取材者情報
- お名前
- 青木 絵麻
- 出身地・前住所
- 前住所:東京都
出身地:東京都田無市(現 西東京市)
- 現住所
- 大分県別府市
- https://www.instagram.com/ema_beppu/
東京都田無市(現:西東京市)で生まれ、小学生から山口県下関市で育ったという青木絵麻さん。社会人になると、仕事で福岡県と東京都を行き来するようになり、次第に東京都に住むようになったそうです。そんな青木さんが別府市に移住した経緯と、住んでみて分かった魅力についてお話を伺ってきました。
全てにおいてちょうど良かった別府市
2011年の東日本大震災で人生観が変わったという青木さん。翌2012年には息子さんが生まれ、いつか「東京に行きたい」と彼が言い出す時までは、自然が豊かな所に住みたいと思ったそうです。そして、息子さんが小学校に上がるタイミングで別府市に移住しました。
青木さん:両親の住む実家が下関にあったので、移住先は下関へ行きやすい所がいいなと考えていました。四国は割と近いので候補にはありましたが、うどんよりもそばが好きなのでやめました(笑)。
大分県は海や山があって、30分もあれば滝も見に行けます。また、野菜や海産物が新鮮です。県内では、豊後高田や中津、国東、日出も見に行きました。どこも素晴らしい所でしたが、華やかな雰囲気のところに住みたかったということと、呑む所が少なかったりして、実際に住むとなるとやっぱり別府がちょうど良いなとなりました。私は白身魚より光り物が好きで、呑むのも好きなので、関あじ・関さばがあったり、呑む所があったりする事も移住先を選ぶのに大事なポイントでした。
住環境や自然災害を考慮した家
別府市への移住を決めた青木さんは、東京から不動産情報が載っているサイトを見て家を探したそうです。
青木さん:市のお試し移住の制度を活用すれば10日間までは滞在できたみたいですが、特に使いませんでした。東京で候補物件を何件もピックアップし、3日間ぐらいホテルに泊まりながら探しました。1日で5件くらい見て回ったけど、結果、一番最初に見に来たこの家が気に入って住む事にしました。
青木さんが今の家を気に入ったポイントは、坂になっている立地で、周りに高いビルが無いおかげで4階なのに見晴らしがいい所だそう。部屋から海が見渡せ、落ち着くのだとか。また、天井が高くて開放的で、壁がしっかりしているので、家に人を呼んでもあまり騒音を気にしなくて良いと言います。
青木さん:下関に住んでいた頃、アルバイトをしていた関門海峡沿いのレストラン同様にすぐ海が見える・潮風を感じられる環境が気持ち良いです。朝起きて、カーテンを開けたら海が見えるって心地良い。ベッドから初日の出が見れますし、べっぷ火の海まつりの花火も部屋から鑑賞できます。今、一部高い建物で見えなくなった所もあるので、これ以上高いマンションが建たないで欲しいです(笑)。
また、ハザードマップを見て自然災害の影響が無いかを調べたといいます。
青木さん:JR日豊本線から上は海抜10mで心配なさそうでした。湾だから津波もそうそう無いですし、鶴見岳が噴火する可能性があるので、あまり近づかない場所にしました。また、警察署と市役所の間だから、位置的に安心だと思いました。別府は坂が多いので雨が降っても川から海に流れていき、水害の心配もありません。別府公園が近くにあるので、「何かあったら別府公園で待ち合わせね」と子どもに言えます。
海を身近に感じられ開放感のある家は、青木さんにとってとても住み心地が良いそうです。
湯治文化が根付く別府市の、他には無い魅力
別府市に移住してきた当初、スーパーで買える魚や野菜がとても美味しいことに感動したという青木さん。東京と大分では、スーパーで買える物のクオリティが違うそうです。
青木さん:スーパーで蟹が売られていたりするんです。タチウオの刺身なんて、東京では普通には売っていません。大分は食文化のバランスがいいと思います。羊は少ないけど、魚も新鮮だし、鶏文化もあるし、豊後牛、豚、ジビエもあります。あまり無いものがありません。
また、別府市の人は外から来る人に慣れており、みんな優しいそうです。
青木さん:元々が湯治文化で、外から癒やされに来る人や観光で来る人が多いので、田舎で閉鎖的といった感じがありませんでした。方言もそんなに強くないので、コミュニケーションに困ることもありませんでした。
地域の集まりについては、基本的に強制ではなく自由参加です。町内会のお知らせとかはあるし、子ども会への参加はしたい時に出来ます。移住したての頃はクリスマス会とかに参加しました。
別府ならではだなと感じたのは、ジモ泉を通じた地域の繋がりです。移住してきてすぐの頃、近くのジモ泉に行くと、このマンションに住んでいるおばあちゃんに出会ったので「引っ越してきました」と伝えると、「4階に引っ越してきた人ね!」と既に知られていて裸で挨拶をしました(笑)。裸は知っているけど名前は知らない状態で、今では「8階のおばあちゃん」と言ったり、「4階の人」と言われたりしています。
色んな場所で地域の人が見てくださっており、青木さんが見ていない所での息子さんの様子を教えてくれたりするといいます。
青木さん:みんなが大体同じ時間に同じ温泉に集まるので、来なかったら心配されるし、その理由も共有していたりするので、別府市は孤独死が少ないんじゃないかなと思います。昔からの住人はそれが嫌という方もいるかも知れませんが、私からすると安心です。「お湯ニケーション」がある事が、他の地域とは違う別府市の魅力だと思います。
他にも、別府市は小さな店が沢山あり、良い意味でごちゃっとした感じの町並みで、みんな2〜3件お店をはしごするような感じが面白いと語ってくれました。
話を聞く中で別府市の魅力がどんどんと出てくる青木さんですが、移住して大変だったことや、困っていることが無いかもお伺いしました。
青木さん:スーパーも近く数も多いですし、病院もいっぱいあります。病院のベット数は全国的に見ても多い(大分は日本で10位・令和元年調査)そうですよ。
「あ、無いのか」と思ったのは、ネットスーパーですね。東京では、早ければ頼んだ当日の夕方には届きます。
洋服を買う所が少ないけど、通販があるのであまり困らないです。また、ライブやコンサートの会場がなかったり、大きな美術館や映画館が少なかったり、文化的な施設数が物足りないと感じます。ですが、別府にも面白いイベントがあります。アートフェアやベップ・アート・マンスのような市民文化祭が行われています。
リモートワークと平行してセミナーなどを開催
青木さんは、東京在住の頃は調理油のネット販売などを行っていたそうですが、別府市に移住した後はどのような仕事をしているのかを伺いました。
青木さん:私が契約している金田油店は140年ぐらいの老舗の油屋さんです。昔、油は体に良くないと言われていた時から「本当は体に大事なものですよ」という啓蒙活動を兼ねて小さいお店で細々と販売していましたが、現在は商社になっています。油は食べ物だけではなくて、インクや塗料、化粧品、薬の原料など、色々な所で使われていますが、日本の油は95%くらい輸入なんです。そのため、どんと仕入れた油を会社に卸すなどの仕事をメイン事業で行っていて、私が担当する食用油はほんの一部門となります。お店が「ネットでも油を販売したい」ということで事業を立ち上げる際に適任者を探していて、スカウトをしてもらいました。
そして、2004年にネットショップを立ち上げ、えごま油など世界の油を販売するようになったといいます。
青木さん:油の勉強を初めてみたら奥が深くて、難しいです。「油ってこんなに種類があって、それぞれ機能が違うんだ」という事を学びました。その知識を元に仕入れをしたり、ショップのページを作ったりしています。油って、置いているだけではどうやって使えばいいのかや、どう食べたら美味しいのかなどが分かりません。「じゃあ料理で見せようか」というのが、ブログを始めたきっかけでした。そのブログを見た出版社の方から「本にしませんか?」と言うお話をいただき、「油屋ごはん」という本を出版しました。
現在、東京の仕事はリモートワークがほとんどだといいます。大分県内では、声が掛かったら油の取り方などのレクチャーをしたり、国東でオリーブを作っている生産者さん向けにセミナーをしたりしているそうです。
青木さん:トレーニングをして、オリーブオイルのテイスティングの資格を取りました。オリーブの生産者さんの中には、テイスティングの知識を持たずに作っている方も多いため、オリーブの嗅ぎ分けについてのセミナーなどを行っています。ちなみに、エキスパートの人たちが嗅ぎ分けて選び抜いたものがエキストラバージンオイルと呼ばれるものです。鹿児島で行われたオリーブオイルの品評会に審査員として参加などもしています。
移住希望者へメッセージ
別府市へはスローライフを楽しむために移住したという青木さんに、これから移住を考えている方々へのメッセージをいただきました。
青木さん:移住は都会から地方へ来る人が多いのかな?と思います。東京だと物価なども高く、仕事が無いと生きていけませんし、出勤のストレスなどもあると思いますが、別府市では仕事が無くても何とか生きていけそうな、変な安心感があります。お風呂は安いし、食べ物も安くて分けてくれる人もいたりするしで、そういう気楽さがありますね。
旅人が一週間居着いてお店を開いたり、ポップアップでイベントをして何か売ったり、路上で歌ったりというような自由な人がいっぱいいて、そういった人たちとの出会いも面白いです。移住者も多く、みんな気ままに暮らしていますね。
最後に
住んでいるとなかなか気づけない大分県、そして別府市の魅力を沢山語ってくれた青木さん。お話を聞きながら、別府市ならではの、地域の人とほどよい距離感で関われる「お湯ニケーション」は、高齢の方や子育て中の親御さんに嬉しい文化だと感じました。
別府市は地方でありながら観光地ということもあり、田舎すぎず都会すぎません。田舎暮らしに興味を持ちつつも、生活していけるか不安で踏み出せない方や、スローライフを送りたい方にも、挑戦しやすい移住地なのではないでしょうか。