大分移住手帖

サラリーマンを辞め、ソロキャンプ場を開業し自分らしく生きる暮らし。

Tomomi Imai

取材者情報

お名前
鈴木哲人
出身地・前住所
出身地:兵庫県尼崎市
前住所:兵庫県宝塚市
現住所
大分県玖珠郡
年齢
41歳
家族構成
4人
職業
会社員
Webサイト
https://rhetenor.official.ec/
Twitter
https://twitter.com/BEAVER17902557

鈴木さんは、兵庫県の会社でサラリーマンとして働いていましたが、義父の他界をきっかけに、漠然と違和感を感じていた日常を見つめ直し、自分らしく生きるスタイルを求め、会社を辞め玖珠町へ嫁ターンしました。現在はこれまでの経験を活かしてソロキャンプ専用のキャンプ場「BEAVER SOLO CAMPSITE」を経営しています。移住に至るまでのお話と、暮らしてみわかった玖珠町の特徴をお聞きしました。

仕事も暮らしも前のめりだった関西時代

仕事以外でもマンションの理事長を担うなど大忙しだった鈴木さん。理事長時に企画したアロマ石鹸のワークショップの様子。

大学では工学部で機械工学を勉強していた鈴木さん。製造業の会社に勤務されてきました。朝5時過ぎには起きて電車に乗り、夜遅く帰る日々。常に2冊はビジネス本を携帯し、スキマ時間で読書をしたり昼食中も資料を作ったりするなど仕事にがむしゃらに励んでいたそう。

義父の他界をきっかけに暮らしを見つめ直す

キャンプ場の管理棟外観。

そんな大忙しの鈴木さんでしたが、義父の他界を機に暮らしを見つめ直したそうです。

鈴木:その頃の仕事は順調で収入も安定していましたが、働きづめの毎日に、漠然と「このままでいいのか?」と少し思うようになっていて。そんな時に、仕事をバリバリこなしていて体力のあったお義父さんが病気で他界したんです。「人間いつ何があるか分からない・・・。自分の人生、悔いが残らないようにやりたいことをしたい!」という思いが強くなりました。

田舎は都会より生き延びる上では強い

趣味で集めたナイフをキャンプ場でレンタル中

鈴木さんが移住を決めたもう1つの理由は「都会暮らしの脆弱さ」。都市部で働き、マンションで暮らしていたからこそ感じたのは「生き延びる上では田舎の方が強い」ということでした。

鈴木:都会では電気・ガス・水道・道路・鉄道などの生活インフラは途切れることがない前提で生活しています。安全が続くと安心していまい、備えも疎かになりがちです。マンションの高層階に住んでいて、災害でエレベーターが止まったら避難も大変ですし、断水すれば避難所などに水をもらいに行くのも一苦労です。職場で被災したら、公共交通機関もストップするので家へも帰れません。どもが小さかったこともあり妻にも不安な思いをさせたくありませんでした。一方地方では、水は湧水があり、フロは灯油や薪で沸かせばいいし、ガスはプロパン。電気がなくてもキャンプ用ギアでどうにでもなる。稲作をすれば米には困らない。供給がストップしても暮らしていけるなと思ったんです。

移住後はなかなか仕事が見つからず

ご自身で全てDIYしたキャンプ場管理棟。

そうして会社を辞め、購入したマンションも売却し、家族で奥さんの実家のある玖珠町へ移住した鈴木さん。最初はなかなか仕事が見つからず、義父が残した足場の仕事を奥さん一緒に手伝っていたそうです。奥さんも「どうにかなるでしょう」と受け入れてくれていたのだとか。貯金はあったものの、収入が1/4以下になったにもかかわらず、市県民税(前年の所得によって課税される)大きく削られてしまったのが計算外だったそうです。

好きなことをしつつ、勤めにも出る

ソロキャンプに来た方々が語らえる場所も手作り。

足場の仕事だけでは収入が厳しく、求職活動をしていた鈴木さん。玖珠町にはそもそも求人が少なく、あっても給料が安いためになかなか決められなかったとのこと。老人ホームや介護職のパートの求人が主でいわゆる“会社員”の仕事が少ないと感じたそうです。

そこで、子どものころからものづくりが好きだった鈴木さんは、奥さんの家族から資材置き場の一部を借り、キャンプ場作りを始めました。前職退職時の有休消化中からそんな構想を抱いていた鈴木さんは、油圧ショベルやチェーンソーなどの特別教育や技能講習を多数修了していたこともあり、ご自身で整地したそうです。

自分で石を退けたり道を作ったり。

鈴木:都市部には、自然に癒しを求めている人が一定数いるのは以前から感じていました。特に焚き火は気軽にできません。それができる場所を作ろうと思いました。お金を儲けたいというよりも、自分の好きなことをしたいという想いが強かったです。とはいえそれだけでは収入が足りない部分があり、今は由布市にあるジビエの会社に勤めにも出ています。兵庫にいた頃に比べて収入は1/4程度になりましたが、家のローンなども無いので、家族4人で日々の生活を楽しんでいます。

妻の実家の離れを借りてリフォーム

リフォーム中の離れ

移住後の住まいは、奥さんの実家の離れを借りることができた鈴木さん。寒い地域なので断熱材を入れるなどDIYで改修したそうです。間取りはLDKのお宅です。

鈴木:設計図はある程度自分で引けるので、妻の親戚の大工さんに手伝ってもらいながら1年半かけて改修しました。材料には結構お金がかかりましたね。100万円はかかったと思います。最初にお金はかかりましたが、家賃は無いので、マンションの頃に比べたら気が楽になりました。

玖珠町の良さは人のおおらかさと自由な環境。

ハンドメイドの木製スプーン

玖珠町の良さをお聞きしたところ「人がおおらかなところ」だと答えてくれた鈴木さん。例えば、移住当時は4歳と6歳だった2人の子どもは、転校当初方言や環境の違いになじめるか不安がっていたそうですが、玖珠町はおおらかな人が多く、すぐに友達ができ、今ではすっかり玖珠になじんでいるそうです。また、自然が豊かで人口も少ないので他人を気にせず焚き火ができるなど、割と自分主体で動けることが良いと感じるそうです。

鈴木:都会だとベランダで焚き火すれば消防車が来る騒ぎになります。木工をやるにしても機械を使うようなことはマンションではできませんでした。その点、ここなら音についても気にせず自由に作業ができます。

気になるのは教育と行政サービス。

逆に気になる点をお聞きしたところ、教育や行政サービスが都会と違うと感じるとのこと。

鈴木:例えば、教育面で、都市部では小学校で性教育などがしっかり行われますが、こちらではあまりされていない印象です。兵庫小学校に通っていた時は、下校すると親に一斉メールが届いていたので「あと20分くらいで帰ってくるな」とわかり、帰って来なかったら何かあったと判断できるようになっていましたが、こちらにはそういうものは無いですね。校門さえ無いというオープンなところもあります(笑)。また、移住前は学童保育のサービスが充実しており、宿題をみてくれたり積極的に学習の支援や交流会などもありましたが、こちらでは最低限預かってくれるだけでした。宿題をしなくても何も言われないみたいで、そこには違いを感じましたね。同じ仕組みでなぜこんなに違いがあるのかなと当初は思いましたね。

地域ならではの慣習も

また、地域ならではの慣習にも注意が必要だと語ります。全く違う文化圏から移住してきた鈴木さんだからこそわかった玖珠町の特徴を教えてくれました。

鈴木:町を盛り上げようと積極的に活動している人もいますが、長年住み慣れた今の生活スタイル、風景が急に変わってしまうことに抵抗を感じる方も多いのかなと。地方創生が求められ、歓迎されるものと思っていましたが住んでいる人の立場からすると、特に不自由のない今のバランスを崩されたくないと感じる人がいるのも分かる気がします。

私は妻の実家があったのですんなり受け入れられましたが今でも初めて会う人からは住んでいる地域をよく聞かれます(素性を知りたいため)。また、ある都会から来た方が、古民家を買って改修するに「相見積もり」を取ったんです。田舎で機械的に相見積もりを取のはあまり良くないことその地域の大工さんはみんな知り合いな情報はすぐに共有されました。素性がわからず得体が知れないので誰も対応してくれなかったということがありました。都市部では相見積もりはよくあることですが、玖珠町は商売ではなく、人と人の繋がりで成り立っている地域なので気をつけた方がいいですね。

 

今後はもっと暮らしにメリハリをつけてものづくりがしたい

こんなに小さくてかわいい雑貨まで作れる鈴木さん

移住年目を迎え、オープンしたキャンプ場も軌道に乗り始めた鈴木さん。ものづくりが得意なのもあり、今後はジビエの会社勤めと自身の事業にメリハリをつけながら、もっとものづくりをやっていきたいと考えているそうです。

鈴木:細かな作業も得意なので、今後は自分のプロダクトも徐々に増やしていきたいなと考えています。自分で作った商品をレンタルで貸してみたりもしています。まだ規模は小さいですが、雑貨屋「レテノール・モルフォ」も運営しています。今後はキャンプとも絡めて色々作っていきたいなと思っています。
玖珠町にいると人に会う場面が少ないのもあり、ものづくりや1人で集中したい作業がある人には向いている町だと思います。私は人と関わるもの好きだし、1人で作業する時間も好きなので、バランスをとりながら自分らしく玖珠での生活を楽しんでいきます

最後に

地元である関西圏から奥さんの実家のある玖珠町へ移住し、教育や慣習の面で違いを感じながらも、持ち前の適応力で自分らしい暮らしを作り上げている様子がよく伝わってきました。「都会の人が焚き火もソロキャンプも遠慮せずに出来る場所」として作ったキャンプ場に、取材時は冬場でとても寒かったのですがお客様が何人もいて、その需要の高さを目の当たりにしました。とても話しやすく、陽気で明るい鈴木さん。苦労も含め楽しんでいるその姿にたくましさも感じました。

FACILITIE

ソロキャンプといえばここ!

E-MAIL: zherenlingmu94@gmail.com

BEAVER SOLO CAMPSITE

​大分県玖珠郡玖珠町大字森2531-16

サラリーマンを辞め、ソロキャンプ場を開業し自分らしく生きる暮らし。
WRITER 記事を書いた人

Tomomi Imai

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25歳でフリーランスとして独立し、多様な分野にてプロデュースやディレクター業を経験。モノコトヒトをつなぐひと。多様な伴走を得意とする。絶賛子育て中。ヨガ・サーフィン・音楽・映画・コーヒー・日曜大工が趣味。

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