大分移住手帖

気分転換で訪れた離島。そこにあったのは過ごしやすい環境と温かい人との暮らし。

取材 : Kaori ライティング : Misaki

取材者情報

お名前
玉川ノリカ
出身地・前住所
京都府京都市
現住所
大分県姫島村
年齢
43歳

京都市で生まれ、自営で写真撮影やカメラの修理・設定業務などを行い生計を立てていた玉川さんは、思いがけず姫島村を知りその魅力の虜となり、2020年に移住してきました。コロナ禍をきっかけに移住した経緯や現在の島での暮らしについてお話を伺いました。

表札を作っている玉川さん

表札を作っている玉川さん

きっかけはGoogleストリートビュー

京都府で生まれた玉川さんは、生後まもなく福島県に引越し、小学2年生の頃に再び京都府に戻って、カメラやネット関連製品の修理で起業したそうです。そんな彼女が姫島村への移住を決めたきっかけについてお聞きしました。

玉川さん:元々、姫島村を知りませんでした。2006年頃に興味本位で開設まもないPC版Googleストリートビューを使って世界中を見た後、自分の住んでいる日本、九州の福岡県北九州市、宇佐市、豊後高田市、国東市と見たところで、少し離れた場所に島があるのを見つけました。気になって拡大してみたら、港も道路もあり人も住んでいて、そこが姫島村という地域であることを知りました。当時は島の暮らしについて知らなかったので、不便な場所という漠然としたイメージしかありませんでした。

2020年には新型コロナウイルスが蔓延し、京都市が感染流行地になったことで対面を避け、zoomでの対応を余儀なくされました。ネットワークのルーターが壊れているお客さんだと、スマホのzoomで対応しても結果的に「来てやってくれた方が早い」となるものの、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、お客さんのもとに伺っての修理ができませんでした。商売上がったりで気分転換に旅行でもしようかと考えた時に、姫島村を思い出したのでGoToトラベルを利用して2週間お試しで滞在しましたが、ほとんどお金がかからなかったので驚きました。

お客さんの依頼で対面でないと修理できない製品があったので京都市に戻りましたが「帰ってきたけど京都市は何か違う。姫島村の方が合うのかも。」と感じたんです。姫島村のシンボルである矢筈岳が、昔住んでいた福島市の信夫山と重なったことや、福島市と姫島村の人の温かさが似ていたことも関係があるかもしれません。そんな自分の直感を信じて住んでみよう!と思い姫島村に移住しました。独り身なので、家族のことを考えずに済むからできたことで、家族を持っていたら今どうしていたかは分かりません。

姫島村のお土産店「ビ・ボーン」

姫島村のお土産店「ビ・ボーン」

夢にも思わなかった家に住めている

姫島村への旅行はノープランだったため、港近くでお土産店「ビ・ボーン」を営む波止崎京子さんから宿泊先を尋ねられて返答に窮していたところ、ゲストハウスを紹介してもらったと話します。

玉川さん:紹介していただいたゲストハウスに宿泊している間に島を見て回り、サイクリングや登山など、京都市で働いていた頃にはできなかった体験をし、青い海や空がとても新鮮でした。コロナ禍で気持ちが沈んでいた頃だったのでリフレッシュ出来ました。

玉川さんが撮影した夕暮れ

玉川さんが撮影した夕暮れ

移住を決意して再度訪れた頃の姫島村は光ファイバーのケーブル工事をしており、旅行中に宿泊していたゲストハウスは工事関係者で満室だったため、滞在する場所を探すことになったそうです。

玉川さん:姫島村にたまたま働きに来ていた京都市の方とルームシェアをしながら家を探すことになり、家財道具まで揃っている村会議員さんの管理物件を紹介してもらいました。バイオリンが趣味なので、住宅密集地ではなく、音漏れを気にしなくて済む家を探していたため助かりました。現在の家賃だと京都市内では2DKでも探すのは難しく、以前住んでいた格安物件でも現在の約2倍以上の家賃だったため、庭付き2階建ての一軒家を安く借りられるなんて夢にも思っていませんでした。リノベーションをせず住めましたが、管理者から「家を壊さなければ修繕は好きにして良い」と言ってもらえたので、住んでみて不便を感じた部分は個人でリフォームをしました。

玉川さんの現在の住まい

玉川さんの現在の住まい

京都市では自営業を行なっていた玉川さんは、姫島村でも同じ仕事をしていると話します。

玉川さん:人との繋がりも仕事もなく、全くゼロの場所でのスタートですが、波止崎さんが島民の皆さんに私がネット関連の修理・設定が出来ることを伝えてくれたようで、色々な方々から仕事を受注しています。また、「おおいた姫島」さんから声をかけていただき、そちらでアルバイトもしています。姫島村では現在の収入で十分生活できますが、都会では厳しいと思います。

玉川さんが撮影した姫島村に咲く花

玉川さんが撮影した姫島村に咲く花

姫島村は癒しを感じられる

姫島村は空気が綺麗で心地良い風が吹き、景色も良くて心に余裕を持てるところが、玉川さんにとって一番良かったことだそうです。

玉川さん:国東市伊美在住の方と会う機会があった際に「地方は姫島村ほど人が集まっていないし、買い物や役場などどこに行くにも車が必要」だと話していました。周辺にフェリー乗り場や小・中学校のある松原地域など人が多く行き交うような場所に住めば、コンパクトで海や山や買い物する場所など全てが近くにあり、徒歩でどこにでもいけますし無料送迎のバスもあるので、車がなくても困りません。

ただ、平日はお店が18時で閉まりフェリーも19時半が最終なので、都会のように仕事が終わったらウィンドウショッピングをして、レストラン街で夕食を食べた後に二次会に行き、コンビニで何かを買うことは出来ないため、そういう生活を楽しみたい方には向いていないと思います。ですが、仕事が終われば自分の時間なので、そこから働いてもいいし、散歩やサイクリングを楽しむのも良いですよね。

知らない土地に移住してみて特に大変なことはなく、とりあえずやりたいことは自分でやってみて無理だと思ったら専門の方を呼んでいるそうです。

玉川さん:自営業ということもあり、以前からとりあえず困ったことがあれば自分でなんとかしていました。例えば、都会では水道が止まったら水道屋さんを呼ぶなど、お金をお支払いすれば解決できますが、ここでは業者を呼ぶこと自体が大変で、まずは自らやってみる必要があるなど、自分で考えて取り組まなければいけないことが多いのはきついかもしれません。

フラットな状態からのスタートだったので、良い人間関係の構築が出来ましたし、「この人無理だな」と思えば付き合わない選択肢もあります。まあ、姫島村にそんな人は居ませんが(笑)。

強いていうなら、姫島村の方は「玉川」という人間が移住してきたと一度見て聞けばすぐ名前を覚えますが、私は姫島村で会った人全員の顔と名前を覚えていかないといけないので、そこは大変でした。簡単に言えば、初めて会った学校の先生と生徒ぐらいの比率ですよね。初めの頃は名前がパッと出てこないこともありましたが、最近はようやく分かってきました(笑)。

玉川さんが撮影した姫島村の海

玉川さんが撮影した姫島村の海

困っていたらすぐに助けてくれる

姫島村での暮らしを満喫している玉川さんに、移住するにあたってお世話になった方や移住制度について伺いました。

玉川さん:旅行に来た時から今でもずっと波止崎さんには、すごくお世話になっています。また、姫島村はみんなとても優しい人ばかりで、恵まれていると感じています。

私は仕事で使う受信専用の携帯を持っているのですが、島は繋がりにくいキャリアだったのでMNP(事業間ポータビリティ)を行おうと思い、一番近い場所を調べたところ宇佐市だったので、どう行くか悩んでいたことがありました。すると、島の人が「宇佐市に行くから」と言って連れて行ってくれ、とても助かりました。都市部からすると隔絶された離島に見えるかもしれませんが、その分みんなの結びつきが強く、お互いに助け合って暮らしています。誰でも関係なく道で会ったら挨拶を交わしますし、子ども達は純粋だと思います。そこが都会との違いだと感じます。

元々お金に執着している訳ではないので、移住する際に姫島村移住支援事業費補助金は特に利用しませんでしたが、利用するかどうかは各々の考え方次第だと思います。逆に「もっとお金が欲しい」と思っているのであれば都市部にいたほうが良いので、姫島村には移住していないと思います。

玉川さんが撮影した姫島村の猫

玉川さんが撮影した姫島村の猫

姫島村を肌で感じて欲しい

移住先での大変さの感じ方は人それぞれだと話す玉川さん。「田舎は不便」と周りの意見や想像だけで判断せず、実際に姫島村を見てもらいたいそうです。

玉川さん:私は、たまに京都市に行って廃河川のガイドの仕事もしているのですが、そこでよく例え話として出すのは「Googleのストリートビューを使えば、今回歩くコースの景色や街並みの様子を見ることができるけれど、それを100回見るよりも実際に一度足を運んでもらいたい」ということです。「百聞は一見に如かず」という言葉があるように、「百見は一行に如かず」という感じですね。自分で行って目で見て耳で聞いて触って感じて経験をすることには敵いません。

気になっているのであればまず、試しに行ってみることだと思います。もちろんお金はかかりますが、ネットで見る情報と実際はやっぱり違うので、島が自分に合っているかどうかは初めてそこで判断したら良いのではないでしょうか。姫島村で検索するとマイナスな情報も出てきますが「それは何年前の話?今はそんな島じゃないよ」っていう感じですね。都市部を悪く言うつもりはないですが、色々な場面で結婚や子どもの話が出る確率はすごく高いのに、姫島村では全く話が出ませんし、男性の皆さんは「俺は俺、あなたはあなた。それでいいじゃない。」と言ってくれます。この先、結婚するとなったら蟠りもなく純粋に喜んでくれるだろうなと思います。

「移住先に馴染んでいかないと」と考えがちですが、自然体で十分やっていける島だと思います。人が温かくて、食材も美味しいし、景色も空気も綺麗です。みんなに会うたびに「ちゃんと食べてるか?野菜やるからな!」と言ってくれ、色々貰えます。姫島村の人達に足を向けて寝られないほど本当にお世話になっているので、いざとなれば立って寝るしかないですね(笑)。私が住む地域は上下水道完備ですし24時間電気も通っているので、正直言うと姫島村は都会だと思っています。

玉川さんが撮影した自然を感じる1枚

玉川さんが撮影した自然を感じる1枚

最後に

玉川さんの話を聞く中で、人の温かさや島の良さを感じることができ、姫島村で過ごしてみたいと思えました。田舎ならではの不便さを感じるところもありますが、ゆったりと自然を感じながら、みんなと助け合って生活していきたい人にはとても合う場所なのではないでしょうか。「百見は一行に如かず」と彼女が言う通り、興味が湧いた方はぜひ一度姫島村を訪れて離島の良さを肌で感じてみてください。

PHOTO

  • 気分転換で訪れた離島。そこにあったのは過ごしやすい環境と温かい人との暮らし。
  • 気分転換で訪れた離島。そこにあったのは過ごしやすい環境と温かい人との暮らし。
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WRITER 記事を書いた人

取材 : Kaori ライティング : Misaki

取材 : くろき かおり
豊後大野生まれ豊後大野育ち。高校卒業後は横浜・東京にて、外資コスメ会社で経営学・マネジメントを学ぶ。その後、石垣島・オーストラリアへの移住。オーストラリアでも同ブランドで勤務したのち、2019年に大分へUターン。現在はフリーランス。趣味は映画を見ること・旅行・サウナ。

ライティング : あべ みさき
東京生まれ大分育ちで、趣味は手芸。介護福祉士として働き、長男出産を機に退職。現在は、子育てをしながら在宅でライターとして働いている。

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