大分移住手帖

大分県で働こう!~猟師編~ 大分県で猟師を仕事にするには?

Tomomi Imai

農作物の鳥獣被害対策やジビエの利活用で注目される“猟師”ですが、大分県で猟師になるにはどうしたらよいのでしょうか?実際に、福岡県から大分県日田市に移住され、狩猟を生業に生活されている草野さんのお話も交えご紹介します。

猟師として収入を得るには?

テレビ密着取材時にも獲物をゲットした草野さん

猟師として収入を得るには様々な方法があります。

〇有害鳥獣駆除の報酬

市町村に有害鳥獣駆除員として登録し、田畑などに出没した有害鳥獣を駆除し、申請をすると報奨金がもらえます。

 

(例)大分県杵築市の有害鳥獣駆除報奨金(令和3年度現在)

猪(成獣) 1頭につき5,000円(狩猟期間外にあっては、1頭につき10,000円)
鹿(成獣) 1頭につき10,000円
1頭につき30,000円
猪(幼獣) 1頭につき3,000円(大分県の幼獣・成獣の判断基準定義に準ずる。)
鹿(幼獣)
アライグマ 1頭につき2,000円
アナグマ
タヌキ

 

〇肉を料理店や食肉加工会社に売る

鹿肉よりも猪肉の方が高額で売れるそうで、品質や部位によっても変動しますが、卸売だと3,000円/kg~取引されることもあります。精肉だと100gで600円~販売されているそうです。

 

〇鳥獣の角や皮などを装飾品に加工して販売

最近では、鹿や猪などの野生の動物の皮を“ジビエレザー”として活用しているところもあります。

 

多くの猟師が兼業で猟を行っていますが、これらの方法を駆使し、工夫することで専業猟師として生計を立てていくことも可能なようです。

猟師になるには?

草野さんの事例も載っている『猟師を仕事にするための本』(出版:秀和システム)

 

猟師になるには、まず「狩猟免許」を取得する必要があります。それ以外にも、どのような猟をするかによりますが、獲物を運ぶための普通自動車免許、チームで猟を行う際などに必要な無線免許、獲物を加工して販売する上で必要な食品衛生責任者の資格や製造業の資格などもあると好ましいと言われています。

猟師免許は主に4種類ありますが、取得条件が厳しく設定されており、特に心身の健康状態が重要です。精神疾患などでの通院歴がある方や視力や聴力が弱い場合も猟銃などの判断力に欠ける場合があるため、矯正や補正が必要になるようです。

■狩猟免許の種類

①第一種銃猟免許

※20歳以上から取得可能

・装薬銃

※空気銃、圧縮ガス銃も使用可

②第二種銃猟免許

※20歳以上から取得可能

・空気銃

・圧縮ガス銃

③網銃免許

※18歳以上から取得可能

・網

※むそう網、はり網、つき網、なげ網など

④わな猟免許

※18歳以上から取得可能

・わな

※箱わな、囲いわな、くくりわななど

免許を取得するためには、各県で行われている狩猟免許試験に合格することが必要です。医師の診断書など必要書類と、取得したい免許1種類につき5200円の申請手数料を送付し、7月~11月に行われる狩猟免許試験を受験します。大分県では、令和6年度までの間は、狩猟免許試験受験の際に要していた申請手数料5,200円を0円とすることとしています。希望者は予備講習も受講できます。試験内容は知識・適正・技能の3種類です。

知識試験 法令に関する知識、猟具に関する知識、鳥獣に関する知識、鳥獣の保護管理に関する知識についての試験
適性試験 視力、聴力、運動能力に問題がないかを判定する試験
技能試験 猟具の判定・架設(網猟・わな猟)、銃器の操作(第一種・第二種銃猟)、距離の目測(第一種・第二種銃猟)、鳥獣の判別に関する試験

知識試験と技能試験対策は、県内各地で開催される初心者講習会を受けましょう。受講料が、わな猟は、8,000円、第一種銃猟・第二種銃猟・第一種銃猟及び第二種銃猟は、各々12,000円かかります。合格率は80%以上と言われています。

大分県では、令和3年度には5回の試験が行われています。事前に自分の受けたい種類の試験日程を確認し、準備しましょう。

令和3年度試験開催日
7月31日     第一種銃猟・第二種銃猟
8月1日     網猟・わな猟
10月9日     第一種銃猟・第二種銃猟
10月10日          網猟・わな猟
11月20日   網猟・わな猟

狩猟免許取得後も、大分県では、猟具(銃・わな)を用いた実践的な狩猟技術の向上を図るため、スキルアップセミナーなども開催しています。参加してみると他の猟師さんとの繋がりができるかもしれません。

詳しくは環境省HPに試験例題などもあるので、ぜひご活用ください。

広告業から猟師、そしてジビエへ:草野 貴弘さん

猟師を生業にした暮らし方は人それぞれですが、今回は福岡市から日田市に移住し、サラリーマンから猟師に転身した草野さん(奥日田獣肉店)のお話をお聞きしました。

*草野さんの移住ストーリーはこちらから

https://oita-ijyutecho.com/about-work/2239/

免許取得後は解体や処理を学ぶ必要がある

『狩猟を仕事にするための本』(出版:秀和システム)には様々な猟師の1日のスケジュールや収支などが詳しく載っている。

 

狩猟免許の取得はあくまで道具を使うことに対して許可を得るだけであり、獲物を捕獲した後の処理や解体については自分で学ばなければいけません。

草野さんは解体に関して、ただ解体して処理するというだけでなく、自然に配慮しながら行っていきたいと考えていたそうです。そこで、豚の解体をお仕事にしていたという、尊敬する猟師の先輩が解体するところを撮影した動画を繰り返し観ながらそれをベースに自分の環境や用途に合わせて解体方法を構築していったそうです。

草野:捕獲した後の止め刺しの時が一番危険を伴う作業で、さらに獲物の解体となると、罠はかけれてもできない人も多くいます。ひと昔前は、趣味で狩猟をされている方が多かったので、そのやり方も結構ざっくりとしていることが多いです。最近では有害鳥獣駆除報奨金のために猟をされている方も多く、尻尾を切ってそれ以外は捨ててしまうケースもあります。僕は猟師という文化を体現した生き方をしたいので、その一環として解体を大切にしています。頂いた命を最高のお肉にできないと猟師は名乗れないなと。さらに販売するとなると見た目の美しさや効率のよいお肉の成形などいろいろありますし、個体差で、筋肉のつき方や形も微妙に違ってくるので、数をこなすことが大事だと思います。

大分県シシ肉・シカ肉衛生管理マニュアルなどのガイドラインはありますが、そこで解体そのもののやり方が示されているわけではないし、獲物の個体差もあるため、先輩に師事することが多いようです。

猟友会には入った方がいい?

狩猟自体は県ごとに狩猟者登録を行えば基本的には日本全国どこでも行えますが、駆除報奨金については所属のエリア内での捕獲実績のみが対象となります。また、ローカルルールや山林の所有権などにも注意が必要です。

草野:僕が住んでいる奥日田エリアの猟友会には上津江支部、中津江支部、前津江支部、大山支部があります。現在高齢化が進み、同世代はまだ少ないです。法令上では猟期(大分県は猪・鹿は11月1日から3月15日)以外の期間で捕獲を行う場合、市が認定している有害鳥獣駆除班員である必要があり、自分が所属している支部の管轄エリアでしか行えません。猟友会には必ずしも所属しなくても大丈夫です!ただし、報奨金をもらうためには、猟友会に加入する必要があるところが多いみたいです。

まずは猟友会などに入り、先輩猟師からローカルルールや猟場の情報などを得るとよいでしょう。

ジビエの楽しみ方の普及

奥日田獣肉店の商品

大分県だけでも、年間7万頭ほどのシカやイノシシが捕獲されているようですが、その2割程度しか活用できておらず、他は捨てられてしまっているのが現状なのだそう。

草野:近年ようやく九州でも“猪や鹿をはじめとした野生鳥獣の肉を食べる”という文化は認知されつつあるようで、業者さんも増えています。僕の場合は有害鳥獣の利活用というよりは、ここ日本の狩猟文化を大事にし、「山の幸を戴く」という感覚のもと、小売をメインに商売をしています。テーマは「獲物をきちんと選別し最高の猪鹿肉を提供すること」。天然ものには個体差があり、時期によっても変わります。うちでは現状、獲った獲物の2〜3割程度、自分が獲った間違いなく美味しいと思えるお肉しか販売していません。また、提供する者の役割として普段皆さんが食べている畜産肉と野生肉の性質の違いや、その違いの楽しみ方、価値の感じ方もセットで発信しています。それらを普及できなければ、一時的なブームで終わってしまう可能性があり、商品価値も上げにくい為、消費者と提供者両方の立場にとって持続可能な形を築いていく事は難しいと思います。商品にしない獲物であっても捨ててしまうのは嫌なのでペットフードなどにして無駄なく活用しています。

処理場も移動カフェもDIY

自宅に併設された獣肉処理場

5年前に移住した時から住んでいるご自宅は空き家バンクを通じて購入されたそうです。この家に併設する形で処理場も自らの手でDIY。中を拝見するととても清潔感のある空間が広がっていました。また、奥様が切り盛りするキッチンカー「野良CAFE」も、フレーム以外はご自身で作られたというから驚きです。

「奥日田獣肉店」の壁面デザイン

 

とても綺麗に整理されている道具

暗いイメージがあった解体場所も清潔感がある

獲物を引っ掛ける工具を買い、自分で取り付けたそう

奥様が担当するキッチンカー「野良CAFE」

草野:僕はものづくりも好きなので、処理場も電気工事や水道工事、コンクリート打設以外は自分で作りました。ホームセンターで買える素材や、製材所で余った木などを譲り受けながら作ったので、費用も最低限で済みました。イメージしていた営業方針を実現するにあたり、初期投資をいかにコンパクトにできるかというのはテーマのひとつだったので、必要最低限の道具ばかりです。大規模な肉屋になりたいわけではないので、業務用でない設備もあります。肉用のスライサーも手動のタイプ。周りに数件家がありますが空き家が多いのと、一番奥なのもあり隔離された空間のようになっています。来客の際、猫と遊びながらまったりくつろがれている方も多いですよ。

ダム湖が見渡せるウッドデッキ

現在、過去の広告業務経験を活かして販促物や商品のパッケージなどほとんど全てを自分でデザインし手づくりしているという草野さん。思いつきを直接形にできるので、打ち合わせや擦り合わせなどを省ける為、フットワークが軽くなるとのこと。

最後に

大分県では、有害鳥獣駆除や、獣肉の処理・販売などもあわせて行っていくことで、狩猟を生業に暮らしていくことも可能なようです。草野さんの場合、ご自身のデータや知識を本や雑誌、SNSなどにて公開しているので参考にしてみてください。ご自身がまだ学んでいる最中ということで狩猟スクールなどは行わないそうですが、狩猟体験イベントなどは余裕があれば行っていきたいとのこと。気になった方はまずは草野さんのご自宅兼処理場か、野良CAFEに立ち寄ってお話を聞いてみることをお勧めします。

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Tomomi Imai

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25歳でフリーランスとして独立し、多様な分野にてプロデュースやディレクター業を経験。モノコトヒトをつなぐひと。多様な伴走を得意とする。絶賛子育て中。ヨガ・サーフィン・音楽・映画・コーヒー・日曜大工が趣味。

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