取材者情報
- お名前
- 勝見 萌絵
- 出身地・前住所
- 出身地:山梨県
前住所:東京都
- 現住所
- 大分県速見郡日出町
- 家族構成
- 父、母、姉
- 職業
- おおがファーム
- Webサイト
- https://www.ogafarm.com
- https://www.facebook.com/ogafarm/
東京都内の花屋さんで働いていた勝見さんは、植物の販売や育成だけでなく、幅広く活かしたいと考えて、ガーデンデザインやガーデニングの仕事を志すようになったそうです。そんなある時、SNSをきっかけに運命の歯車が回り始めます。九州に足を踏み入れたことがなかった彼女が転職して日出町に移住するまでの経緯や、現在の暮らしについてお聞きしました。
SNSをきっかけに憧れの仕事へ
小学生の頃、父親の仕事の都合で山梨県から東京都にご家族で引っ越した勝見さん。以降はずっと東京都内で生活してきたそうです。
勝見さん : 農業高校を卒業後、花を扱う専門学校へ進学し、20歳で花屋に就職しました。朝9時から夜9時まで働き、電車で実家に帰り着くのが深夜になってしまう場所だったため、お店から20分ほどの場所で一人暮らしを始めました。都内は公共交通機関が充実していて便数も多くどこにでも行けるので、車は周囲も持っていなかったし、私も必要ないという認識でした。
学生の頃から生産者のところで働きたいと考えていた勝見さん。働きながらも、次第にその想いが形を変えながら膨らんできたそうです。
勝見さん : 花屋を辞める1年前から、植物を育てることに興味を持ち、少しずつ仕事を探し始めました。当初は農業に絞っていましたが、菊農家なら菊を・薔薇農家なら薔薇を育てて出荷するところまでしかない点が、育てた植物を活かして何かしたいという私の理想と違っていると感じていました。ガーデンデザインまで幅広く携わりたかったのですが、なかなか仕事がない状況でした。
そんな勝見さんに、SNSがきっかけで転機が訪れたそうです。
勝見さん : 転職を考えていなかった頃から、Instagramのおすすめで出てきたおおがファームをフォローしていました。ある日「募集があればいいな」くらいの気持ちで何気なくおおがファームのサイトを見たら、たまたま求人が出ていました。
まずは現地に足を運んで実際に見てみようと考えて、休日を利用して2020年6月に訪れました。大分県はおろか、九州も初めてでした。
最寄りの日出町の大神駅からバスもタクシーもなく、歩いて1時間かけて向かいました。移動手段がないことには驚きましたが、初めて見たおおがファームは素晴らしく「ここで働きたい」と思いました。
まだ在職中で、急いで仕事を辞めなければいけないわけでもなかったですし、花屋さんと比較すると収入差があり、実際に踏み出すには勇気が要りましたが、帰京後求人に応募し、面接のために再度訪れました。その際にはレンタカーを借りて日出町を散策するなど生活環境も見て回り、落ち着いた街並みが良いなと感じました。
転職と移住が決まった後に家族に報告したところ驚かれましたが、特に反対などはありませんでした。
転職が決まるまで2ヶ月ほどと短く、こうしてバタバタと日出町に移住して、2020年9月から念願のおおがファームで働き始めたそうです。
勝見さん : 転職のため金銭面に不安があったのですが、日出町は移住支援が整っていて移住応援給付金を利用させていただけたので、お金に困ることもなくスムーズに安心して移住することができて助かりました。
好きなことで働く
おおがファームで働き始めて3年目を迎えた勝見さん。日々の仕事は充実しているそうです。
勝見さん : ガーデニングとガーデンショップの販売を担当しています。植物を植え込む・剪定・管理が主な仕事で、園内にあるレストランで使用するハーブや葉物野菜も育てています。農業高校で学んだ知識を活かすことができ、色々なことが上手い方向に転がっていったと感じています。もちろん、力仕事が多く体力も必要で楽ではないですが、予め想像していた内容だったので、ギャップはなくやりやすくて困ることはありません。
何より実際に働いてみて1番変わったのは、帰宅時間が5〜6時間ほど早くなったことです。家に帰ってからの時間をゆっくり過ごせることが新鮮で楽しいです。
憧れだったガーデンデザインの経験を積みながら、夢を広げていきたいそうです。
勝見さん : 現在、おおがファームでは、地元の方を中心に移住者2人と併せて13人が働いていますが、みんな優しくて色々なことに挑戦させてくれます。
また、元々はクリスマスリースのレッスン教室など様々なイベントがありましたが、コロナ禍で2年間ほとんどなくなっています。ガーデンデザインやイベントを開催できればと考えています。
これからもここで働きながら、様々なことに取り組んでいきたいです。
日出町での暮らしについて
現在はアパートで暮らす勝見さん。仕事が先に決まったため、住む場所に悩んだこともあったそうです。
勝見さん : 転職先が既に決まっていたので、そこから近いところで検討しました。職場が杵築市と日出町との境目だったので、当初はどちらかで悩んだのですが、スーパーやホームセンター、病院などが集まっておりコンパクトで住みやすいところに魅力を感じて日出町に決めました。最初に訪れた時や面接の際に、時間をかけて日出町を散策したので、地理的条件を事前に把握できていて良かったと思います。
物件は地元の不動産屋さんで探してもらいました。移住前の契約で、コロナ禍の外出自粛があった時期で、物件を探すために東京都と大分県の行き来が何回もできず、ようやく足を運べたその日に即断即決するのに勇気が要りました。
移住後の生活について、特に困ったことはありませんでしたと言う勝見さんですが、その印象をお聞きしました。
勝見さん : 今住んでいるところは良い意味でご近所付き合いがなく、あまり気を遣わずに過ごせているなと感じます。コロナ禍だったこともあり、まだあまり地域のイベントに参加したこともありません。
今のところ、人間関係はほとんどおおがファームを起点としていて、その関わりで野菜の生産者の方との触れ合いはありますが、それ以外の友人はいません。おおがファームでは、毎週日曜日にファーマーズマーケットを開催していますが、その際に買う大分県産の新鮮な野菜や卵を買うのが楽しみです。
日出町の魅力ですが、今住んでいるところからは海が見えますし、糸ヶ浜にたまに足を運ぶのですが、海を望む風景は良いと感じます。コンパクトな街なので買い物が便利ですし、水が豊かで家から近いところに湧水があり、たまに汲みに行って飲み水や料理に利用しています。コロナワクチンの接種場所もたくさんあって、医療面も充実していると改めて思いました。
変わらない日常生活
都会と日出町での暮らしの違いをお聞きすると、こんな答えが返ってきました。
勝見さん : 買い物に関しては不便を感じたことはありませんし、電車で大分市まで足を伸ばせばアミュプラザなどの商業施設もあります。ガーデニングやガーデンデザインをしたくて移住したため、都会と田舎の生活のギャップはそこまで感じていません。
驚いたことと言えば、生活自体は都会とあまり変わりがありませんが、街灯が少なく夜道が暗いことです(笑)。あとは、公共交通機関が少ないというぐらいです。
雑貨屋さんが好きなので福岡市に買い物に行ったり、温泉に足を運んだりなどプライベートも充実しています。通勤や移動用に原付を購入し、別府市までは移動できるようになりました(笑)。
これからについて、こんな夢があるそうです。
勝見さん : プライベートでいずれは一軒家を持ちたいと思っています。田畑や野菜作りなどは大変だとわかっているので興味はないですが、周りにある新鮮な農作物などを上手に生活に取り入れて、豊かな生活を送りたいです。
移住希望者へのメッセージ
自身の移住体験を踏まえて、これから移住を希望する皆さんにメッセージをいただきました。
勝見さん : 新しいことをやりたい気持ちは大切ですが、どんなことでも想像と現実では良い部分と思いがけない部分があるでしょうから、様子見をしながら少しずつ移行することをおすすめします。
最初から古民家暮らしで慣れないまま地域と関わって過ごしていくのは難しいと思うので、賃貸でちょっとずつ地域の特性などを知るのも手かと思います。私が現在暮らしている場所は人との関わりが少ないのですが、地域によってはみんな知り合いで人間関係が密接です。都会の人からすると、見張られていて居心地が悪いと感じてしまうぐらいだと思うので、そういった特色も移住前に調べた方が良いと思います。
実際に足を運んで、自分の目で見て確かめて、仕事や生活について頭の中で想像しているものと現実との内容のギャップをできるだけ埋めて、納得できれば問題ないかなと。
事前の準備も大切だと思います。私の場合は、前職を辞める一年前から上司に「農業系の仕事を探したい」と伝えていましたし、面接に行く旨や就職が決まったなどの報告もしていたので、転職自体はスムーズでした。
日出町はコンパクトな街になっているところや、スーパーが遠いけれど景色もよく静かなところなど、それぞれの土地で個性があります。まずはアパートなり空き家の賃貸でそれぞれの雰囲気や地域を知るのも良いのではと思います。おおがファームには私を含めて移住者が2人いるので、何か心配事があれば息抜きに遊びに来てください。
最後に
ガーデンデザインに携わりたいという想いを叶えるため、堅実に準備を重ねて実現した勝見さん。彼女の口から都度聞かれた「ギャップを埋める」というキーワードは、仕事や生活という現実の中でより良く暮らしていくかを考えた際に、最も大切にすべきではと感じました。移住を通じて理想や夢を手に入れるために、勢いや運はもちろんですが、事前に自分の目で確かめることの重要性を教えてくれたと思います。