが、最初に提示された家賃が相場より高かったため、その家賃であれば住む為に必要な改修費用を大家さんが出してくれるように交渉し契約しました。家の前には美しい棚田があり、朝起きて四季折々の棚田の景色を見ると毎日旅をしている時のようなときめきを感じました。
毎月ある地域の寄合では、集落の人たちが作ったお米と農作物とジビエでお昼ご飯を作ることが多かったのでとても興味深く、仕事を休んで参加していました。草刈りや水場の掃除などの集まりにも、「これまで地域の風景を守ってくれた人たちがいるからこの景色を楽しむことができるのだ」と思い、必ず参加しました。また集落の誰かが亡くなったら、その家に最期のお別れをしに行ったり、隣の集落では初盆の家の庭で死者を送る盆踊りがあったりと、死が暮らしに密接に関係していたことも印象的でした。
地方では、環境や施設整備をその地域毎で担っているケースが多くあります。すうさんが住んでいた近所には以前県外から来たご夫婦が住んでいたそうですが、地域活動に一切参加されなかったそうで、契約する前に隣に住む方に地域の寄合だけは出てくれないだろうかと相談されたそうです。
すうさんの言うように、田舎の美しい風景や生活はこれまでその地域に住む方々が守ってきたという歴史があります。地方に住む場合は、どのような風習や活動があるのか地域の方や市町村の方に事前に聞いておくといいかもしれません。
すうさんは積極的に地域の方に声をかけ、山香町でお茶摘みをさせてもらえる場所や季節の保存食の作り方などを教えてもらったりする中で同じ集落の方と繋がっていったそうです。
また、集落の方以外にも多くの人が集まるカテリーナ古楽器研究所を中心にお友達が広がり、一緒に味噌や梅干し、柚子胡椒を作ったりするなど、家族のように親しくしているそうです。
全て手作業の烏龍茶作り
取材の際にすうさんのお宅を訪ねて、手作りの烏龍茶をいただきました。目の前で淹れていただきましたが、これまで飲んだことのないまるで紅茶のようなフルーティーな香りをまとった烏龍茶でした。
すう:山香町に移り住み、毎年5月にお茶の木の新芽を手摘みし、手揉みして烏龍茶を作っています。私が摘むのは庭先にあるお茶の木の新芽です。お茶の新芽は毎年出るわけではなくて、様々な条件で出ない年もあります。新芽摘みから製茶まで全て手作業で仕上げるため、あまり多く作ることもできません。
販売するほどは作れないのですが、自分が飲む分、お茶を飲みたいと言ってくださる方にお出しする分を作り続け、今後はお茶淹れの会をしていきたいです。
収入は減ったけど充実した日々
すうさんに移住して大変だったことをお聞きしました。
すう:山香町で訪問看護師として働いていますが、都会で働いていた頃よりお給料は下がりました。しかし、それで困るかというとそうでもありません。都会にいると飲み会や洋服などの購入にお金を使ってしまうけど、地方に住むと外食や不必要な出費が減って、結局残るお金は一緒でした。前の生活と今の生活にギャップを感じることはありませんでした。
おわりに
ライフワークであるお茶作りを通じて大分県に移住されたすうさん。烏龍茶作りについて話すすうさんは生き生きとされていて、大分県での生活が充実されているのだと感じました。田舎暮らしやお茶作りに興味がある方は、素晴らしい景色とお茶を楽しみに杵築市山香町を訪れてみてはいかがでしょうか?