大分移住手帖

努力が報われる仕事を求めて農業の道へ。夫婦二人三脚で育む自然豊かな九重町での暮らし。

Kg

取材者情報

お名前
松田 紘明・清香
出身地・前住所
前住所:福岡県福岡市
出身地:紘明さん 広島県・清香さん 佐賀県
現住所
九重町
家族構成
夫婦2人
職業
トマト農家
Instagram
https://www.instagram.com/matudahiroaki/

頑張った分だけ成果が得られるような職種に就きたいと考えた松田紘明さんは、奥さんと一緒に未経験だった農業の世界へ飛び込んで、都会から田舎へ移住したそうです。そんな松田夫妻から、現在のお仕事や都会との暮らしの違いについてお聞きしたいと思い、自然溢れる九重町を訪ねました。

スノーボードを楽しむ紘明さん

スノーボードを通じて広がった縁

移住するまでは福岡市中心部で生活していた松田夫妻。今とは正反対の暮らしだったそうです。

紘明さん : 博多駅の近くで同棲しながら、私は製造業・妻はアウトドアブランドなどの販売員として働いていました。

清香さん : 仕事が終わったら友達と遊んで食事に行くなどの生活を送っていました。販売員の仕事は天職だと思っていましたし、他も特に不満がなく、私はこのまま都会のマンションなどで一生暮らすのだろうと思っていました。

スノーボードを通じて出会った二人は、都会ではスノーボード中心の生活を送っていたそうです。

紘明さん : 私はスノーボード歴17年目・妻は22年目で、シーズンオフの暖かい時期に働いて稼いで、シーズン中は大会に出場して結果を出そうと頑張っていました。

清香さん : 冬場は北海道や新潟に家を借りて数ヶ月移り住んで、現地で働きながらスノーボードに打ち込み、スポンサーと契約するほど熱中していました。

スノーボードを通じて、九重町に足を運ぶ機会もあったとのこと。当時はまさか住むことになるとは考えもしなかったとのことです。

紘明さん : 移住前から九重森林公園スキー場や登山で訪れる事があり、親しみを感じていました。特に冬になると月に4〜5回ぐらいは来ていたと思います。

充実した日々を過ごしていたお二人ですが、紘明さんが仕事について悩み始めたことが、移住に繋がる転機となったそうです。

紘明さん : 当時の仕事では、自分だけが必死に頑張っても評価が出にくく収入に反映されないという不満や、人の下で働く難しさを感じていました。スポーツをしていたこともあってメンタルは強いですし、自分で頑張った分だけ結果に繋がる仕事をしたいと思いました。周りの友人もカメラマンなどで起業している方が多く、良い意味で影響を受け、自分で考えながら稼げる方法を探していました。仕事を探す中で農業に出会い、頑張ったらその分だけ稼げるのではと思い、半年ほどで決断しました。

また、九重町にいる知り合いの農家の畑仕事を手伝う機会があり、その際に九重町ファーマーズスクールを知り、応募しようと思いました。

清香さん : 福岡での暮らしに不満はなかったのですが、他所で暮らすことにも慣れていましたし、まあ良いか的な感じで賛同しました(笑)。

こうして九重町で就農することになったお二人は、これを機に結婚し、九重町の住宅家賃助成制度空き家活用定住促進事業の引越助成を活用して移住したそうです。

トマトを収穫する清香さん

農作業をする紘明さん

収穫したトマト

トマト農家として独立

2016年からスタートした九重町ファーマーズスクールの一期生として、4月の開校に合わせて移住したそうです。

紘明さん : 元々は米農家をしたかったのですが、広い土地や多種の農機具が必要なため断念しました。スクールではトマトか椎茸について学べたのですが、なんとなくトマトを選びました(笑)。

清香さん : 栽培技術や農業知識の習得のため、夫婦で2年間学びました。卒業後、トマト農家として独立して、現在は6棟のビニールハウスで栽培しています。

仕事について、忙しさに追われながらも充実しているそうです。

紘明さん : 自分の時間はないです(笑)。特に夏のピークの時期は朝から晩まで働き、忙しくて出かける暇はありませんが、仕事が楽しいので特にきついと感じることはありません。畑の周りの集落の草刈りなどにも参加しています。

清香さん : 仕事内容や体力的には特に問題なく、夜遅くなるのも仕方ないかなと。楽しくやれていると思います。

その中でも、自然の厳しさを感じることがあるそうです。

紘明さん : ちょうど熊本地震の時に移住してきたのですが、当時はどこの農家さんも被災しました。災害や大雨が直接生活に関係し、心身共に追い込まれることもあります。天気とトマトの都合で生きています。

また、就農に関しては真摯に取り組むべきだと感じているそうです。

紘明さん : スクールで研修していた際に「少なくとも10年は九重町に定住して欲しい。できれば永住してくれると嬉しい。」と地域の方からお声がけ頂きましたが、私達は最初からどう暮らしていくかをしっかり考えていたので、移住した時点で永住するつもりでした。上手くいかなかったらやめれば良いという人もいますが、農業はそんなに簡単ではないですし、そのぐらいの気持ちだったらアルバイトで良いと思います。

松田夫妻のご自宅

自然豊かな土地

現在は玖珠富士や小国富士の名でも親しまれている涌蓋山の麓の、湯坪温泉から5分ぐらいの場所にある家で暮らしているそうです。

紘明さん : 家は空き家バンクを利用して見つけました。私達が移住した頃は、居住可能な家が一軒しか無かったのですが、現在は増えてきたそうです。自然豊かで四季折々の景観に恵まれた場所です。

地域の皆さんはウエルカムな姿勢で移住者の受け入れてくださいますし、大家さんは凄く気を遣ってくれて「ここに一生住むわけではないだろうから、無理はしなくて良い。」と言ってくださって、隣保班で行う草刈りなどはあまり参加していません。まずは、農家としてしっかりすることが恩返しだと考えていますし、これからは必要に応じて行事などを手伝っていきたいと思います。

清香さん : 7〜8軒しかない小さな集落で暮らしています。大家さんや同じトマト農家の皆さんとのお付き合いや、同じように移住してきた方のご自宅を訪ねたり、一緒に食事に出かけるなどの交流があります。私達の住んでいる集落はお祭りなどの行事は少ないのですが、行事が盛んな地域に遊びに行くこともあります。

また、移住前にスノーボード関係で知り合った方々もいるのですが、皆さんが良く遊ぶ夏の時期は繁忙期のため、なかなかタイミングが合わなくってしまいました(笑)。

買い物などについては、移住当初は不便に感じていたそうです。

紘明さん : 欲しいものが直ぐに買えないのは困りましたが、「住めば都」ということわざのように、だんだん「都」になってきました(笑)。人や環境のせいにはせず、自分達で「都」にしたいと考えています。

清香さん : 最初の頃は不便を感じていましたが、次第に慣れてきて、出かけた際に買い溜めするなどしています。私自身が元々販売員だったため「商品を手にとってみたい」「この販売員さんから買いたい」などの気持ちがあり、ネットはあまり利用していません。

また、都会の生活では味わえなかった自然の変化を感じるそうです。

清香さん : 都会ではただスーパーに商品が並んでいるだけぐらいの認識で知りませんでしたが、旬の食べ物をその季節に楽しむことができます。椎茸や筍を頂くなど、食べ物で四季を感じています。そういう素材を活かし、栗の渋皮煮やお菓子を作るなどして、季節の味覚を楽しむようになりました。

ご自宅から臨む雄大な九重連山

九重町の魅力

「農家になる」ことが最優先で、その結果としてたまたま九重町のトマト農家だった松田夫妻ですが、現在の環境は満足しているそうです。

紘明さん : 自然豊かで何より温泉が豊富です。九重町とその近辺の温泉は他と比べても泉質が豊かでお値段も優しいと思います。自宅から宝泉寺温泉まで車で20分の距離ですし、他にも町内の筋湯温泉湯坪温泉、直入町の長湯温泉、日田市の天瀬温泉、熊本県小国町のわいた温泉郷など、たくさんの温泉が楽しめる地域です。出かけた帰りや疲れた時に利用しています。

清香さん : 朝日と共に起床して夜の訪れと共に寝るという人間らしい生活を送っています。また、都会に住んでいた頃よりも五感が働いていると感じます。ドライブや通勤時に紅葉を楽しんだり、美味しいものを食べたり、阿蘇山で登山したり、長者原タデ原湿原を散歩するなど、季節を感じる暮らしを送っています。家族や友人が遊びに来た際には男池湧水群を案内するなど名所がたくさんあります。もちろん、冬の間は九重森林公園スキー場でスノーボードを満喫できます。

満足度の高い生活環境ですが、不安などを感じることもあるそうです。

紘明さん : 医療面については、病院の少なさや対応などが都会とは違いすぎて大変だと感じました。子育て面では、九重町には幼児教育・保育の無償化などの支援がありますが、園自体の選択肢が少ないと感じています。また、未就学児・小中学生の医療費助成などの素晴らしい制度はありますが、町内には内科や診療所はあるものの小児科専門の医院はありません。

清香さん : のらりくらりの田舎暮らしに慣れたためか、人混みが苦手になってきた気がします(笑)。たまに福岡市などに足を伸ばしますが、人疲れしてしまいますし、歩くスピードが遅くなりました。

結局はなんでも自分達次第だと話す松田夫妻ですが、これからやってみたいこともあるそうです。

清香さん :隣町の日田市や玖珠町、福岡方面に足を伸ばすことが多いため、同じ大分県内でも佐伯市や国東市などはまだ行ったことがなく、もったいないと感じています。これからは色々な場所を訪ねてみたいです。

スノーボードのため、県外に遠征することも多いそう。

移住希望者へアドバイス

九重町で理想の暮らしを送っている松田さん夫妻に、これから移住を希望する方に向けて、アドバイスをいただきました。

紘明さん : 自分がどうして移住したいかをしっかり掘り下げて考えて欲しいと思います。「この町のここが良い」など細かい部分まで調べ尽くして移住すると、現実と想像と何も変わらずに飽きてしまうのではないでしょうか。まして、想像を超えて妄想となると「こんなはずではなかった」となった場合に取り返しがつかないのではと思います。山が好きだから九重町、海が好きだから佐伯市とかある程度振り幅を持たせて移住することをおすすめします。

移住は楽しいことばかりではなく、人との繋がりや地域のしがらみなど、思い通りにならないこともあります。それをいかに自分達で良い方向に持っていくかが大切です。ただ、どんな状況でもそれを楽しめるようにできるのは自分だけであり、すべては自分次第だと思っています。

と言いつつ、私達はなんだかんだまわりの方々に助けられながら、互いに支え合って毎日楽しく過ごせています。

清香さん : 私は事前に何も調べなかったので、移住後も楽しめました。今まで旅行なども計画せずやっていたのですが、ネットで事前に調べてしまうと色々なことが詳細に把握できる時代なので、結果として移住後の楽しみが減ってしまうため、ノリで楽しんだ方が良いのではと思います。

情報を得ることで理想に凝り固まってしまうと、現実とのギャップが生じた際に、どうしようもなくなってしまうのではないでしょうか。例えば、スローライフを望んで移住しても、実際に自給自足に行き着くまではお金も時間もかかります。どんな時でも対応ができるように、臨機応変に考える柔軟さが必要だと思います。仕事をしながら、移住先の良いところを探すぐらいの心持ちで良いのかもしれません。

あと、強いていえば、お金はたくさん貯めておいた方が良いかと思います(笑)。

畑の近くにある桜の下での写真

最後に

取材を通じて松田夫妻が、自然豊かな場所で理想の暮らしを得ることができたのは、夫婦二人三脚でお互い支え合いながら「自分達次第でどうとでもなる」という強い想いを持って行動したからこそではと感じました。「住めば都」というだけではなく、自分達で「都にする」という言葉が印象的で、移住先でより良い暮らしを送るためには、地域に溶け込む柔軟さを保ちつつも、自分達が楽しめるようにライフスタイルを模索することが大切だとお教えいただいた気がします。

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  • 努力が報われる仕事を求めて農業の道へ。夫婦二人三脚で育む自然豊かな九重町での暮らし。
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WRITER 記事を書いた人

Kg

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株式会社モアモスト 取締役・一般社団法人まち元気おおいた 理事・Pdw 代表として、サイト・DTP・DTMなどディレクション〜制作をはじめ、ライターや撮影などの業務に従事。大分市府内5番街商店街振興組合の理事として、まちづくりにも携わる。

SC-RECS.com・クラブイベントインフォ・SCLS・DubRize・PLay・合同写真展などを主宰し、各種イベントのオーガナイズからDJやマシンライブなどまで展開中。テルミン使い。

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