取材者情報
リード・はじめに(人物紹介)
豊後大野市大野町にあるお客さんの絶えない木造の唐揚げ屋、そしてその隣のおしゃれな建物にある、”野菜パウダー”のお店「VEGEMARI」。この2店舗を運営する株式会社村ネットワークの常務取締役の應和春香さんは、広島県からのUターン移住者。臨床心理士の資格を持ちながら、国内外に大分県産の野菜パウダーを展開している現在までの彼女の経緯をお聞きしました。
岐路となった進路の選択
高校生の頃は美容師に憧れていた春香さん。専門学校に進学して美容師になりたいと考えていた時、周囲から思いもよらない意見をもらいます。「4年間遊んでも学ぶことがあるからとりあえず大学に進学しなさい」という学校の先生。また別の先生からは「あなたはいつも友達の相談を聞いてるし、きっと心理学に向いているから、大学で心理を学んだら良いと思う」とアドバイスされました。そして「心を扱わない、人が対象じゃないサービスはない。心理を学べば全ての応用が効くから学費を払っても行かせる意味がある」という父からの言葉が決め手となり、春香さんは心理学を学ぶべく、広島県の大学に進学しました。
きっかけはお母さんとの電話
大学で心理学を学び、大学院に進学して臨床心理士の資格を取得した春香さん。卒業後は臨床心理士を生業として活躍したいと考えていた彼女は、大学院があり、頼れる先生たちもいる広島県から地元の豊後大野市にUターンすることは全く考えていなかったそうです。
そんなある日、母から一本の電話がありました。
春香さん:大学院卒業後の進路について、母とこれからについて話をしていた時に、「私はこれからも広島県で就職して頑張っていく」と想いを伝えたところ、母に「帰ってきなさい」って言われたんです。今まで私のやりたいこと全部応援してくれて、好きなこと好きなだけしなさいと言ってくれてた母が突然そんなことを言うから、とても驚きましたが、その一言をきっかけに考え直し、地元である大分県に帰って、臨床心理士になることに決めました。
Uターン後の仕事と生活
Uターン後はまずは実家に住みながら、大分市内で1年ほど臨床心理士の仕事をしていました。大学院の教授からの紹介もなく、仕事がすぐに見つかるか不安だったとのことですが、病院に勤める友人の紹介できっかけをもらい、無事に就職できたそうです。そこから大分市内での一人暮らし、そして結婚を経て、豊後大野市での現在の自宅を見つけたという春香さん。なんと現在のお住まいは小学校からの同級生の実家で、「古民家に住みたい」という願いも叶ったと話してくれました。
春香さん:結婚して子どもが生まれた時、どこに住むかを考えていたんです。自分が通った百枝小学校に子どもを通わせたかったし、古民家に住みたい・・・と友人と話していたんです。そしたら「うちの実家、誰も住んでいないから住む?」って言ってくれて・・・
家族で壁を塗ったり、床を張り替えたりDIYをして家をリノベーションし、暮らし始めたそうです。
家業の中で突然現れた私の役割
ご実家はお父様が創業した会社、株式会社村ネットワークを経営されています。春香さんのお子さんがちょうど離乳食の時期、家業の中でお父様が「野菜パウダー」を開発、試作中でした。春香さんは試しにお子さんに食べさせてみると、ペロリと食べてくれたそうです。とにかく便利だと感じた春香さんは離乳食でつまづく友人にパウダーを送りました。すると、「全部食べてくれた!」とすぐに報告が。世のため人のためになったことに喜びを感じた春香さん。それまでは臨床心理士だったため、家業を継ぐことは考えていなかったそうですが、「たくさんの女性に知ってほしい、離乳食や子育てで悩む多くのお母さんの役に立ちたい」と感じ、この野菜パウダーの開発に関わることにしました。
そして完成した野菜パウダーのブランド名はVEGEMARI(ベジマリ)。Vegetable のVEGEと、落とさないように次の人にパスしてつなげることがルールの「てまり」と、消費者と生産者を結びつける「マリッジ」の2つの意味を持つ「MARI」をかけ合わせて作られた名前。
春香さん:商品をお客様に届けたい、という思いよりも、農家さんの役に立ちたい、の方が実はウェイトが大きくて。儲からないから農家が少なくなってるという悪循環を絶ちたいんです。確かに生野菜は鮮度が落ちるのも早いし生物だから扱いが大変だけど、パウダーにすることで、賞味期限も2年伸びて、大きさも10分の1になるので、場所も取らない。形の悪い規格外品でも関係なく栄養を逃さずパウダーにすることで、農家さんのビジネスチャンスになると思っています。だからこそ、生野菜と合わせて野菜パウダーを自然と使える文化を作っていきたいと思っています。だから現在会社では商品化応援もしています。農家さんが自社でやりたいという商品化はできるだけお手伝いしたいです。
ライバルが増えることは気にならないのかという私の質問に、もっとたくさんの人たちにパウダーを知ってもらいたいし、いろんな農家さんのパウダーが商品化されたら嬉しいと、話してくれました。一般の家庭の中に野菜パウダーが常備されていて、日常に馴染んでいくような、そんな世界を作りたいと。
大分での子育て
自分が幼少期を過ごした豊後大野市に、帰ってきてからの子育てについて聞いてみました。
春香さん:Uターンして思うのは本当に豊後大野市は子育てに優しい地域だなぁということです。出産の際の経済的なフォローや、医療的な待遇も良いと思います。
公園などの遊び場も充実しているし、自然に囲まれた田舎では、どんなに大きな声で騒いでも、周りを気にして制限することがないことは、子どもにとって大きなメリットだと思います。
また、近所の人が食材をおすそ分けしてくれたり、地域活動でも色々優しく教えてくれたりして、昔ながらの交流の仕方が今も残っていることは、この地域の魅力だと思います。
移住を考えている方へのアドバイス
地元がこんなにいいところだったなんて、帰ってきてから気づいたと、地元の魅力を笑顔で語る春香さんに、豊後大野市への移住を考えている方へのアドバイスをいただきました。
春香さん:仕事でも暮らしでも、自分の核になる部分、「何をしたいか」が明確だったら、どこでも活躍できると思うんです。子どもの時は自然の中で過ごすことが当たり前だったので特別感はなかったけど、1度地元を出たことで、豊後大野市が子育てにふさわしい環境だと実感しました。
うちの近くは、ちょっとお散歩に行くだけでも、昆虫や植物に触れたり、小麦や米が育っていく様子をリアルに感じられたり、牛がいて、その牛が子どもを産み育てていくけど、いずれは私たちが食べるのだという食育も、リアルに出来ることが凄くいいなと思います。
田舎に住みたいなら、ぜひ!豊後大野市へ!
最後に
まっすぐで正直で、常に前向きな春香さん。自分の気持ちには正直でいたい、好きなことは続けたいと、会社の取締役をしながらも週に1度は臨床心理士としてお仕事をされているそうです。そんな春香さんの元には、話を聞いてほしいという、地元住民の方や仕事関係の方が、たくさん相談に訪れます。毎日のように友人の相談を聞いていた高校生の頃と変わらない、”誰かの役に立ちたい”という原動力。春香さんの魅力、人柄が現れるブランドVEGEMARIが作る”新しい文化”。春香さんと農家さんのこれからの活躍にも期待です!