取材者情報
- お名前
- 河原紗希
- 出身地・前住所
- 出身地:東京都
前住所:大分市
- 現住所
- 国東市安岐町
- 家族構成
- 夫
- 職業
- 爆走SAKI
saki.yoga.salon
宇宙食開発
- Webサイト
- https://www.splitte.com
- https://www.instagram.com/sakiyogasalon/
世界で最も過酷と言われる砂漠マラソンを完走したランナーであり、吉本興業に所属する「大分県住みますランナー 爆走SAKI」として活動しながら、フィットネスサロン「saki.yoga.salon」や国東市の素材を活かした宇宙食の開発を手がける経営者でもある河原さん。東京から大分市を経て国東市へ移住した彼女に、移住に至る経緯や現在の暮らしについてお聞きしました。
マラソンをきっかけに人生が激変
東京で育った河原さんは大学を卒業後、会計事務所で経理事務として働いていたそうですが、ひょんなことから運命の歯車が動き出したそうです。
河原さん : 雑誌のモデルで、初心者が半年間でホノルルマラソンを走るという企画があり、ランナーとしての活動をスタートしました。その後、3週連続でフルマラソンを走破するなど様々な大会に出場し続け、いつしか爆走SAKIと呼ばれるようになりました。
そんなある日、祖母の家がある下関市で開催されたマラソンの打ち上げの際に、共通のラン友(ランニング仲間)を通じて、大分市から出場していた今の夫と出会い意気投合し、交際を始めて6ヶ月で結婚。2014年に大分市に移住しました。
大分市に拠点を移した後も、ランナーとして活動を続けた河原さん。元々運動音痴で早くは走れないのですがゆっくり距離を伸ばして楽しんでいるそうで、42.195kmでは物足りなくなり、100kmのウルトラマラソンも完走。そして、より過酷な砂漠の大会へ出場するに至ったそうです。
河原さん : 砂漠ランナーとして初めての挑戦は、2018年にモロッコで開催されたサハラ砂漠マラソンでした。7日間分の食料や着替えなど必要な装備を背負って、砂漠や崖がある過酷な環境を走るサバイバルレースです。当然ですが水は貴重なので少量しか使えず、電気やお風呂はありません。睡眠のために運営側でテントサイトを用意してくれますので、男女関係なく7人で川の字になって寝ます。サイト内にトイレは一箇所しかないですし、レース中はそれすらもないので、自然の中で済ませます。命懸けで戦い、野生に還る感じです。7日間で250kmを完走できました。
あまりの過酷さに二度と行くものかと思ったそうですが、帰国すると次第に恋しくなり、再び砂漠に挑戦したそう。
河原さん : 二回目は2019年にチリで開催されたアタカマ砂漠マラソンに挑戦しました。サハラ砂漠マラソンと同様に、食料や寝袋など重さ十数キロのリュックを背負ながら、昼は灼熱・夜は氷点下になることもある砂漠を走る過酷なレースです。他の砂漠とは違い、アタカマ砂漠は高度3000mの高地にあるため、高度順応が必要という特徴があります。私は高山病に罹ってしまい、頭痛や固形物が摂れず激痩せするなどの症状に苦しみながらも、7日間で250kmを完走しました。
この高山病があまりにも辛くて、どうせ死ぬなら美味しくない携帯食はではなく肉や魚などを食べたいと思ったことがきっかけとなり、マラソンでも食べれる美味しい携帯食をいつか作りたいと考えるようになりました。
大分市から国東市へ
マラソンを始めた後にヨガのインストラクターの資格を取ったので、大分市に移住してから本格的にフィットネスの仕事を始めた河原さんでしたが、予想外の事態に見舞われます。
河原さん : 新型コロナウイルス感染症の影響で、フィットネスが影響を受けたり、夫が営んでいた飲食店が閉店するなどがありました。どうせなら好きなことをしたいと考え、仕事のために移住することにしました。
竹田市の久住山にあるペンション運営や高知県のジビエの加工業などが候補に挙げがったものの、最終的には国東市に移住した河原さん。
河原さん : 携帯食の開発を手掛けたい想いがあり、高知県のジビエ加工には興味を持ちましたが、砂漠ランナーとして活動する際にクラウドファンディングなどで大分のみんなに応援していただいたので、大分県から離れたくないとも思いました。
そんな中、テレビで「大分空港がアジア初のスペースポートに認定」というニュースを見て、大きな可能性を感じて空港がある国東市に移住を決めました。携帯食は防災食・昆虫食・キャンプ飯、そして宇宙食に通じるものがあります。国東市には美味しい食材が多いですし、宇宙港として開港されることで話題性も高いと考えました。
こうして再び移住した河原さん。当初は勉強のため地域おこし協力隊として活動したそうです。
河原さん : 2020年6月からくにさきOYSTERで一次産業を体験しながら1年8ヶ月ほど学びました。卒業後は、国東市の美味しい食材を活かして6次産業化を目指そうと起業支援補助金を活用して起業し、特産品であるタコに着目し水産加工会社に打診して1年間開発を続けた結果、大分唐揚げ味・スパイスと宇宙をかけたスペイシー味・かぼす味という3種の味を持つ「宇宙タコ」の開発に成功しました。
いずれはJAXAの宇宙日本食認証を目指したいと言う河原さん。当面は大分空港のショップやアウトドアショップ、防災ショップ、自衛隊や官公庁に販路を拡大したいとのことです。
持ち前の行動力で自らの想いをカタチにした河原さん。新たな活動にも取り組んでいるそうです。
河原さん : 吉本興業からお声かけを頂いて、2021年10月から「大分県住みますランナー 爆走SAKI」としてエージェント契約を結び、BSよしもとチャンネルで自身の取り組みをはじめ、国東の自然や文化などの魅力を発信しています。更には、吉本興業と国東物産株式会社と私で「宇宙たこプロジェクト」として宇宙食開発を続けています。
豊かな自然に囲まれて
今年に入り国東市安岐町にて、重力を軽減し天井に手がつくほど高くジャンプするという非日常的な運動を通じて楽しく遊びながら体力をつける「バンジーフィットネス」と、ハンモックに包まれながら色々なポーズをとることで体を柔らかくし可動域を広げ体幹を鍛える「エアリアルヨガ」を体験できる「saki.yoga.salon」を開業した河原さん。物件を見つけ開業に至るまでの経緯をお聞きしました。
河原さん : 空き家バンクや不動産サイトで探しましたが、最終的に中古店舗をサイトで見つけ、周辺環境の良さが決め手となり、国東市のあったか家族マイホーム新築・購入応援奨励金を活用して購入しました。元々は商店だったのでリフォームをして、ヨガ&フィットネススタジオ兼住宅にリフォームしました。私はマラソンで体を痛めますが、バンジーフィットネスとエアリアルヨガを通じて、思う存分メンテナンスしています。
山や田畑に囲まれ景色が素晴らしい自然が豊かな場所ながら、大分空港から車で15分とアクセスが良い場所にあります。
また、田舎で家と家が程よく離れているため、音楽を大音量で流せる点もお気に入りです(笑)。休日には、スタジオの白い壁にプロジェクターで大好きなアーティストの映像を流して楽しんでいます。
現在の暮らし
都会での生活と違い、のんびりマイペースにやりたいことができて幸せと話す河原さんに、現在の暮らしについてお聞きしました。
河原さん : 家の周りの長閑な景色に日々癒されています。星空やホタル、季節ごとの美味しい食べ物等、楽しみが沢山あります。余暇は大自然の中を走ったり、国東の山々に登ったりと満喫しています。
インターを通れば大分市まで車で1時間で着くなど、交通の利便性が高いと感じています。大分市在住のヨガの生徒さんがよく遊びに来てくれるほどです。東京の実家に月一で帰省するのですが、空港が近いので楽です。別府市からフェリーで大阪へ行き、宝塚歌劇を観劇することもあります。新型コロナウイルス感染症でzoom会議が普及したことなどもあり、田舎に住むことによる不便さは感じていません。
国東市は市民病院という大きい病院があり、歯科や内科も腕のいい先生がいるので、医療面でも充実していると思います。
地域の方々には、野菜をいただいたり家に誘われたりと、仲良くさせていただいています。よそ者扱いではなく、若い方が来てくれて嬉しいと歓迎されています。近所でランニングしていると「マラソンに出るんだって! 頑張ってね!」と知らない方からも気さくに声をかけられます。
他にも、山ガイドになるために見習いをしているのですが、区長さんが参加するツアーがあると一緒にご案内するなどお世話になっています。
移住先で充実した日々を過ごしていると話す河原さんに、苦労したことをお聞きするとこんな答えが返ってきました。
河原さん : 国東市は中心部しか水道・下水が整備されていません。それ以外の地域はそれぞれボウリングで水を通しています。下水は浄化装置を使用するためメンテナンス代が必要で、都心部の水道代と比較すると高額です。
ガスはプロパンガスのみで、電気代も併せて光熱費も高いと感じます。特に冬は寒いため夏の倍にもなってしまいます。
他にも田舎ならではですが、年間9,500円の区費にはじまり、お祭りなどの行事の度にしめ縄代など様々な名目でお金が必要で、都会に比べてお金がかかります。
とはいえ、これらの困ったこと以上の田舎の良さがこの場所にはあります。大分空港がスペースポートとして本格的に稼働すれば更なる発展が見込まれますし、もっと楽しくなると期待しています。
移住を希望する方へ
これから先の未来に向けて、大きく3つの目標があると話す河原さん。
河原さん : まず第一に、国東市の方をはじめスペースポート関連で訪れるであろう観光客の皆さんに、無重力を味わって頂きたいと考え、フィットネスサロンの運営にしっかり取り組みたいです。
また、色々な方を巻き込んで大きなプロジェクトとなった宇宙食開発について、今後も試行錯誤を重ねながら、大ヒットさせたいと思います。
そして、2023年6月にモンゴルで開催が予定されているゴビ砂漠マラソンを完走したいです。以前完走したアタカマ砂漠マラソンとゴビ砂漠マラソンを完走すると、南極アイスマラソンへの参加権を得られます。4 Deserts と呼ばれる世界4大砂漠マラソンを制覇したいと思います。
砂漠ランナーとして、またフィットネスサロンや6次産業を手がける経営者として国東市を拠点に活躍する河原さんに、これから移住を考えている皆さんへメッセージをいただきました。
河原さん : 私が住む国東市は海あり山ありで、大自然が手つかずで残る風景や、六郷満山文化の歴史、そして、宇宙港という未来に向かって進んでいる、とても魅力的なところです。田舎ならではのスローライフを満喫しつつ、チャレンジの機会も多く、刺激的な日々を過ごしています。
都心からの移住者も多く、様々な分野で活躍されています。深呼吸しにぜひ一度訪れてみてください。
最後に
世界4大砂漠マラソンを制覇できたら、いつか宇宙でマラソンをしたいと夢を語る河原さん。マラソンを起点に生まれた幾多の想いが、様々な苦難を乗り越え、国東の地で結実したように感じました。様々な分野で活躍するであろう河原さんの姿に、これからも注目していきたいと思います。