大分移住手帖

大分県で働こう!〜林業編〜大分県で森と共に暮らしてみませんか

Tomoe Sato

コロナ禍で地方移住への関心が高まる中、農業とともに注目されているのが“林業”です。大分県は古くから林業や製材業が盛んで、スギの生産量が全国3位(2020年)となるなど、全国でも有数の林業地域です。特に大分県日田市は、日本三大林業地として知られています。

今回は、大分県日田市中津江村で田島山業株式会社を営む代表取締役の田島信太郎さん(以下、田島代表)と、広報担当の田島茉莉さん(以下、茉莉)に林業の仕事内容や、従事するために必要な事柄についてお話を伺いました。

林業ってどんなことをする職業?

田島山業プロモーションビデオ「森を守るために挑む」

 

林業は、山に木を植え、育て、伐採する仕事です。林業は一年を通して、季節ごとに主に以下のような作業を行います。

地ごしらえ:伐採した跡地を整備し、苗木を植える準備

植栽:苗木を植える

下刈り:苗木の成長を妨げる雑草や雑木を刈りはらう

枝打ち・除伐:余分な枝、生育不良、曲がった木等を切り落とす

間伐:木の成長に伴い、混みすぎた立木の一部を間引く

伐採:木の成熟を見極め一定面積の立木を伐採する

 

木の伐採や下刈りにおいて、チェーンソーや草刈り機などはもちろんのこと、専用の機材や大きな林業用機械を使うこともあります。機械によっては小型車両系建設機械運転免許などの資格が必要な場合もあります。

林業に就業するには

一言で「林業に就業する」と言っても、どのような働き方があるのでしょうか。主に以下の2パターンがあります。

〇自伐型林業

自身の所有する山林または地域の山林で、森林の経営や管理を自営的に行うものです。ただし、林業を個人ではじめる場合、未経験からでは難しいとされています。

〇森林組合や民間の林業会社などに就職する

仕事内容は各組合や会社で異なりますが、木の伐採や植林、販売、加工などを行っています。未経験者が林業に就業するパターンとして最も多い働き方になります。

ここでは、未経験者のキャリアプランとして代表的な森林組合や民間の林業会社などに就職する方法をステップ形式でご紹介します。

 

ここでは、未経験者のキャリアプランとして代表的な森林組合や民間の林業会社などに就職する方法をステップ形式でご紹介します。

 

STEP1 まずは相談する

まずは、大分県林業労働力確保支援センター「公益財団法人 森林(もり)ネットおおいた」や最寄りのハローワーク等にご相談ください。「森林ネットおおいた」にご相談いただければ、林業の仕事内容に詳しいアドバイザーがお答えします。
また、林業に関心を持つ方や就職を考えている方を対象とした相談会「森林(もり)の仕事ガイダンス」を、県内や都市圏で開催しています。「森林ネットおおいた」の相談ブースがありますので、開催場所や日程をご確認の上、お気軽にご相談ください。詳しくはこちらをご覧ください。

 

STEP2 就業前研修

大分県には、就業前の長期研修として「おおいた林業アカデミー」があります。林業の経験が無い方でも林業に関する必要な知識や技術を身につけ、即戦力となれるように、1年間の研修を月10万円程度の給付金を受け取りながら、無料で受講できます。伐採・下刈り等の現場実習や林業会社等へのインターンシップがカリキュラムに組み込まれているので、安心して林業に就業することができます。詳しくはこちらをご覧ください。

 

STEP3 就職活動を行う

ハローワークや「森林ネットおおいた」等に相談しましょう。「森林ネットおおいた」には、県内の森林組合や林業会社等の事情に詳しいアドバイザーが常駐しており、ハローワークと連携して就職に向けたサポートを行っています。

 

STEP4 就職

森林組合や民間の林業会社に就職します。

 

STEP5 就職後研修

就職後の研修として「緑の雇用」制度があります。「緑の雇用」制度は、未経験者の方でも林業に就き、必要な技術を学んでもらうため、森林組合等の林業事業体に採用された人に対し、講習や研修を行うことでキャリアアップを支援する制度です。さまざまな技能を身につけられるよう体系的な研修プログラムが用意されています。制度が活用できるかは事前に就業先にお問い合わせください。
制度の概要についてはこちらをご覧ください。

就業後にも、「緑の雇用」制度を活用し研修を受けることができますが、就業前にじっくり林業について学んだ上で、即戦力として活躍したい方には「おおいた林業アカデミー」で研修を受けることをおすすめします。
「おおいた林業アカデミー」は、入校時期が4月(募集は前年の9~12月頃)と限られているので、移住時期やライフスタイル等にあわせ、就業前の「おおいた林業アカデミー」研修を受けるか、働きながら「緑の雇用」研修を受けるか選択するとよいでしょう。

 

自然が好きであれば、性別も関係ない

伐採の様子

林業と言えば、「力勝負」「男性の職場」そんなイメージがあるかもしれませんが、実は女性も活躍している現場だとか。林業を目指す上でどのような人が向いているのかお聞きしました。

 

茉莉:自然や山が好きな人にとっては最高の職場環境と思います。チェーンソーや重機を扱うため危険が隣合わせの仕事ではありますが、森を継続的に守るために、目の前の木と向き合い、一本一本をどう伐倒すべきか、その森にどのような作業道を作るべきか、その森をどのように活用すべきか、山林の新たな価値創造に意欲のある方に向いていると思います。初心者の方でも、資格をお持ちの方でも、最初はなんでも興味を持って、壁を作らず正面から向き合うことが大事だと思います。

性別は関係ありません。小柄な女性社員が主要メンバーとして活躍していたこともあります。その方は、自分の体より太く大きな木をチェーンソー片手に4分に1本のペースで切っていました。女性にも林業でどんどん活躍してほしいですね。

働きながらできる資格取得と技術講習

田島山業の山道

林業に従事するには、業務にもよりますがチェーンソーや刈払機、ブルドーザーなどを扱うための資格が必要です。就業前に「おおいた林業アカデミー」などを受講して資格を取得するパターンもありますが、就業後でも、働きながら資格を取得できるとのこと。

 

茉莉:チェーンソーや刈払機は個人で使う場合には特に規制がありませんが、林業で扱う場合は講習の受講が必要です。他にも、ブルドーザーなどの小型車両系建設機械を扱うにも受講が必要です。年に9回受けるチャンスがあり、数週間程度で資格を取得することができます。未経験の方はこれらの講習を、入社後働きながら受講し一人前の林業者を目指してもらうことになります。

環境に馴染めるかということも大事

田島山業(株)がある中津江村に限らず、林業をする場所は都会と違い、歩いてすぐにコンビニがあるような環境ではありません。そのため、まずはこの環境に馴染めるかということも大切とのこと。

 

茉莉:田島山業では、来ていただく方の林業に対するイメージと実際のギャップを少しでも小さくするために、まずは中津江村へ実際に来ていただき、このエリアと仕事場である山で、数日間、仕事や暮らしぶりを見てもらいます。そしてお互い納得した上で3か月ほど試用採用期間を設けて、正社員としての採用となります。

日暮れ前には帰宅。雨の日はお休み。プライベート時間をたっぷり持てる仕事。

仕事を決める上で気になることの1つに残業の有無がありますが、林業ではどうでしょうか?

 

茉莉:残業はないですね。朝8時頃出社し、17時頃には事務所に戻るので、明るいうちに自宅に帰ることができます。ひどく雨が降ればお休みになることもあり、サラリーマンをされている方から考えるとプライベートな時間がかなり増えると思います。田島山業では森の空間活用も勧めていて、休日やプライベートな時でも、森で森林浴をしたり秋の実をふんだんに使ったリース作りをしたり、読書や瞑想をするとか。

森の木漏れ日を感じる、田島山業の間伐材(日田杉)で作ったベンチ

家業を継ぐ前は東京でサラリーマンをしていた代表。都会では感じられなかったけれど、大分に帰ってきて初めて満月がこんなに明るいのだと気づいたと言います。

 

田島代表:春には若葉の芽吹きを、秋には一面に広がる紅葉など、四季を間近で感じられることがこの仕事の何より素晴らしいところかもしれません。

小さな雪だるまが作れる程の積雪と田島山業の事務所の軒下にできる氷柱

サラリーマンで忙しく働いていた頃には気づけなかった自然の美しさ。プライベートな時間も多いので、自然に癒されたり、新しい趣味を始めるのもいいかもしれません。

 

大分県では、田島山業の他にも未経験・経験問わず林業作業員を募集している会社があります。林業会社に就職すれば、機材を自分で用意する必要もないため、身一つで転職できます。また、田島山業では住まいを近隣で手配するサポートもしてくれるそうです。

 

自然に癒され、自然に苦しむ時がある

実際に働く中で楽しいと感じること、逆に辛いと感じるときはどのような時なのでしょうか?

 

田島代表:山から見下ろす景色は最高です。間伐し手入れをして残っていく森を見ると達成感を感じます。都会では出くわさないような動物や植物に遭遇できることも楽しいですね。あとは木を倒す瞬間が楽しいという人もいます。ベテランになると作業道の開設などもできるようになるので楽しいと感じることも増えると思います。大切に育てた木が売れていくときも嬉しいですね。

辛いのは、自然災害に見舞われた時。令和2年7月の豪雨災害にて、先代から受け継いできた森の中の道路が被害に遭いました。その復旧に一年半ほど費やしましたが、まだ完全には復旧できていません。

また、大切に育ててきた木が安く売られてしまった時は辛いですね。近年は木材の価値低迷しているのも事実です。

 

自分の仕事が100年後の未来を創る

皆伐した跡地にパートナー達と一緒に植樹し、願いを込めた苗木の新芽

森を守り育てる仕事である林業。「今ある森は先代たちが残してくれたものであり、自分たちの仕事は、この森を次世代へ残すことでもあります。さまざまな苦楽がありますが、この仕事の醍醐味は100年後の未来創りだ」と田島代表は語ります。

 

田島代表:代々森をずっと守ってきました。今伐採している木々は先々代が植えて育ててきたものです。同じように今私たちが一生懸命植えている苗も、成熟するには早くても半世紀先です。植えた苗が荘厳な森になるまでを生きて見届けることはできませんが、それを受け継ぎ守るのが私たちです。鎌倉時代から森とともに暮らし、サスティナビリティを大切にしてきたように、これからも守り受け継いでいくことが大切だと思います。

最後に 

大分県での林業就業に興味を持った方は、まずはおおいたで働こうのサイトをぜひご覧ください。

森を守る仕事をしながら大分県で暮らす。取材中も田島山業のみなさんの熱い想いが伝わってきて、ご自身の仕事に対する誇りを感じました。移住後の職業の選択肢は様々ありますが、先祖代々受け継がれてきた仕事に未経験者でも飛び込める貴重な職種でもあります。大分県には田島山業以外にも多くの林業会社がありますので、ぜひ各企業の特色を比較しながら検討してみてください。

住所:大分県日田市中津江村合瀬3573

電話:0973‐56‐5114

URL:https://tajimaforest.co.jp/

 

WRITER 記事を書いた人

Tomoe Sato

大分生まれ、大分育ちの根っからの大分人。現在は子育てをしながら趣味の延長線でライターとして活動している。

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