大分移住手帖

自然豊かな姫島村のために一次産業の復活を願って起業。

取材 : Kaori ライティング : Misaki

取材者情報

お名前
小岩直和
出身地・前住所
愛知県名古屋市
現住所
大分県姫島村
年齢
45歳
家族構成
妻・中3男子・小5男子
Webサイト
https://oita-himeshima.jp/

中学までを姫島村で過ごし、実家の造船業の勉強のために広島県内の専門学校に通った小岩さん。現在は「株式会社おおいた姫島」を設立し、卸や加工の仕事をしています。専門学校卒業後の生活や姫島村へ帰ってくるまでの経緯、現在の姫島村での生活についてお話を伺いました。

お店のトラックと姫島村の海

姫島村でもマリンスポーツがしたい

専門学校卒業後、名古屋で過ごし、早めに実家を継ぎたいとの思いから姫島村へ帰ってきました。

小岩さん:専門学校では勉強が主で、卒業後はヨットやタンカー、リゾートのダイビングショップなど海に纏わる仕事に就く人が多かったです。私は実家が造船業だったから舟艇を専門に学びました。卒業後は山も海もある名古屋で、派遣の仕事をしながらウィンドサーフィンやダイビングをして遊んでいました。

姫島村でマリンスポーツが出来たらと考え、ジェットスキーを買ってバナナボートで遊べるように検討したそうですが、お金がかかり難しかったと話します。水上バイクを使うためのルール作りに、3年ほどかかったそうです。

人気商品の「島のたこみそ」

事業設立のきっかけ

一度県外に出ていたものの、20代で姫島村に帰って家業を継いだ小岩さん。まだ県外で遊びたかったという思いなどはなかったのか伺ってみました。

小岩さん:まだまだ遊びたいという気持ちはあったものの、島にいながら遊びに行く方が良いのかなと思いました。名古屋にいた頃に「都市部の生活は無限にお金を使ってしまう」という感覚があったからそう考えるのかもしれません。

帰ってきてからは実家を継ごうと決心したものの、ご自身と親でやりたいことが異なり、ハードルが高いと感じていたそうです。それでも一次生産者が衰退している状況に加えて、造船の仕事が減ってきていることを受け、一次生産物を売った方が良いのではないかとの考えから行商を始めました。

小岩さん:デリバリーキッチンを始めたのが30歳の頃で、大分市内のトキハインダストリーグループのお店の前や街中のイベントで、販売を始めました。そこでは姫島村で採れたひじきなどの海産物や車エビバーガーを売るのと同時に、百貨店での催事販売も始めました。それだけでは生計を立てられないので、杵築市内にアパートを借りて派遣の仕事をしながら販売する状況でした。

「株式会社おおいた姫島」の店舗

2015年に設立した株式会社おおいた姫島では、県内にある道の駅、空港、トキハに加えて、日本橋の三越、高島屋、伊勢丹でも商品を売っているそうです。事業設立にあたって、小岩さんが行ったことについて伺ってみました。

小岩さん:百貨店は高単価商品しか置くことが出来ないけれど、スーパーは低単価商品を置くことが出来ます。そこで、漁師が売れないと判断して捨てていたような魚も買い取って加工して販売するようにしました。そうすることで、0円だったものが100円にでもなれば少しは足しになるだろうと考え、漁師のための出口を開けることが出来たと感じます。規格外の商品などを漁師から買って加工したい、売りたいと言うのは理想で、できなかったらただ口先だけの綺麗事になってしまいます。だから先に風呂敷を広げて、出口を作って勝手に自分が苦労すればいいと思っています。

大分市内にある新鮮市場新川店の「揚げたて屋」

姫島村には可能性がある

姫島村が好きかとの問いに小岩さんは「好き」とすぐに答え、続けて「好きとか嫌いと言うより、『責任感』が強い」と話してくれました。

小岩さん:「好き」と簡単に言うのは嘘っぽく聞こえてしまうけれど、姫島村には見方ややり方次第で可能性があると思います。衰退しているものを見て見ぬ振りするのは簡単だけど、誰かがしないといけない部分は必ずあって、そこを担っていこうと思っているんです。そうすることで、生産者が少しでも楽になれば嬉しいです。どうやって観光につなげていくかを考えていくと、ハードルがすごく高くなってしまうから、小さいチームがいっぱいできたら良いなというイメージでいたら楽だと思います。

例えば、豊後大野市でいうサウナの取り組みとかですね。それだけが良いっていうわけではなく、取り組みをしている人たちがたくさん増えていけば良いと思うんです。姫島村でも姫島エコツーリズムなどの取り組みがあって、外から見て島が盛り上がっているように見えていればそれで良いのではないでしょうか。小さな島でも全部をまとめるのは大変で疲れるし難しいことだから、自分たちにできるパフォーマンスで力をつけて、お金を稼いでから考えようと思います。

イベント参加時の様子

姫島村は住みやすい

都会と田舎の生活を比べた時のメリット・デメリットを伺ったところ、圧倒的に田舎の方が住みやすいと答えてくれました。

小岩さん:一般的に便利不便をコンビニがあるかないかで決めたりするけれど、圧倒的に島の方がお金を使わず住みやすいし、楽しさの価値が違うのかなと思います。基本的に、都会はコンビニに行くことが習慣化されているんですよね。田舎は創出することが出来るけど、都会は与えられたもので遊ぶというイメージがあります。島を出てた頃はカラオケやお店にご飯を食べに行くっていうことが多かったけど、島では自分たちで持ち寄ってバーベキューをするっていうゲーム感覚みたいな感じに変わりました。

また、今後の課題として島の子どもたちの学力を向上させるために、zoomを活用するのも良いと思うと話してくれました。姫島村であればプログラミングができると言う呼び方をするなら、住みやすいし良いのではないかと言います。また、今後やりたいこととして「姫島村の問題は全国の島の問題」であり、おおいた姫島モデルができたら、他の離島の課題も拾い上げて行きたいと思っているそうです。

小岩さん:九州の建築士にリノベーションを頼み、広報の得意な人たちに新しい島のビジネスモデルを宣伝してもらって、オーナーや島にきちんとお金が入るような仕組みをみんなで作ることが大事なのではと考えています。田舎では「稼ぐのが悪」「あそこばかり儲かって」みたいな部分があるけれど、稼がないと雇用が維持できず帰ってくる人や場所も残せませんし、稼ぐのがかっこいいと言う概念があっても良いと思うんです。島は経済効果を上げる必要があるため、どうやってファンを呼んでいくのかが大事じゃないかと考えています。

姫島村が誇る天然のあおさ

まずは一度、姫島村に来てみてほしい

姫島村への移住を考えている人に対して、アドバイスをいただきました。

小岩さん:ぜひ来てほしいけど、コミュニティ作りは難しいと思います。極論、コミュニティ作りを諦められる人、一人でも生きていけるくらいの人の方が向いているのではないでしょうか。田舎はご近所さんが仲良くしてくれるなどの過度な期待を持ってから来ると疲れると思うんです。島への移住は、誰が対象なのかによって変わって来ます。子育て環境は良好で、村から守られて近所の人に預ける事も出来るからその間仕事に集中できたりします。コミュニケーション能力が高くて、周りにも挨拶ができれば、住民とすごく仲良くなれると思います。良し悪しは人それぞれですが、苦手でも良いです。田舎ならではの全ての情報が筒抜けになると言うのは、見え方によって良くも悪くもなります。干渉が苦手な島民にスポットを当てて、多様なライフスタイルがあるっていう紹介も必要かもしれませんね。

とにかく純粋に、気負う必要はないから一回来てみて、合うか合わないか体験して決めたらいいと思います。テスト的に村営で移住体験ができるような泊まるところがあったら良いですね。移住に関しては村役場が色々対応してくれるので、安心できると思います。

大分市公設市場にて

最後に

一次産業を復活させていきたいとの想いから事業を始めた小岩さん。姫島村出身だからこそ住民の生活や島の今後の発展までを考える姿勢や、近所の方と気さくに話す姿から、真面目で優しい小岩さんの人柄を感じました。お話を伺う中で、自然豊かな街並みに美味しい特産物、住みやすい環境など姫島村の良さを改めて知ることができました。周りの人との信頼関係を築いていくことで、より豊かな島生活が送れるのかもしれません。

WRITER 記事を書いた人

取材 : Kaori ライティング : Misaki

取材 : くろき かおり
豊後大野生まれ豊後大野育ち。高校卒業後は横浜・東京にて、外資コスメ会社で経営学・マネジメントを学ぶ。その後、石垣島・オーストラリアへの移住。オーストラリアでも同ブランドで勤務したのち、2019年に大分へUターン。現在はフリーランス。趣味は映画を見ること・旅行・サウナ。

ライティング : あべ みさき
東京生まれ大分育ちで、趣味は手芸。介護福祉士として働き、長男出産を機に退職。現在は、子育てをしながら在宅でライターとして働いている。

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