取材者情報
- お名前
- 小村(おむら)ゆかり
- 出身地・前住所
- 奈良県生駒市
- 現住所
- 大分県玖珠郡九重町
- 年齢
- 47歳
- 家族構成
- 夫婦+猫
福岡県豊前市に生まれ、夫の仕事の都合で奈良県へと移り住んだ小村さん。夫婦で自然の多い場所への移住を夢見ており、夫の趣味で訪れた九重町の自然に感動し、移住を決意しました。現在は九重町の介護施設「ケアポート渓和」で介護の仕事をしています。そんな小村さんが移住するまでの経緯や現在の生活についてお話を伺いました。
家族のために進んだ介護の道
移住前は奈良県に住んでいた小村さんですが、どのような生活を送っていたのでしょうか。
小村さん:元々は福岡県の小倉に住んでいましたが夫の仕事の関係で関西に移り住むことになりました。2022年頃に母が体調を崩したのですが、そのことがきっかけで介護の勉強がしたいと思うようになりました。福岡県で初任者研修の学校に3ヶ月間通い、仕事をしながら資格を取りました。その後、仕事を退職し、2023年のお正月に奈良県へ移り住んでからハローワークが行なっているハロートレーニングで、半年間大阪府にある介護学校に毎日通って実務者研修を受講しました。最初は家族介護のために学びましたが、現場でのスキルアップを目指して現在介護の仕事を続けています。
地域との交流と自然を楽しむ
奈良県で生活していた小村さんが九重町へ移住を決めたきっかけはなんだったのでしょうか。
小村さん:元々、夫と「いつか自然の多い場所に移住したい」との夢を語り合っており、福岡県や大阪府で開催されていた移住セミナーに参加し、移住者の体験談やさまざまな自治体のプレゼンを拝見したり、自治体ごとの個別移住相談をしたりしました。
九重町に決めた1番のきっかけは、夫の趣味であるキャンプで長者原ビジターセンターを訪れた時に見た綺麗な自然に感動したことです。「こんなに自然が綺麗な所なら住んでみるのも面白いかも」と思っているうちに、とんとん拍子に話が進み、移住が決まりました(笑)。2022年12月に2週間ほど九重町の移住体験ができる施設でお試し移住したのち、2023年10月に引っ越して来ました。
九重町に決める前に、実際に住むのであれば家の周りもしっかりと見ておこうということで、キャンプや山登りを兼ねて、九重町だけではなく熊本方面などの物件を見て回りました。ネットで空き家バンクや民間が管理している物件などを探して、いくつも内見しました。案内の方に理想の住まいについて話をしたら「物件自体は市場に出ていないけど、理想に合うのはこの場所ではないか」と今の住まい周辺に案内してくれました。
色々な人伝いで今の家を紹介していただき、オーナーさんの協力もあり、最終的に空き家バンクを通して家を購入しました。理想通りの温泉がついた物件で、毎日お風呂の時間が長くなりました(笑)。九重町は自然が綺麗なのはもちろんのこと、梨園などのフルーツ園、いろいろな種類のある温泉、スキー場などおすすめスポットが数多くあります。九重町民はリフト代が無料になるそうなので、今年の冬はスノーボードにチャレンジできたらなと思っています。
実際に移住してみて、地域の方との付き合いや大変なことなどをお聞きしました。
小村さん:飯田高原に住んでいるので、雪や霧の日に職場まで通うのが大変です。職場の駐車場で私の車だけに雪が積もっている様は、街に住んでいた頃には味わえなかったことなので面白いです(笑)。冬は薪ストーブのおかげで思っていたより暖かく過ごせますし、夏の暑い日でも夜になると肌寒く感じます。ちなみに今年の夏はエアコンを使わずに過ごすことができました。あとは、引っ越し後の手続きで必要な公的書類の取得時に、マイナンバーカードが九重町のコンビニで利用できなかったのでとても不便でした。
医療面では、近所に診療所が1つあります。移住してからまだ病院にかかっていませんが、大きな病院までは行くのに時間がかかるので、この先歳をとると不便に感じるかもしれません。
移住後の心配事の一つは、地域の方々との関わりだと思います。私が住んでいる別荘地には、他の地域から移住してきた方々の家が8軒ほどあり、皆さんから多くの助けをいただいています。例えば、野菜を沢山いただいたり、水漏れがあった際に近くの業者を紹介していただきました。また、地域で使っている井戸が枯れてしまって現在も取水制限中なのですが、携帯タンクを貸してくれたり、新しい井戸を掘るために業者や行政に掛け合ってくださっていて、とても助かります。
夫は地域のテニスサークルに参加しており、試合にも出場することがあります。休日には夫婦で山登りや温泉、隠れ家カフェに行ったり庭仕事をしたり、大分県だけでなく熊本県とも近いので季節ごとに違う楽しみ方ができて、充実した生活を送れています。また、仕事で帰りが遅くなると鹿に出会うことがあります。九州に鹿が住んでいることを知らなかったので、最初は驚きました(笑)。
<h2>アドバイザーの助けで出会った職場での働き方</h2>
現在、ケアポート渓和(※)で働いている小村さんですが、どのように仕事先を見つけたのでしょうか?
小村さん:福祉・医療スキルアップ移住推進事業のアドバイザーの方からアドバイスをいただき、今の職場を見つけました。正直、移住前にコールセンターで働いていた頃よりお給料は少し低いですが、毎日楽しく働いています。ケアポート渓和は、初めて訪れた時に非常にしっかりしている印象を受けました。特に、大阪府や大分県の施設をいくつか見学した中で、ここでは介護福祉士の資格を持つ職員の割合が圧倒的に多く、職員全体の意識の高さが際立っていると感じました。通所、入院施設、有料老人ホームなどがある綺麗な施設で、広い大浴場は温泉が沸いています。私は通所で働いているのですが、100人ほどが登録している中で、毎日大体30人が通ってきています。一般的なデイサービスのように歌やレクリエーションを行うよりも体力づくりのための体操や筋力トレーニング、自宅でお風呂に入れるようになるための入浴トレーニングなど、リハビリ要素が強いです。働いていく中で、利用者さんから感謝の言葉をいただけたり、名前で呼んでもらえたりするととても嬉しいですね。
※ケアポート渓和:自然に恵まれた環境の中で、看護・介護、リハビリサービスを提供する施設です。入所者の自立を支援し、家庭復帰を目指すための短期集中リハビリテーションや、園芸農業療法などの特色あるプログラムを実施しています。また、温泉を利用した入浴サービスや、施設内の農場で収穫した作物を提供するなど、利用者の心身の健康をサポートする多彩なサービスを展開しています。
さらに、ケアポート渓和は地域社会との連携を重視し、様々なイベントや活動を通じて地域住民との交流を深めています。施設内にはギャラリースペースがあり、年間を通じて様々な作品展が開催されるなど、文化的な活動も盛んです。利用者一人ひとりのニーズに応じたきめ細やかなケアを提供し、安心して過ごせる環境を整えています。
安息に包まれた新生活
移住の際にお世話になった方や使った制度などはありますか?
小村さん:夫のリモートワークの支援金や空き家バンクを利用しました。私の就職時には福祉・医療スキルアップ移住推進事業を利用し、会社訪問時や面接時の旅費を支援していただきました。資格取得制度もありましたが、私は既に取得済みだったので利用しませんでした。物件を決めてから引っ越しまでの数ヶ月間、リフォームをしていたので奈良県からリモートで色々な打ち合わせを行いました。申請するタイミングで利用できる制度が変わってきてしまうので、その辺りはしっかり打ち合わせで確認しましたね(笑)。
また、福岡県や大阪府で移住セミナーに参加していたおかげで、九重町の自治体の方と直接話ができたのは大きかったです。九重町の事や次回セミナー開催の情報などを教えていただけたので、移住を決めてからスムーズに進みました。
福祉・医療スキルアップ移住推進事業を利用してみてどうでしたか?。
小村さん:知らない土地に来ましたが、1人ではないという安心感がありました。気になった施設があってもハローワークの求人には載っていないこともありますが、自治体職員の方が直接施設の方に問い合わせてくれたので、気になったら聞いてみると良いのではないでしょうか。
移住希望者へアドバイス
大分県や九重町への移住を考えている方へ向けてアドバイスをいただきました。
小村さん:大分県は温泉が有名な土地なので、温泉付きの物件に憧れる方も多いと思いますが、温度が低かったり温泉が出てこなかったりする物件もあるので、物件探しの時に必ず確認しておくことをおすすめします。
最後に
夫婦で「自然豊かな場所に移住したい」という夢を抱き続けた小村さんは、九重町で理想の暮らしを見つけました。移住先の決定にはキャンプで訪れた長者原ビジターセンターの美しい自然に魅了されたことが大きく、移住の際は空き家バンクや自治体の支援を上手に活用し、現在は「ケアポート渓和」で介護の仕事を楽しんでいます。移住後も地域とのつながりを大切にしつつ、自然に囲まれた生活を謳歌する彼女の姿から、豊かな田舎暮らしの魅力と温かさが伝わってきました。