大分移住手帖

都会の生活から、就農を通じて新たな道へ。大好きな自然に囲まれた田舎暮らし。

Kg

取材者情報

お名前
松尾 究
出身地・前住所
出身地:大阪府
前住所:大阪府吹田市
現住所
国東市国東町大恩寺
年齢
45歳
家族構成
夫婦2人(犬2匹・猫2匹)
職業
こねぎ農家

自然への憧れから、慣れ親しんだ都会で経営者として働く生活を離れ、新規就農して田舎暮らしへ。そんな興味深い経歴を持つ農家の方がいると伺い、ぜひ移住に至るまでの経緯や現在についてお聞きしたいと考え、国東市国東町にある彼のビニールハウスに足を運びました。

松尾さんのビニールハウス

大阪でのイベントをきっかけに移住

福岡県北九州市小倉で生まれ、物心つく頃には大阪府で暮らしていたという松尾さん。知人と一緒にリサイクル商品の買取販売の会社を経営し、都会的な生活を送りながらも、元々街よりも自然の方が好きな事もあり、週に一度は車で田舎の方に出かけていたそう。

松尾さん : 休日の度に色々な地方に足を運んでいましたが、いつしかいっそ田舎に住んでしまおうと考えるようになりました。寒いのは苦手なので、移住するなら温暖な西日本が良いと考えていました。

そんな時、大阪で開催された大分県の就農イベントがきっかけとなり、本気で移住を検討し始めました。ネットで他県の情報も調べましたが、ほとんど大差ない印象でした。

九州との縁と言えば、玖珠町に母方の親戚が営むお寺と祖母のお墓があるものの、それ以外は黒川温泉や由布院温泉に旅行したぐらいで、国東市には全く知り合いがいない状況だったと言う松尾さん。もちろん、農業に関しては全くの未経験だったそうです。

松尾さん : 国東市は大分空港に近く大阪からのアクセスが良いですし、新規就農者に手厚い支援があります。大分県内には大好きな温泉がたくさんありますし、何よりイベントの後に大分県を訪れた際、国東市の地域の方々に親切に案内して頂いて好感を持ち、移住を決意しました。

大阪で出会った交際相手を伴い、国東市で新しい生活をスタートした松尾さん。移住後は国東こねぎトレーニングファームで一年間研修をしっかり受けながら、就農の準備を行ったそうです。また、交際相手の両親を安心させようと、研修中に結婚したそう。

松尾さん : 妻の実家は滋賀県で農家を営んでいるので、その大変さも知っています。義父母に少しでも安心して頂ければと思い、移住後に落ち着いてから結婚しました。

こねぎのビニールハウス

農家として独立

研修制度はあったものの、接客業の経営者から農家への転職のため、仕事としてやっていけるのか不安に感じていたという松尾さん。

松尾さん : 国東こねぎトレーニングファームの研修を経て、国東市が行っている新規就農制度を利用して、大分県のブランド野菜であるこねぎの農家になりました。収入は、大阪の頃よりかなり減りました。ですが、農家はやり方によって収入を増やしていけますので、やりがいを感じています。やるのもやらないのも自分次第なので、自由なところがプレッシャーでもあり楽しいところだと思います。

土壌消毒中のビニールハウス内

現在は就農で独立して3年目の松尾さん。就農後5年間は農林水産省から就農準備資金・経営開始資金が年間で最大225万円交付されるため、その期間内で経営を安定させるために奮闘しているそうです。

松尾さん : こねぎには3段階の評価があり、一番上と真ん中では価格が全く違います。農地の広さ的には問題ないのですが、粘土質で水捌けがあまり良くないため、土に籾殻を入れるなどして土を柔らかくしたり、大分県と国東市に排水を工事していただくなどして、土壌改良を行っています。他にも、連作障害を防ぐために土壌消毒が必要です。自然が相手ですので、研修で習った通りにはいきません。

松尾さんが育てるネギ

理想の家に辿り着くまで

国東こねぎトレーニングファームで研修中の期間は、国東市が用意してくれた物件に住んでいたと言う松尾さん。

松尾さん : 最初の1年間住んだ家は、薪風呂とぼっとん便所に慣れず、近場にある国見温泉 あかねの郷や道の駅などにある公衆トイレを利用しました。改修も可能でしたが、短い期間しか住まないのに費用がもったいないと考え、我慢しました。水道は通っていたもののそれだけでは水が足りず、ポンプで井戸水を汲み上げて賄うのですが、そのポンプが壊れていたのだけは修理しました。

就農する際、改めて物件を探した松尾さんですが、大型犬を飼っており、なかなか条件が合わず苦労したそうです。

松尾さん : 当初は空き家バンクを使用して探しましたが、はじめに大規模な改修が必要な物件が多かったり、農地の近場に物件がなかったり、ペット可の物件が少ないなどで断念しました。

その後、不動産サイトで探していた際に、大恩寺地区に改修工事がほぼ不要で、家の前に広いドッグランがついている物件を見つけ一目惚れして購入しました。都会ではなかなか購入できない広大な敷地面積で、畑や栗・柿の木もあります。これでようやく住環境が整い、安心しました。

ネギを収穫する松尾さん

使用している農機具

国東市での暮らし

移住前は、地域に馴染めないのではないかと不安を感じていたと言う松尾さんに、実際の感想をお聞きしました。

松尾さん : 近所の方とは最初こそ距離を感じましたが、農家だと知って頂くと共に、きちんと挨拶する事や草刈りなどの地域行事に参加するなどして、だんだんと信頼関係を築いて行きました。今では美味しい野菜を貰ったり、作っている野菜をあげたりと、ご近所付き合いが増えました。コロナ禍のため開催されていませんが、お祭りなどもあるそうです。移住の際によく聞くような周囲にうるさく言われる、疎外されるといったトラブルはなく、人との付き合いに関しては良かったと感じています。

農家として周りに迷惑をかけないように、雑草や害虫への対策を行い自分の農地を綺麗に保つなど、松尾さんが日々手抜きせずしっかり取り組んでいるからこそ、受け入れられたようです。

その一方で、田舎ならではの悩みもあるそう。

松尾さん : 農業以外の話ができる友人が欲しいのですが、近所に歳が近くて話ができる人や場所などはなく、交流できずに少し寂しいと感じます。

医療に関しては、今のところほとんど病院に通っていませんが、選択肢が少ないようです。移住前だと少しの痛みでも歯医者に通っていたのですが、移住後は忙しく、まだ通っていません。

移住前と比較すると収入は減ったそうですが、生活のレベルは変わっていないと感じるそうです。

松尾さん : 大阪に住んでいた頃は、マンションの家賃・管理費・駐車場代に加えて、友人と飲みに行く機会などがあり、日々生活するだけでお金が必要でしたが、移住後は家で過ごす事がほとんどのため全くかからなくなりました。

収穫されたネギ

移住を希望する方へ

今後についてお聞きすると、まだ収入のバランスが取れず不安があるため、農地の規模拡大を通じて生産量と収入を増やしていき、経営を安定させる予定だと話す松尾さん。

そんな彼から、ご自身の経験を踏まえて、これから移住を考えている皆さんへアドバイスを頂きました。

松尾さん : 私は何の知識もなく勢いだけではありましたが、不退転の覚悟を決めて移住しました。新しい世界へ飛び込んだ以上は、やるべき事にしっかり取り組みつつ、嫌われないように周りの方々と上手くコミュニケーションを取って、地域社会に溶け込む事が大切です。

自分の考えが強い人でも協調性は重要です。もちろん、やりたい事をやっていいですが、新参者として元々住んでいる皆さんに理解してもらう努力は必要だと思います。

また、年齢の若いうちの移住は特におすすめです。国東市は子育て支援も充実しているし、ご近所さんは若い人が来たと喜んでよくしてくれます。ちなみに、私の住む地域では、50歳代でも若手です。田舎ではどこの地域でも人が減っているので、新たな移住者を歓迎してくれると思います。

就農を考えている方に関しては、少しでも早く行動した方が、各種制度を利用した将来の生活設計が立てやすく、体力もあるので有利かと思います。

私が移住する際には新規就農制度を活用しましたし、国東市の農業関係の担当者に大変お世話になりました。家を購入する際にはあったか家族マイホーム新築・購入応援奨励金を利用しました。移住を検討する際は、候補地にどのような制度があるかなど、あらかじめリサーチする事も大切です。

松尾さんのビニールハウスから車で5分ほどの場所にある武蔵港。

最後に

都会の生活から一転し、大好きな自然に囲まれた田舎での暮らしをスタートした松尾さん。燦々と照りつける太陽の熱で温まったビニールハウスの中、慣れた手つきで作業するその姿からは、農家として新たな土地にしっかり根付いている印象を受けました。これからも松尾さんの精魂込めて育てたこねぎが、私達の食卓に彩りを与えてくれる事でしょう。

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WRITER 記事を書いた人

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株式会社モアモスト 取締役・一般社団法人まち元気おおいた 理事・Pdw 代表として、サイト・DTP・DTMなどディレクション〜制作をはじめ、ライターや撮影などの業務に従事。大分市府内5番街商店街振興組合の理事として、まちづくりにも携わる。

SC-RECS.com・クラブイベントインフォ・SCLS・DubRize・PLay・合同写真展などを主宰し、各種イベントのオーガナイズからDJやマシンライブなどまで展開中。テルミン使い。

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