大分移住手帖

地学に魅せられた博士が選んだのは幅広い地質を持つ姫島村での暮らし。

取材 : Kaori ライティング : Misaki

取材者情報

お名前
堀内悠
出身地・前住所
茨城県つくば市
現住所
大分県姫島村
年齢
42歳
家族構成
猫(ゴン太くん)
職業
おおいた姫島ジオパーク推進協議会職員
Webサイト
https://www.himeshima.jp/geopark/

大分市出身の堀内さんは、筑波大学の大学院まで進学し、計10年の地質研究をしたのちに博士となりました。大学卒業後は茨城県にある研究所で4年間、博士の特別研究員(ポスドク)をしていたそうです。そんな堀内さんから、姫島村へ移住するに至った経緯や、島での暮らしについてお話を伺いました。

福島県の粘土調査

地学の魅力とは?

もともと自然が好きで山岳部、地学部に入っていたものの、高校生の時には思い描いていたほど学べなかったため、大学ではもっと深く研究したいと思っていたという堀内さん。

堀内さん:高校は理系科目が選択で化学と物理しか学べなかったので、大学では生物か地学どちらかにしようと考えていて、地学を選びました。

フィールドワークできるというのが地学の魅力でもあると語ります。基本は地質図を作るために山を歩いて、見つけた石を調べて回るそうです。

南アフリカでのアリ塚調査

石を見分けていきながら地質図を作っていくように、地層も見分けることができるのか尋ねてみました。

堀内さん:そうですね。大体地質は地層になっていて、この地層がここにあるなら、次は向こうにこんな地層があるだろうと推理しながら進めていきます。パズルのような感じで楽しいですね。基礎的な研究はマップを作ることだけど、さらに研究を進めていくとひとつの石を研究し始めます。なぜ、その石がそこに来ているのかなど深く掘っていくようになりますね。

タイ留学中のフィールドワーク

ふるさとの暖かさに触れたくて

海が好きで生物の研究がしたいとの思いから、大学院を休学し水族館で2年働いたこともあり、宿直中の点検周りでは魚の生態が見られるため、一番楽しい時間だったと話します。

ふるさとから離れた土地での生活が長くなるにつれて孤独を感じ、ふるさとの暖かさが恋しいと思うようになっていたそうです。

堀内さん:もともと大分に帰って仕事をしたいという思いがありました。ポスドクは任期が決まっているので、研究員としての期間が終了するタイミングで大分に帰ろうかと考えました。就職が決まらなければまだ向こうにいたかも知れないですね。

大分での就職先を探す際、大分地質学会の会長さんの紹介で県内からいくつか声を掛けてもらい、その中から姫島村を選んだと話します。役場採用だったため、家探しなどは全て役場が手配してくれたものの、移住制度は利用できなかったそうです。

水族館勤務時代の堀内さん

下関の水族館で働いていたこともあり、周防灘が近くなんとなく馴染みがあった姫島村に決めたと言います。

堀内さん:海好きだったことも姫島村を選んだひとつのきっかけになりましたね。

時と自然の希跡ジオパーク「天一根」内の展示室

想像と現実のギャップ

姫島村には、中学1年生で新しい自転車を買ったタイミングで父に誘われ、大分市から約90kmを自転車で行ったことがあるとのこと。また、大学院の夏休みに研究室にいた留学生を連れて、姫島村の盆踊りに行ったこともあったそうです。

堀内さん:大分市から自転車で別大国道を通り、国東半島を回って姫島村まで行ったのが最初の思い出ですね。父がアウトドア好きで、歩いて玖珠町まで行ったり、大分県内の山登りに結構連れ出されたりしてましたね。父と一緒に出かけていたことがきっかけで、自然と地学に興味を持つようになりました。

実際に移住してみてどう感じたか聞いてみたところ、想像していた島暮らしとはかけ離れていたそうです。都会と比べて人とのつながりは濃いものの、暮らし自体はほとんど変わらないそうです。不便さもなく、苦労を覚悟しての移住だったため「もう少し苦労してもよかった。」と話されていました。

堀内さん:住んでみてのギャップは大きかった。「不便な暮らし」を想像していたら、都会とほとんど変わらない暮らしでした。飲水にも苦労するような生活をイメージしていましたが、井戸水じゃない時点で、あれ?って思いました。

地元の中学生がジオパークについて学んだことをまとめた「ハガキ新聞」

よそ者からの脱却に苦労した

姫島村の暮らしにはあまり苦労はなかったと話す堀内さんですが、移住するにあたって大変だったこともあったようです。移住者のため「よそ者」という感覚があり、住民のコミュニティに入るときは苦労したそうです。

堀内さんおすすめスポットの観音崎

堀内さん:島ならではの絆の強さは、いいところですよね。会う人全員に腰掛けではなく、姫島村に移住してきたということをわかって欲しくて、「村役場の職員」であることをしっかり説明して回りました。

また、近所の役や当番などに関しては年配の方がいろいろ担ってくれているため、堀内さんが必ず参加しなければいけないものは年に2回程度だそう。それ以外に地区の行事や盆踊りなどがある時は、地区に入っていけるよう積極的に手伝いをしているようです。

堀内さん:結婚していない人や子供がいない人は婦人会に入れないと聞いたので、それは寂しいなと感じています。今後もずっと姫島村に住み続けたいと思っているので、老人クラブに入れる時を楽しみにしています​​(笑)。

また、姫島村に移住するにあたって堀内さんも苦労したように、できるだけ住民の中に入っていく努力が大切だと言います。

堀内さん:特に人好きさんにおすすめで、自分をさらけ出せないと難しいかなと思いますし、繕おうとしても見破られちゃいますね。自然体でいられる方が、親しくなれるスピードも早いと思います。あとは…私は目立たないようにしています。結局目立つんですけどね。

島暮らしと言うことで年配の方も多く、人の生死がすごく身近にあるため喪服が必須とのこと。都会ではあまり感じなかった、生まれたり亡くなったりを感じることが多くなったと言います。

堀内さんの働く「時と自然の希跡ジオパーク『天一根』」

色々な切り口から姫島村を魅せていきたい

おおいた姫島ジオパーク推進協議会では、研究者が研究したことを住民にわかりやすく紹介したり、観光や勉強に行きたい人がいれば、教育観光に同行してくれるそうです。

堀内さん:現在ガイドさんを養成中で、依頼があれば山の​​散策をしながら地形の話をしたりできるツアーも行っています。

今後チャレンジしていきたいこととして、姫島村の魅力でもある地層や地形、文化や人の暮らしも含め、色々な切り口から姫島村を見せられるような仕組みを作っていきたいと考えているそうです。

堀内さん:興味を持つことというのは人それぞれなので、ひとつの姫島村だけど、その人に合った切り口で姫島村を紹介できるようになりたい。個人的には海が好きで、例えば海水浴場の砂浜には砂の中にウニがいたり、アマモが生えていたりするので、そういう面白いツアーもやりたいです。

堀内さんの姫島村の楽しみ方

最後に

堀内さんのように、島暮らしは不便なことが多いと思っている方も多いかも知れません。しかし姫島村は生き物や海、山など自然がとても多い中で、都会とあまり変わらない暮らしができます。自然の中でのんびりと、地域のみんなと和気藹々とした暮らしを考えている方は、ぜひ姫島村を訪れてみてはいかがでしょうか。

WRITER 記事を書いた人

取材 : Kaori ライティング : Misaki

取材 : くろき かおり
豊後大野生まれ豊後大野育ち。高校卒業後は横浜・東京にて、外資コスメ会社で経営学・マネジメントを学ぶ。その後、石垣島・オーストラリアへの移住。オーストラリアでも同ブランドで勤務したのち、2019年に大分へUターン。現在はフリーランス。趣味は映画を見ること・旅行・サウナ。

ライティング : あべ みさき
東京生まれ大分育ちで、趣味は手芸。介護福祉士として働き、長男出産を機に退職。現在は、子育てをしながら在宅でライターとして働いている。

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