大分移住手帖

自分が住みたい土地で暮らしながら好きな仕事を続ける。リモートワークを通じて見出した新たなワーク・ライフ・バランス。

Kg

取材者情報

お名前
平野桃子
出身地・前住所
出身地:東京都西東京市
前住所:東京都西東京市下保谷
現住所
大分県佐伯市中の島
家族構成
両親・弟二人、現住所では友人と二人暮らし
職業
アニメーション制作会社

コロナ禍をきっかけに世の中で注目を集めたリモートワークは、住んでいる地域に縛られない柔軟な働き方としてIT業界などを中心に普及していますが、平野さんもそんな働き方を実践している一人で、転職せず都内から佐伯市への移住を果たしました。そんな彼女のワークスタイルや現在の暮らしについてお聞きしようと、佐伯市のご自宅を訪ねました。

現在平野さんが暮らす地域は川の近くの閑静な住宅街

ルームシェアをきっかけにIターン

東京都で生まれ育った平野さんは、高校卒業後にイラストの専門学校を経て、現在のお仕事に就いたそうです。

平野さん : アニメーション制作会社で10年ほど働いています。インドアが好きで割と家にいることも多く、住む場所にこだわりはありませんでした。

20年以上都内の実家で暮らしていたので、駐車場や維持費などを考えると不便に思えて普通自動車免許は持っていませんし、移動はもっぱら公共交通機関を利用していました。都内では電車ですぐに足を運べることが当たり前という感覚です。

そんな平野さんですが、SNSをきっかけに知り合った友人と親交を深めるうちに、新たな展開を迎えたそうです。

平野さん : SNSを通じて共通の趣味ですっかり意気投合し親友となった矢野さんと、ルームシェアをしたいと考えるようになりました。

最初は都内でルームシェアをすることを検討したのですが、
・コロナ禍でどこにも行けない
・勤務する会社がコロナ禍をきっかけにリモートワーク可能
・家賃等の生活費が高い
などを考えると、住まいは東京でなくても良いのではと思うに至りました。何より、自分のペースで時間にゆとりを持つ生活をしたかったので、都会の人混みに揉まれる日々から離れたいと感じました。

そして、親友の矢野さんの出身地である佐伯市には馴染みがありましたし、別府市や福岡市を2人で旅して九州に好感を持っていたことがあり、佐伯市への移住を決断しました。

移住することについて、私の家族は「いずれにせよ実家を離れて生活する点は変わらない」ということで、距離はあまり気にしていないようでした。友人には驚かれましたが、コロナ禍で会うのきっかけがないまま伝えきれなかった人も多いです。

こうしてリモートワークの準備が整った後、2022年3月にIターンを果たした平野さんですが、移住前にはお試し移住として、佐伯市の移住支援制度を利用する予定だったそうです。

平野さん : コロナの影響で中止になってしまいましたが、佐伯市お試し滞在補助を申請していました。移住前に地域を知りたいという移住希望者には良い制度だと思います。

リモートワーク中の平野さん

場所を問わないリモートワークという働き方

現在も東京での仕事を引き続き行っている平野さん。働く場所以外の違いは全くないそうです。

平野さん : 佐伯市に移住することについて、会社の方々には大変驚かれましたが、すでにコロナ禍の影響でリモートワークに移行していたので、業務に全く影響はありません。職種がイラストレーターなので、今後も基本的に出社することはなく、自宅で仕事を続けていくと思います。

そんな平野さんは、佐伯市で初めての申請となる移住支援制度を申請しているそうです。

平野さん : 移住にあたって利用できる制度を調べていた際に移住支援金の制度を知り、引越費用などで貯金が心もとなかったのもあって申請しました。

リモートワークによる移住支援金の申請自体が佐伯市の移住者で初めてということで、全く手探りの状況でなかなか進まず凄く不安でしたが、佐伯市役所のご担当者が真摯に対応してくださったので安心しました。また、矢野さんの励ましがあり、心強く気長に待つことができました。

ご自宅には様々なキャラクターがデコレートされている

理想の2人暮らし

「矢野さんがいなかったら移住していない」という平野さん。佐伯市に移住するまでも有形無形の恩恵を感じていたそうです。

平野さん : 全く知らない地域よりも友人の住んでいる地域の方が安心できますし、色々と教えていただけるなど何かと打ってつけでした。

私がまだ都内で暮らしていた頃に、矢野さんに内覧で足を運んでもらって、津波など災害の被害がない地域にあり、新築で間取りも理想的な現在の家に決めました。佐伯市内は東京都内よりも大幅に家賃が安いうえに、住みやすそうな物件が多く、理想の住まいを見つけることができました。

さらに、矢野さんとそのご家族には、物件選びや引っ越しの手伝いなどで大変お世話になりました。

元々共通の趣味を通じて親交を深めた平野さんと矢野さんだけあって、整理整頓されて綺麗な家の中は、たくさんのグッズが飾られており、日々の暮らしを楽しんでいることが伝わってくるようでした。

くじゅう花公園に出かけた際の写真

東京と佐伯市での暮らしの違い

住み慣れた都会を離れて、初めての実家以外の暮らしを満喫している平野さん。移住後の佐伯市の印象は「めちゃめちゃ良いところ」だそうです。平野さんと矢野さんに、現在の暮らしぶりをお聞きしました。

平野さん : 佐伯市には生活に必要なお店などが一通り揃っていて、生活面で特に不便することはありません。自動車が運転できなくても、思っていた以上に徒歩や自転車で行ける距離にスーパーなどが充実しています。海産物などの食べ物はもちろん、都会には少ない個人経営のお店が魅力的だと感じています。地域の催し物なども都会より身近で足を運びやすい印象です。

休日は、佐伯市内の美味しい飲食店やまだ足を運んだことがない施設などを2人で巡っています。今までにくじゅう花公園九州自然動物公園 アフリカンサファリつくみイルカ島などの観光スポットをはじめ、県内各地の道の駅や温泉などに足を運びました。

矢野さん : お出かけの際は、色々な情報サイトや佐伯市観光協会のSNS、各お店の情報を見て参考にしています。都会に比べると観光スポットも限られることから、遠くに足を伸ばした際にはついでに近隣の施設にも立ち寄るなどして、より満喫できるように工夫しています。

平野さん : 東京都で暮らしている時は知らなかった、ご当地グルメの佐伯ラーメンの有名店や、元禄二年から続く塩麹のお店として全国的にも有名な糀屋本店宇目町にあるレストランのジビエなど、佐伯市内だけでも様々なコンテンツがあります。

caption:

佐伯市上浦のお店で撮った一枚

矢野さん : 佐伯市内では毎週のように頻繁にお祭りが開催されています。佐伯みなとお魚フェスタでは、釣れなくてもいずれかもらえるという米水津東九州大漁祭 米水津おさかなまつりでは伊勢海老とヒラメの釣りが破格の1,000円で楽しめたり、子ども向けのブリの掴み取りがあったりと、佐伯の海産物の豊かさを体験できます。隣町のつくみ軽トラ市では、軽トラに旬の津久見みかんやモイカなどの特産品が並ぶなど、イベントを通じて大分県内のそれぞれの地域の特色を感じることができます。

佐伯市上浦のお店で撮った一枚

仕事の時間以外はほとんど一緒に過ごすお二人に、東京都内と佐伯市内での暮らしの違いをお聞きしました。

平野さん : 都会で暮らしていた頃は、チェーンストア等お店が乱立していて選ぶこと自体が大変でした。いつでもどこでも行ける環境だとわざわざ足を運ぶ気が起きず、電車で移動するだけでも人混みに揉まれて気疲れしていました。

佐伯市ではお店の数が限られており、その中から選ぶので決めやすいですし、どこに行っても人が少ないのでゆっくり楽しめます。新しいお店ができたら足を運んでみたいと思える環境だと思います。また、個人で運営されているお店は画一化されたマニュアルに沿った接客やサービスとは違って個性があり、親切にしてもらえたりおまけをくれたりと、様々な交流ができるところがとても楽しいです。大体のお店の方からは「東京から移住しました」と話すと驚かれます(笑)。

矢野さん : 昔ながらの飲食店の中には、滞在中ずっと話かけてくれるお店の方もいて、食べるタイミングがないということもあります(笑)。都会だと高いお金を支払えば当然美味しい食べ物が食べられますが、佐伯市では直売所などで新鮮な海産物や野菜が手頃な価格で手に入れることができます。

平野さん : 移住してまだ四季を一巡していないこともあり、季節の変化はあまり感じず、気候も都内と大差ない気がしていますが、風景が全く違います。都会はずっと街並みが続いて代わり映えのない風景ですが、佐伯市は高い建物が少なく、山に囲まれているのでどこからでも緑が望めて、見晴らしが良いと思います。海も川も身近にあり、自然を近くに感じられるところが気に入っています。

矢野さん : 平野さんと豊後二見ヶ浦蒲江町に出かけた際に「海の先に水平線が見えるのが綺麗」と言っていたことが印象的でした。海沿いの道路を走ると海も山も見えるのは、都会にはない景観だと思います。

佐伯市の生活で不便を感じることがありますかとお聞きすると、こんな答えが返ってきました。

平野さん : 自転車を購入したことである程度楽にはなりましたが、自動車免許を持っていないため、ひとりでの行動範囲に制限が多い点です。生活を送る上で車は必須アイテムなので、いずれは普通自動車免許を取得して車を購入した方が良いと考えています。

他に都会と大きく違うと感じる点ですが、街灯が少ないので夜道が暗い上に、焦点が歩道ではなく車道を向いていて、車での移動が多い地域ならではだと感じました。また、佐伯市は空港から遠い場所ですし、電車の便数が少ないなど、交通機関の不便さは感じます。

佐伯市蒲江にある空の公園に出かけた際の写真。絶景が楽しめたそう。

移住希望者へアドバイス

移住支援金の申請要件には5年以上定住するという縛りがありますが、佐伯市での暮らしが気に入っているため、それとは関係なく長く住みたいという平野さん。より良い家を見つけることがあれば引っ越しを検討するかもしれませんが、大分県から離れることは考えていないそうです。

そんな平野さんに、移住を考えている皆さんに向けて、アドバイスをいただきました。

平野さん : 都会でしか生活したことのない人には、ぜひ一度来て欲しいと思います。

私自身は、どこに行っても混雑する都会では出かける気にならず、家にいることが多かったのですが、移住してからは何処に足を運んでも行列や人ごみに巻き込まれることなく自由に過ごせるので、フットワークが凄く軽くなりました。

佐伯市には佐伯市お試し滞在補助など、実際に現地を訪れて雰囲気を味わえる制度もあるので、興味がある方は活用してみるのもおすすめです。

佐伯城の城山公園の頂上から撮影した写真

最後に

自分のペースで生活したいという想いから、佐伯市へIターンし親友とのルームシェアを実現した平野さん。生まれ育った都会ではなく地方に移住することで、理想のワーク・ライフ・バランスを手に入れることができたそうです。彼女の話を通じて、自分にとって大切なことは何かをしっかり考えてアクションを起こせば、日々をより良く暮らすことができるのではと感じました。リモートワークをはじめ、様々な働き方がある今だからこそ、理想のライフスタイルを手にするためにできることがあると考えさせられました。

PHOTO

  • 自分が住みたい土地で暮らしながら好きな仕事を続ける。リモートワークを通じて見出した新たなワーク・ライフ・バランス。
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WRITER 記事を書いた人

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株式会社モアモスト 取締役・一般社団法人まち元気おおいた 理事・Pdw 代表として、サイト・DTP・DTMなどディレクション〜制作をはじめ、ライターや撮影などの業務に従事。大分市府内5番街商店街振興組合の理事として、まちづくりにも携わる。

SC-RECS.com・クラブイベントインフォ・SCLS・DubRize・PLay・合同写真展などを主宰し、各種イベントのオーガナイズからDJやマシンライブなどまで展開中。テルミン使い。

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