取材者情報
- お名前
- 上野 尚記
- 出身地・前住所
- 出身地: 熊本県熊本市
前住所: 鹿児島市
- 現住所
- 大分市府内町1-5-1 COSMOⅡ 104号
- 年齢
- 39歳
- 家族構成
- 独身
- 職業
- セレクトショップ「BANDIERA」経営
大分市府内町にあるセレクトショップ「BANDIERA」は、地域のユースカルチャーを支える情報発信地にもなっており、様々なお客さんで賑わっています。そのお店を経営する上野さんは県外からの移住者で、大分市への熱い情熱を持った方です。そんな上野さんの移住ストーリーをお聞きしたいと思い、彼の元を訪ねました。
転勤で熊本市から大分市へ
熊本市で生まれ育った上野さんは、学生の頃からファッションに興味を持っていたそうです。
上野さん : 高校生の頃からセレクトショップでアルバイトを始めました。何より接客が楽しいと感じ、すっかり夢中になりました。高校卒業後に愛知県内の製造業に就職したものの、接客業の面白さが忘れられず、退職し地元に戻ってセレクトショップに就職しました。
再び熊本市内の実家で暮らしはじめた上野さん。充実した日々の中に、新たな展開が訪れたそうです。
上野さん : 勤めていた会社が2号店を出店する事になりました。一般的にセレクトショップで取り扱っているブランドには「各都道府県につき一企業にしか卸さない」というルールがあります。熊本県内で出店しても、既存店と顧客の取り合いになって意味がないと判断し、九州内の他県を検討したのですが、福岡県などは埋まっており、大分県には取り扱い店舗がなかったため、大分市への出店を決定しました。
その後リサーチのために何度か足を運んだ上野さん。最初に感じた大分市の印象は良いものではなかったそうです。
上野さん : 正直、大分市のことをあまり知らなかったので、出店が決まった後に訪ねました。熊本市は中心市街地が大きいため、それと比較すると規模感が小さく商圏として少し不安を感じました。
また、同業を中心に色々なお店へ挨拶して回りましたが「大分での商売は厳しいけん」などというネガティブな会話が多く「一緒に頑張って地域を盛り上げよう」と言ってくださる方は少なく、あまり地元愛を感じられませんでした。
そういう状況を踏まえて、逆に「この街でやってやろう」という気持ちになりました。
2004年に大分市へ引越した上野さん。実際に大分市で暮らし始めるとコンパクトで住みやすいと感じたそうです。
上野さん : 不動産屋を周り、なるべく店に近いエリアで一人暮らしを始めました。買い物など便利で、特に違和感はなく思っていた以上に生活しやすかったです。
府内町にあるセレクトショップのスタッフとして日々働く傍ら、色々な場所に足を運び、交流の輪を広げたとのことです。
上野さん : 最初の方は、売り上げもなかなか上がらない、知り合いも少なく苦労したのを覚えています。お客さんと仲良くなって友人になったり、色々な社交場に顔を出したりで、次第に知り合いも増えていきました。
また、熊本市で生活していた頃の共通の知人から繋がった、当時大分市で暮らしていた先輩方にはお世話になりました。
こうして、大分市での生活に溶け込んでいった上野さんですが、2009年に新規店舗の立ち上げのため、鹿児島市へ転勤したそうです。
起業のため再び大分市へ
鹿児島市で働いた上野さんですが、起業するために再び大分市へ移住を決断したそうです。
上野さん : 既に人脈ができていたため、当時暮らしていた鹿児島市や地元の熊本市よりも、大分市で独立した方が商売的にやりやすいと感じました。特に府内町エリアで見ると、同業者・異業種を含めて横の繋がりがあり、今でも皆様といい関係性を築けていると思います。
こうして2011年4月9日に府内町にセレクトショップ「BANDIERA」をオープンした上野さん。ショップスタッフとしての長年の経験を活かして、若者を中心に幅広い年代層の顧客を持つだけでなく、経営者として新たな試みにも挑戦しています。
上野さん : 2023年2月11日にコンパルホールの近くにある路面店に移転リニューアルオープンしました。新店舗では、カフェバースペースを併設し、服以外でもお客さんとコミュニケーションを取れるようにしています。
私は洋服が好きで、今まで洋服に関わることしかやってきていないので、それをメインにしながらも、割合を考えながら新しい取り組みに上手くアプローチしたいと考えています。
現在の暮らし
現在も大分市で一人暮らしを続ける上野さん。生活環境にも満足しているそうです。
上野さん : 現在の家は河川敷にあり景色が良いですし、徒歩圏内にコンビニ・スーパー・温泉などがあり、利便性が高くて満足しています。
プライベートは高校の部活だったサッカーをはじめフットサル・スケボーなどのスポーツで汗を流したり、温泉などに足を運んで過ごしていますが、仕事自体が好きだということもあり、どこに行っても働いている意識があります。自分がお休みの日でも、バイトスタッフに任せずにお店に足を運んでしまいます(笑)。
若い頃は仕事が終わった後にバイトするなどお金に苦労しましたが、起業してからクオリティ・オブ・ライフが上がりました。日々の努力を怠らなければ報われると感じています。
結婚などのライフステージに合わせて転居などはあるかもしれないですが、これからも大分市で暮らしたいと考えているそうです。
上野さん : 大分市での生活は、気がついたら来年で20年ほどになりますが、凄いいい場所だと感じています。そうでないとこんな長く居ないなぁと(笑)。
大分県の地域性
熊本市で生まれ育ち、鹿児島市や愛知県での生活経験があり、現在も仕事で日本各地に足を運ぶ上野さんに、大分県の地域性についてお聞きしました。
上野さん : 移住した当初は人が冷たいと感じましたが、実際に生活してみると暖かい人が多いので、恥ずかしがりの方が多いのかもしれません。お店にお客さんとして訪れて仲良くなるとプライベートでも一緒に行動するなど、一度仲良くなるとずっと関係性が保たれるように感じます。
大分県は温泉や自然が豊かで、魚などの食も抜群に美味しくて、暮らしやすい地域だと思います。特産品も色々ありますが、その中でも椎茸は大分市に移住した後に食べるようになりました(笑)。
一方で、仕事を通じて不便を感じることもあるそうです。
上野さん : 府内町周辺は一方通行などが多くて、交通の便が悪いと思います。また、狭い地域に集中しているので、街なかのエリアを広げて、もっと盛り上がるような取り組みが必要だと感じます。
また、若者が地元に誇りを持てるように手助けしたいと考えているそうです。
上野さん : 「大分には何もないよね」という若いお客さんが多いのですが、それは自分自身には何もないと言っているのと同義ですし、自分達の街をけなしていることにも繋がっていると思います。移住当初から私には「みんながそれぞれ地元愛を持ってくれるように変えたい」というモチベーションがあります。何かを本気で志している人はぜひ「BANDIERA」に足を運んで欲しいです。色々と相談に乗ってお互いを高め合いたいと考えています。
移住希望者へアドバイス
慣れ親しんだ大分市に骨を埋めたいと話す上野さんに、今後の展望についてお聞きしました。
上野さん : 私自身、熊本市に住んでいた若い頃は街に憧れを持っていて、学生でお金がないなりに工夫しお洒落して出掛けて、色々な人と出会い刺激を受けていました。同じ様に、大分でも中心市街地で開催されるイベントや空き店舗の有効活用などを通じて、若者に活躍の場を用意し人と人とを繋げて、みんなで楽しめる環境を作っていき、地域に貢献したいです。
また、才能ある若手を発掘して、積極的にバックアップしたいと思います。その結果、周囲の盛り上がりに寄与できると考えています。一店舗だけでは難しいかもしれませんが、同じ志を持つみんなでやれば、少しずつでも街を変えていけるのではないでしょうか。
そんな上野さんから、これから移住を希望する皆さんへ向けてアドバイスをいただきました。
上野さん : 「住めば都」という言葉があるとおり、自分次第でどうとでも出来ると思います。生まれ育った・慣れ親しんだ環境から離れて移住することは、勇気や覚悟が必要だと思いますが、自分のやりたい事の為なら行動するのが1番だと思います。そして、移住後は色々なところに顔を出して新たな繋がりを作り、新たな暮らしを楽しんでください!
最後に
若者を中心に10代から60代まで幅広い客層を持ち、それぞれが繋がって刺激し合った結果、新たなカルチャーや情報の発信地となっている「BANDIERA」の上野さんの取材を通じて、移住先でしっかり地元愛を持てるように地域に根差して溶け込むことの大切さを学びました。移住に関する悩みややりたい事がある方は、ぜひ彼のお店を訪ねてください。美味しいコーヒーを淹れながら話を聞いてくれると思います。