取材者情報
- お名前
- 乙名未来(おつなみく)さん
- 出身地・前住所
- 千葉県野田市
- 現住所
- 大分県佐伯市
- 年齢
- 26歳
- 家族構成
- 夫
- 職業
- アスリート社員:小田開発工業株式会社
- Webサイト
- https://odakaihatsu.co.jp/
レスリング競技が盛んな千葉県野田市で生まれ育った乙名さんは、自らも小学校2年生からレスリングに取り組んできたそうで、現在は大分県佐伯市にある小田開発工業株式会社所属のアスリートとして、日々の練習に励んでいます。そんな彼女の移住に至るまでのストーリーや、現在の暮らしについて、お話しを伺いました。
大学進学で千葉県から大分県へ
千葉県野田市で生まれ育ち、東京都内の高校に通っていた乙名さんは、日本文理大学に進学するために18歳で大分県大分市に移住しました。
乙名さん:本格的にレスリングができる大学に進学したいと思い、見つけたのが日本文理大学でした。レスリングに真剣に打ち込める環境に希望を抱きつつも、まだ若い自分が親元を離れて不慣れな土地で生活していけるのかとても不安を感じました。
レスリングの全日本女子オープン選手権やアジア・カデット選手権など、数々の大会で優勝を勝ち取ってきた乙名さんは、大学でもレスリングに打ち込み、オリンピックに出場するのが夢でした。しかし、未成年の乙名さんが慣れ親しんだ地元を離れて生活できるか心配で、大変迷ったそうです。
関東の都会での生活から一変して、地方に一人で飛び込んで頑張っていくということは彼女にとってハードルが高かったそうですが、その不安よりもレスリング競技の強豪である日本文理大学へ入学することで、夢のオリンピックに一歩でも近づくことを最終的に選びました。大学では日々学業と練習の両立でとても忙しかったと言います。
大分か東京か悩んだ就職活動
大分市での大学生活にも慣れてきて、レスリングも順調に良い成績を残してきた乙名さんですが、あっという間に就職活動の時期がやってきました。
乙名さん:大分がとても好きになってきていたので、このまま大分に残るか、地元に帰るか迷いました。社会人になってもレスリングをしたかったので、競技を続けながら働ける会社を探していました。
就職せずにプロ選手として活動することもできるそうですが、アスリートは年齢や怪我でいつか引退する時がきます。そんな時に初めての社会人を経験するということがとても怖かったので、会社員をしながらレスリングを続けることが乙名さんの理想でした。
乙名さん:実は東京の会社からもオファーがあったので、東京に行くか少し迷いましたが、社会人アスリートは練習場所を自分で確保する必要があり、東京ではなかなかそれが見つからなかったんです。大分だったら大学の練習場があるので、大分県内に就職すれば練習場所には困らなかったんですよね。
大学でのつながりがあったことが大きなアドバンテージとなり、大分で就職することを視野に入れて就職活動を始めた乙名さんは、大分県佐伯市にある現在の所属会社「小田開発工業株式会社」の会社見学に行くことになったそうです。
温かい人と社風に惹かれて佐伯市に移住
小田開発工業株式会社に会社見学に行った乙名さんは「すぐにこの会社に就職したい!と感じたと言います。
乙名さん:会社見学に行って驚きました。社長をはじめ、会社のみなさんが本当に優しくて温かかったんです。練習時間の確保のため通常通りの就業時間で働けなくても「練習頑張って!」「大会絶対勝てるよ!」と声がけをしてくれたんです。
アスリート社会人は毎日朝と夕方に練習があるため、出社時間や退社時間が通常とは違います。そのことに関してみんな嫌な顔ひとつせずに練習を優先してほしいという温かい雰囲気を感じ取ることができたと言います。
乙名さん:小田開発工業株式会社は土木建築系の会社です。これまで土木なんて全く興味もなかったし経験も知識もなかったのですが、新しい土木という領域を知ってみたいなと思いました。
そして、小田開発工業株式会社に魅力を感じたもう一つの大きな理由が、同じアスリート入社の先輩が身近にいたことでした。
乙名さん:先輩にアスリートをしながら働くことで困ったことがないか、土木の仕事はどうか色々聞きました。普通の先輩ではわからないことなので、同じアスリートという立場の先輩がいてアドバイスを頂けることは本当に心強かったです。
温かい社風に惹かれた乙名さんは、小田開発工業株式会社に入社するために大学があった大分市から会社がある佐伯市に移住することになりました。大分県に残るという選択をした大きな理由は「大分県の人の温かさ」だったのです。
アスリート就職を助けてくれた様々な支援
アスリート就職をすることは普通の就職活動と違って、勤務時間や練習場所の提供など、様々な検討が必要になります。乙名さんのアスリート就職活動を支えてくれたのが、「アスナビ・チーム大分プロジェクト」でした。
乙名さん:アスリート就職を目指していた中で、アスナビを知りました。大分県がアスリート就職を支援してくれるプラットフォームを用意し積極的にバックアップしてくれていますので、他の地域より活動しやすいだろうなと感じました。
アスナビ・チーム大分プロジェクトとは、国際舞台や国民体育大会等で活躍するトップアスリートと大分県内企業とのマッチングに向けた就職支援プラットフォームです。乙名さんはアスナビに登録したことで、積極的にアスリート支援を行っている小田開発工業株式会社に出会うことができたのです。
アスナビでは、アスリート側が希望の勤務時間や練習場所の条件などを登録することができ、その条件で受け入れ可能な企業とのマッチング支援をしてくれます。アスナビがあることでトップアスリートのU・I・Jターンや大分移住を促進することに繋がっているのです。
佐伯市に移住をする際に、佐伯市が実施している「奨学金返済支援制度」も活用することができたり、住居探しに困っていた時も、家が決まるまでの間社長が支援をしてくれたり、乙名さんは「人も制度もアスリートに優しい」のが大分県なのだと語ってくれました。
大分県の魅力は人
大分市で大学時代を送り、現在は佐伯市で仕事をしながらレスリングを続けている乙名さん。関東から大分県に移住した彼女が感じた「大分県の魅力」を伺いました。
乙名さん:大分のとても自然豊かなところが好きです。関東にいた時には街に買い物に行ったり、アミューズメントパークに行ったりして遊ぶことがほとんどだったので、大分に来て初めて山や川で遊びました(笑)
練習がない貴重な休日には、船釣りに挑戦したり川でバーベキューをしたりして、自然の中で遊ぶという楽しさを知ったのだそうです。
都会での暮らしに慣れていた乙名さんはもちろん、その友人も自然の中で遊ぶということを知らない方が多かったそうで、川で遊んだという話をすると「川で何するの!?」と驚かれることがしばしばあったそうです。大分の美しい自然との触れ合いは、都会育ちの乙名さんにとって新鮮で楽しかったとのことでした。
乙名さん:佐伯市に移住する決め手となった「人の優しさ」は本当に感じます。知り合いから野菜などをもらうことがありますが、これは東京では考えられませんでした。
都会で暮らしていた際は、地域の人に野菜やお米をいただくという経験がなかったという乙名さん。会社の方々をはじめ、地域の人々もとても優しく接してくれることが最高の大分県の魅力だと語ってくれました。
移住希望者へのアドバイス
大分に移住して本当に良かったと語る乙名さんに、移住を検討している人に向けてのアドバイスをお聞きしました。
乙名さん:私は地方移住を目的として色々な場所に行ってどこに住みたいかを検討したわけではなくて、アスリートとしての人生を送るのに最適な場所を探していたらそれが大分県だったというストーリーです。移住の理由やきっかけは様々あると思いますし、それでいいと思います。移住を検討される方のライフスタイルに合った最適な場所を探してみてください。
「地方移住=田舎での第二の人生」というイメージがまだまだ残っていますが、今は自分の夢を叶える場所、なりたい自分になるための場所に若いうちから移住をするというスタイルが増えているように思います。リタイア後に田舎でゆっくり過ごすための移住ではなく、自分の夢に向かってチャレンジをする移住というスタイルがとても素敵だと感じました。
最後に
乙名さんの移住は、大分県が取り組むアスリート支援から生まれた素晴らしい事例です。トップアスリートの移住という少し変わった移住スタイルの取材を通じて、夢を持って移住をする、夢を叶えるために最適な場所を探すということが、今後の移住スタイルに変化していくのではないかと感じました。今後もレスリングでたくさんの素晴らしい成績を残していってくれることでしょう。 理想の環境で切磋琢磨する彼女が、今後もレスリングで素晴らしい成績を残していってくれることが楽しみです。