大分移住手帖

自由な働き方ができる環境を持つ佐伯市で、不便さえも楽しむ暮らし。

取材 : Kaori ライティング : Misaki

取材者情報

お名前
富崎一真
出身地・前住所
福岡県福岡市
現住所
大分県佐伯市
年齢
36歳
家族構成
独身

熊本県八代市の高校卒業後、東京都や福岡市で働いていた富崎さんは、現在佐伯市で回転焼きのお店を営みながら、地域のためにさまざまな活動をしています。そんな富崎さんが、佐伯市への移住を決めたきっかけや現在の生活についてお話を伺いました。

富崎一真さん

クリエイティブな仕事に憧れた

高校卒業後は八代市を離れ、東京都で12年間働いていた富崎さん。職場以外での繋がりが欲しいと思い、SNSのオフ会に参加し、朝まで呑むことがあったと話します。その際、ワークショップやデザインなど、クリエイティブな仕事をする人に会うことが多く、憧れを持ったそうです。

富崎さん:東京都にいた頃はガス関連の仕事をしていたのですが、資格を取り自分の仕事への納得感を得るために、国家資格を取りました。しかし、仕事を深く理解した頃に「このままでいいのか?」と思うようになり、30歳で仕事を辞めました。

仕事を辞め、福岡市に引っ越し通信販売の会社に入社したものの、思っていたものと違っていたと話します。

富崎さん:ビジネスが向いていないのか、口八丁手八丁で売れる人が強いという業界の常識に慣れませんでした。自分は本当に良い物をきちんと売りたかったのですが、大したことないような物をいかに良い物であるかのように売るという業態に馴染めず、精神的に続けられないと思い、辞めました。

その後、福岡市で友人と共にイベント会社を作ったのですが、新型コロナウイルス感染症の時期と重なり、全ての仕事がキャンセルになりました。緊急事態宣言の中、先の見えない状況に耐えながら続けていく自信がありませんでした。また、祖父が亡くなったり母が倒れたりしたことをきっかけに、実家のことも多少心配な部分があり、ある程度自由に身動きが取れる状態で生活したいと思っていました。

仲間との食事会

佐伯市は自由な働き方ができる場所

そんな中で、佐伯市への移住を決めたきっかけについて伺いました。

富崎さん:仕事がないため収入が無く、このまま家賃も人口密度も高い地域には住み続けられないと思いました。自粛期間でどうする事も出来ないと気分が落ち込んでいた時、佐伯市に住むという選択肢が出てきました。これまで友人の大工仕事に付いて行っていた程度の関わりしかなかった佐伯市ですが、街づくりが盛んな印象があり興味を持っていて、何度か訪れる中で顔見知りや知り合いも出来ていました。元々田舎に興味があり、更にものすごくお金を稼ぎたいわけでもなく、がむしゃらな働き方が合わないことや、勤め人として右に倣えができない自覚もあり、街づくりが盛んな佐伯市であれば自由でコントロールが効く働き方ができるのではないかと感じ移住を決めました。

移住して実際に住んでみて、不便に感じることについて伺ってみました。

富崎さん:法人登記の手続きなど、オンライン申請ができない場合は大分市に行かないといけません。佐伯市内であれば自転車で行けるのにと思います。面積は大きいけれど、街自体は小さいためか材料の配達も「佐伯市には週2回しか配達に行けません」「時間がかかります」と限定的なので、飲食店以外の仕事もしつつ自分のスケジュールと仕入れのリードタイムを常に考えないといけません。

また、田舎に住み続けるというと、個人的には相当な覚悟と我慢や諦めのようなものが必要だと思いましたので、多拠点の生活が理想だと考えています。小規模な市町村では能動的に事業を起こさないと、充実感を持って仕事に従事するというのは難しいと思います。

田舎は不便で意外とお金がかかると感じた富崎さんですが、不便さを楽しみながら生活しているそうです。

富崎さん:車がないと困る地域なので車の維持費もかかります。また、給与水準が低い割に家賃がそこそこ高いので、単純計算すると生活にかかるお金は福岡市内と変わりません。

東京都にいてもだんだん楽しめなくなっていましたが、佐伯市だと気軽にアウトドアを楽しめたりすぐに焚き火ができたり、お金をかけずにぼーっとできるのは田舎の良いところだと思います。居酒屋やビアガーデンに行かなくても、気軽に外で飲めるのが面白いです。都会は呑んだ後に電車を乗り継いで帰宅しますが、今は歩いて行ける距離で楽しめますし、意外と飽きません。

明治大学の学生と佐伯市の街中で焚き火

学生達が佐伯市をもっと知っていけるように

現在、回転焼きのお店を経営している富崎さんですが、塾講師のアルバイトもしていたそうです。

富崎さん:去年の夏、高校生向けのイベントを行った事がきっかけで高校生のための場づくりをしようという事になり、今はその準備を行っています。佐伯市は高校までしかない事もあって、卒業後は約9割の学生が市外に出ていきます。そんな佐伯市ではよく、「佐伯市には何もない」「佐伯市にいてもしょうがない」「つまらない」と言う声を耳にします。大人がそう思っていれば、学生も自然と同じように思ってしまうと思うんです。

お店をやってる事もあり、色々な高校生と話をする機会があるのですが、「高校生が気軽に集まって思い思いに過ごす場所も地域には少ないよ」と言う声も聞きます。地域と関わる場所やきっかけが少ない中で「何もない」という認識のまま県外に行った時に、地元の事を聞かれて「佐伯市だよ」「どんな場所なの?」「何もないんだ」となってしまうかもしれないと考えると、少なからず佐伯市を面白いと思って移住した身からするとすごく勿体無いと感じてしまいます。なので、地域と繋がって地域の面白い人や事をちゃんと知った上で何もない地域なのかそうではないのかを判断できればいいなと思い、高校生向けの場を作ろうと決めました。

法人設立を終え、来年度の開業に向けて準備をしているそうで、第3の大人と繋がれる場になればと話されていました。

富崎さん:高校生が地域外に出るのを抑止しようと思っているわけではなく、むしろどんどん出て行って良いと思ってます。市内に住んでいなくても地域のことに興味を持っていたり気にかけていれば、緩くても繋がり続ける事ができます。結果として、色んな経験をして様々な分野で活躍出来る人が地元に愛着を持って関わってくれれば、以外とその方が地域にとっても良い結果に結びつくこともあると思っています。

また、独立や転職のタイミング、地元に戻りたいという想いを持っている場合に、地域で面白い活動をしているような大人と関わった経験があれば、その人に相談することで新しい道が開けるかもしれません。地元に残って欲しいと言う気持ちも全く分からないわけではありませんが、そういう発言は時として地元を裏切ってしまったと思い学生を悩ませてしまう事もあります。なので、様々な可能性を知るきっかけや、地元に残らなくてもポジティブに繋がり続けられるきっかけを作ることが出来たら良いなと思っています。

楽しそうに話をしてくれる富崎さん

地域性が自分に合うと感じた

佐伯市を深く知って欲しい、良くしていきたいという想いが強い富崎さん。地元に戻って同じような活動をするという考えがなかったのか伺ってみました。

富崎さん:単に、八代市には愛着がなかったからです。佐伯市よりも人口が多く、九州自動車道や新幹線もあるので、福岡市まで1時間以内で行ける距離だと考えると、地元に帰った方が便利ですしお金はかかりません。でもどんな人がいるのか知りませんし、どんなことをやっている地域なのかも分からないため、地元で何かをやるという考えに至りませんでした。

それでは、なぜ佐伯市では地域のために活動していきたいのでしょうか?

富崎さん:まず、無職の大人でも受け入れてくれる雰囲気があったのでが面白いと思いましたし、遊びに来た時に勢いを感じたからです。人口が減っていく中で、他の地域よりもなんとかしようという思いや危機感が市民の中に少なからずある気がしていて、「ちゃんと考えて面白いことをしようとしている人は応援しよう、とりあえずやらせてみよう」という雰囲気を、今住んでいる地域から凄く感じます。

普通に会社員として働くことができない自分には丁度良いと思いましたし、2年前のタイミングで佐伯市に来ておかないと、今盛り上がってるムーブメントに乗り遅れて、悔しい思いをしたかもしれません。田舎は他にもあるから、地域おこし協力隊を募集してるとこにまずは行ってみたら?と友人には言われましたが、なんか違うなと思ったので、多少大変でも「波に乗っておこう!」と佐伯市に来ましたが、自分の直感は間違っていませんでした。

丹精を込めて回転焼きを作る富崎さん

地域に入り込んでいくのが今後の課題

移住前に周りから「地域を良くしようと言うのは、人によってお節介だと思われてしまうし、求められていないのにそれだけを考えて仕事をしていると潰れるよ」と言われていたものの、気になる部分が多くあると話します。

富崎さん:自分が楽しいことや達成したいことをした結果、地域のためになったと言うような結果論でいいと思っていました。しかし、いざ地域に来てみると、「こうした方が良いのに」「こうすればもっと良くなるのに」というのが見えてきて他ので、仕事以外の事やお願いされてもいないことには出来るだけ手を出さないように努力しています。

変えた方が良いところなどが見えてきてしまうし、無駄だなと思うところを我慢しないといけない場面も沢山あるので積極的に関わるのは辛いなと思います。既存のシステムを変えてしまうのは凄く労力が必要ですし、対立してしまうからおすすめはしません。私は上手く立ち回るのが不得意なので、自己実現との葛藤をどう折り合いつけていくかは結構悩ましく、調和を乱さない方法で折り合いをつけられるようになるのが課題です。

新型コロナウイルス感染症の流行する中での移住で、地域に入り込めていないという実感があり、今後の課題だと感じているそうです。

富崎さん:良い意味でも悪い意味でもあまり多くの人と深く関われていないと思っています。引っ越してきた当初は無職だった事もあり、認識されてはいるものの「誰だろう?」「何やってる人なんだろう」という感じになっていたと思いますが、きっかけとなるお祭りや飲み会などもなかったのでタイミングを逃してしまいました(笑)。なので、分かりやすいことをするというのは、地域に入っていくために大事なのかなと思います。月1回でも週1回でも全然知らない地域や地元ではない場所に行って何かをやるなら、分かりやすい肩書きがあった方が知り合いも増えるし、一気に面白くなると思います。回転焼き屋をやっているというのは話のきっかけにもなると思うので、そういう意味でも頑張っています。

移住した際に「満足したら他のところに行けばいい」と思っていたと話す富崎さん。移住を手段として捉えているので、目的にしてしまうと移住したら終わりなとなってしまい、途端につまらなくなってしまうのではないかと話します。

富崎さん:不便ではありますが、目標があれば気になりません。移住を目的にしていると、ネガティブに感じる場合がありますが、手段だとすれば目的を達成するためなので「それはそれ」とポジティブに考えられます。

ただ佐伯市に住みたいだけだったら福岡市に帰っていたと思います。何かの事業をするとか目標とかを無しにして、仕事とお金が同じ条件であれば、福岡市に住みたいです。ただ今は成し遂げたいことができて、それが佐伯市だから自分に合っていたと思います。自由に自分の仕事をしたり、飲食店経営の経験が無いのに場所を貸してもらえたりするのは、ある意味、東京都に居た時に感じたクリエイティブな仕事や自由度のある仕事が出来ていると思っているので、今の生活に不満は無く不便な部分も許容できています。

企業でLEGO®︎シリアスプレイ®︎のワークショップをした際の1枚

目標があった方が楽しい

移住を考えている人へのアドバイスとして、目標を持つことで、地域の人が見落としている魅力や可能性に気付けると話します。

富崎さん:例えば、地元の人にとっては当たり前の存在になってる瀬会の海も、波の音を聴きながら仕事をすると凄く捗るということに気付きました。「何かしてやろう」「こういうことを叶えてやろう」「資源を活用したい」と思っている人の方が色々目につくと思います。

また、田舎では家賃が高かったとしても、使っていない場所があったり敷地が広かったりするので、事業などを始めるのにコストを抑えられる場合も多いと思います。結果、チャレンジの回数や手数が多くなるので、そう言う意味では面白いと思います。上手く場所を活用すれば、低コストでプール付きの家やツリーハウス、海の近くに住むなどの夢も叶うのではないでしょうか。

大分県主催「旅する学校おおいた」の卒業式

最後に

色々な仕事をしながら、佐伯市で自分に合うものを見つけた富崎さん。地元ではなく佐伯市の良さに惹かれ、地域の活性化に注力する姿に感銘を受けました。田舎ならではの不便さを楽しむことができるのは、彼が言うように目標があるからなのかもしれません。自由な働き方を認めてくれる地域性を持つ佐伯市で、夢の暮らしを考えてみてはいかがでしょうか。

WRITER 記事を書いた人

取材 : Kaori ライティング : Misaki

取材 : くろき かおり
豊後大野生まれ豊後大野育ち。高校卒業後は横浜・東京にて、外資コスメ会社で経営学・マネジメントを学ぶ。その後、石垣島・オーストラリアへの移住。オーストラリアでも同ブランドで勤務したのち、2019年に大分へUターン。現在はフリーランス。趣味は映画を見ること・旅行・サウナ。

ライティング : あべ みさき
東京生まれ大分育ちで、趣味は手芸。介護福祉士として働き、長男出産を機に退職。現在は、子育てをしながら在宅でライターとして働いている。

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